KNOCK OUT MONKEY、<SUMMER SONIC>でみせたカラフルなメロディと、拡散と集束のダイナミズム

ポスト
2012年8月18日、今年も<SUMMER SONIC>が幕を開けた。午前10時30頃の幕張の空には目の前の視界が消えるほどのゲリラ豪雨と激しい雷鳴が鳴り響く。会場へダッシュする途中、閃光が薄暗い空を照らすと同時に、差している傘の支柱がピカッと光りビリッと手に電気が走った。気のせいかと思ったが、周囲の人たちの同じ反応にまさかのプチ落雷を確信した。ちょっぴりビビる。が、これから全身に浴びる超ド級の轟音と滴り落ちる汗の量を考えれば、ま、なんてことないかーと思えたのは私だけではないはずだ。

◆KNOCK OUT MONKEY画像

少し早めに場内へ入ると、まだ機材のセッティング中だった。メンバー4人の楽器が次々とステージ上へ運び込まれ、システムが組み上げられる。サウンドチェックの様子をじっくりと見られるのもフェスの醍醐味のひとつだろう。メッセ場内に設営されたここRAINBOW STAGEは約10,000人のキャパを誇る巨大なハコだ。そのステージ上、あまりにもシンプルなドラムセットが浮かんで見える。バスドラの小ささがカワイらしく思えるほどに舞台が広い。

神戸ワールド記念ホールで行われた<PUNKSPRING2012>出演ほか、MANAFESTとの共演やANDREW W.K.東京公演のサポートアクトなどで、洋邦問わず音楽ファンの注目を集める彼らだが、<SUMMER SONIC>出演に加えて幕張メッセでのライヴは初となる。オープニングを前にして立ちこめる会場の空気は、期待に燃え上がるオーディエンスの叫声が象徴するかのようだ。そして照明が落ちると、ステージ後方に掲げられたデカいバックドロップの“KOM -KNOCK OUT MONKEY-”というロゴがパープルのライトに照らされた。その鮮やかな色が移り変わり、フロアをレッドに染めた頃、いよいよライヴがスタートした。

のっけからの轟音に思わず身体がビクリと反応する。時刻は11時30分。まだ午前中のモウロウとした意識を叩き起こすかのような刺激が心地よい。“ドッドッ♪”とユニゾンで鳴らされるCのコードは歯切れ良く、やはり雷雨にも負けないラウドなパワーに溢れていた。オープニングは「BREAK」だ。「カモーン!(→C'mon!!)」と叫んだヴォーカル&ギターのw-shunが全身でオーディエンスを煽る。ゾクっとするほどの高いテンション。しかしそれは作られたものではなく、ナチュラルなものだということがリアルに伝わってくる。緩急の効いたドラマティックな曲展開、高度な演奏力、それらを貫くメロディアスでアグレッシヴな旋律。神戸を中心に活動中の4ピースは、この1曲でRAINBOW STAGEを堂々と震わせた。その勢いのまま曲は「JET」へ。突き抜けたメジャー感を持つカラフルなメロディと、拡散と集束のダイナミズムに彩られて、フロアはさながらジャンプだらけのダンスフロアに変貌した。

この日のセットリストは、リリースされたばかりのミニアルバム『0 → Future』収録曲を中心にした最新ナンバーの揃い踏み。多彩なアレンジワークで聴かせる完成度の高さに加えて、音楽的な懐の深さを明解に打ち出した楽曲の数々が、実にバラエティ豊かに響く。とりわけスウィングするグルーヴに6/8拍子を織り交ぜた「Gun shot」や、休符を巧みに活かしたミディアムチューンの「実りある日々」は、やりたいことをワイドレンジな視野に立って楽しむ彼らの姿勢がものの見事に楽曲へ反映され、ステージをより痛快なものにしている。

「初めて来ました幕張メッセ。とことんまで満喫していってやろうと思います。一緒に遊んでください!後ろで酒飲みながらでも座りながらでも、この瞬間が楽しかったなと思ってもらえるように最大限やかましい音を鳴らしてこのステージ一発目を盛り上げたいんで、全力でかかってこいよ!」というw-shunのMCに続いて、後半戦がスタートした。

