【連載】Vinyl Forest vol.8 ── Evan Evans「Part 7」

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今回ご紹介する作品は、今やリリースすれば必ず売れてしまうThe Revenge主宰のレーベル「Instrument Of Rapture」から、11月29日に発売予定の新作だ。正体不明の期待の新人・Evan Evansがドロップした本作は、Nu Disco界隈のみならず、Houseファンも納得する素晴らしい仕上がり。新人らしからぬ完成度の高さには私も正直驚いてしまった。

A面に収録されている「Repetition」は、昨今のトレンドとも言えるEarly 90's独特の音色が特徴的。煌びやかで少し下世話なシンセ使いにファンキーなベースライン、そしてアップリフティングなドラム音色が見事にマッチし、新しさと懐かしさが身体全体に襲い掛かる感覚を楽しむことができるだろう。ピークタイムの少し前に使用して頂ければ、威力を発揮してくれる佳作なので、DJ Bagにも長期滞在することになるはずだ。

B面のRemixは、Deep House層から絶大な支持を得ているアイルランドの“Vinyl Junkie”ことJohn Dalyが担当する。彼が得意とするスペイシーな空間処理とスモーキーな展開はダンスフロアにいるクラウドを宇宙空間へと導いてくれる。コチラも原曲のシンセを効果的に使用しており、Early 90's Technoっぽくも聴き取れる面白さもある。もちろんA面と使い分ける事も可能だ。

さらにB面2曲目「Final」は、20/20 Vision等で活躍するArt Of TonesがRemixで参加する。何といってもベースラインのかっこよさが際立つ作品で、トラック全体に派手さはないものの、直感的に腰が動いてしまう、まさにいぶし銀トラック。誰もがわかりやすいアッパーでコマーシャルな楽曲というのは賞味期限が短いが、こういう曲はDJ側からすると本当に有りがたい存在。House層もDisco層も必ずチェックすべきキラーアイテムだ。

2010年のNu Discoは本当に面白い。あらゆるスタイルを容認し、進化するさまは、実に痛快だ。アンダーグラウンドから派生したストリート・ダンスミュージックが市場を大きく揺るがすなんて筆者の私もまったく想像もしなかったが、確実に世界は動いている。このムーヴメントは本物だ。

text by Dee-S

◆drumatrixx mag

──【連載】「Vinyl Forest」とは

筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。

そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、

「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」

という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。

text by Dee-S&Blue Eclair
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