勢いにのった「HOPE」では、dEnkAの躍動する16分カッティングと、弦を叩きつけるかのような亜太のエキサイティングなスラップに客席が熱狂、フロアが生きているかのように鼓動する。もはやステージと客席との距離はない。サビでは<I want I want♪>の大コーラスが巻き起こるほどの一体感を生み出し、ステージと客席の一挙一動が熱い。そして広いステージ上を走り回るメンバーが大量の汗で光る頃、ライヴのテンションは最高潮に達した。ラストは彼らの代表曲「PLAY」だ。ナオミチによるサンバのリズムに乗せて亜太の足は激しく空を蹴り、w-shunが絶叫を放つイントロ。前向きなパワーが前面に押し出され、鬼気迫るほどの息づかいとウネリがプレイ全体に満ち溢れている。約30分間のステージはまさに息つく間もなく駆け抜けるようだった。

大音量でいながらメンバーがはじき出す1音1音は、輪郭がくっきりして各プレイの隅々まで堪能できるところは特筆もの。例えば、冒頭に記したナオミチのバスドラムは瞬発力とローのパンチ力を求めるがゆえの小口径だろう。地響きのように迫る亜太の5弦ベースサウンドは重くクリアな音色で、細かな表現力を高めている。dEnkAのレスポールは限りなくストレートでズ太いサウンドをたたき出し、乾いたバッキングと甘くメロウなソロの対比は絶品だった。ソリッドなギターサウンド、骨太なリズム隊、そしてw-shunの味わい深いヴォーカル&ギター。それぞれのパートの音がはっきりと聞こえていながらもラウドでヘヴィ、なによりバンドとしてのグルーヴが最高だ。

<SUMMER SONIC 2012>1日目のトップを見事なまでに盛り上げる一方で、客席にはKNOCK OUT MONKEYという名前を深く刻み込んだパフォーマンスに、会場中から大きな拍手が贈られていた。彼らは9月21日の渋谷club asia公演を皮切りに全国のライヴハウスを廻る<『0 → Future』Release Tour>を開催する。そのサウンドはぜひアナタの全身で感じてほしい。

取材・文:梶原靖夫

<KNOCK OUT MONKEY@サマーソニック2012>
1.BREAK
2.JET
3.Gun shot
4.実りある日々
5.HOPE
6.PLAY

(c)SUMMER SONIC 2012 All Rights Reserved Photo by Rie Suwaki(MAXPHOTO

<KNOCK OUT MONKEY『0 → Future』Release Tour>
2012年9月21日(金)東京渋谷club asia
2012年9月23日(日)大阪心斎橋CLUB DROP
2012年9月27日(木)長崎長崎Studio DO!
2012年9月28日(金)福岡小倉WOW!
2012年10月16日(火)岡山岡山CRAZY MAMA 2nd Room
2012年10月17日(水)広島 広島ナミキジャンクション
2012年10月23日(火)神奈川F.A.D横浜
2012年10月25日(木)愛知名古屋CLUB UPSET
2012年10月26日(金)兵庫神戸 太陽と虎
2012年11月13日(火)新潟新潟CLUB RIVERST
2012年11月14日(水)宮城仙台MACANA
2012年11月30日(金)愛知名古屋ell. FITS ALL
2012年12月 9日(日)東京渋谷eggman
2012年12月15日(土)兵庫神戸チキンジョージ
and more…
※下記5公演に関してはKNOCK OUT MONKEY主催イベント<KNOCK OUT MONKEY presents“Mind ≒ Nature”(マインド・ネイチャー)>
2012年9月21日(金)東京渋谷club asia
2012年9月23日(日)大阪心斎橋CLUB DROP
2012年11月30日(金)愛知名古屋ell. FITS ALL
2012年12月9日(日)東京渋谷eggman
2012年12月15日(土)兵庫神戸チキンジョージ
この記事をポスト

この記事の関連情報