日本を代表する美術家の一人である横尾忠則は、常にロック・カルチャーと密接な関わりを保ってきた。中でもザ・ローリング・ストーンズとはツアー・ポスターやアルバム・ジャケットを打診されるなど、お互いに対するリスペクトを持ってきた。ストーンズの結成50周年記念ドキュメンタリー作品『クロスファイアー・ハリケーン』ブルーレイ/DVDの通販限定ヴァージョンに付けられた、幻のツアー・ポスターを横尾忠則自らが完成させたB1ポスターは、そんな敬意の産物である。

◆横尾忠則画像

横尾忠則がストーンズの音楽と出会ったのは、1960年代半ばのことだった。

「シングルを何枚か持っていたかも知れないけど、初めて買ったストーンズのアルバムは、あのジャケットが立体的に見えるやつ(『サタニック・マジェスティーズ』)でした。かなり後になってからですよね。それ以降、ずっとアルバムを買うようになりました。CDになってからは、あまり買わなくなりましたが。当時からストーンズはビートルズと対比されて論じられていましたね」

1960年代から世界を股にかけて活動してきた横尾忠則は海外のアーティストとも親交があり、アンディ・ウォーホルなどとも交流してきたが、ストーンズは『スティッキー・フィンガーズ』(1971)のジャケットでウォーホルを起用している。

横尾忠則は、ストーンズとウォーホルの合体について、こう語る。

「彼らが結びつくのは、必然だと思いましたね。音楽と美術の世界は異なるけど、彼らが目指すものは、どこかで一致しているんです。それにウォーホルは、有名人が大好きなんですよ。で、自分自身もスーパースターになってしまった。自分がスーパースターであることに気付かないほどのスーパースターにね。ストーンズも、ビートルズと較べて日陰の存在の筈だったのに、気がついたらある意味、ビートルズを超えていた。そんなあたりが共通していたと思います。『スティッキー・フィンガーズ』は、あの立体的な手法のセンスが凄いと感じました。ビートルズの『サージェント・ペパーズ~』もそうだけど、”デザイナー”ではなく、“アーティスト”にジャケットを頼むようになった。ビートルズとストーンズは、そんな目の付けようが、他のバンドとは違っていたんですよね」

ストーンズとビートルズの対比について、横尾忠則はこう分析する。

「ストーンズの場合、ビートルズと対比されながら出てきたんだけど、ビートルズをメジャーとすると、マイナーな印象があったんです。言葉で説明するのは難しいけど、危険な集団というイメージがありました。安全な人間というのは、魅力がないわけですよ。芸術というものは、すべて危険性に裏付けされている。そういう危険性と、本能的な悪とバイオレンスのイメージを感じました」

「ビートルズは徐々に洗練されていきますよね。それに対してストーンズは、ますます反ビートルズ的な、不穏なイメージを前面に出していった。その表裏一体なコントラストが魅力的でした。でも今ではストーンズの方が奔流になってしまった。ずっと活動を続けているということもあるけど、ストーンズの方がずっと現代的で、未来的です」

ストーンズとの接点を持ち、独自のストーンズ論を持つ横尾忠則だが、興味深いことに、メンバーと会ったことは一度もない。

「ニアミスは何度もしているんです。ニューヨークに行ったとき、ストーンズの当時の事務所の社長がカーネギー・ホールの真ん前に住んでいて、遊びに行ったことが何度かあります。その時『昨日ミックとキースが来たよ』とか言われたことはありました」

「アンディ・ウォーホルのニューヨークのワークショップを訪ねたとき、ちょうどミックの版画が出来たということもありましたね。それで2点買ったんですよ。1枚が日本円にすると20万円ぐらいで、でもアーティスト同士だから半値にしとくねと、かなり格安で売ってくれた。10枚ぐらいあったから、今から思えば全部買っておけばよかったと、ちょっと後悔しています(苦笑)。でもまあ、特に出来が良いのを2枚買って、持って帰って広げてみたら、本来入っているべきミックのサインが1枚入っていないんですよ。それでウォーホルに送り返しました。それからしばらくして、ミックのサインを入れて送り直してくれましたよ」

「あとインドのアーメダバードの大金持ちがいて、年に1回、世界からひとりのアーティストを呼んで、インドの素材で作品を作らせているんです。彼は広大な敷地の中にル・コルビジェに建てさせた邸宅に住んでいるんですが、僕が訪れたとき、『こないだミックが来た』と言われました。その人に何枚か僕の絵を印刷した絵ハガキを送っていたんですが、その絵柄をミックが気に入って、全部持っていってしまったんだそうです。ミックが僕の絵に興味を持ち続けてくれるのが嬉しかったですね。それがもう10年以上前かな」

世界規模のニアミスを繰り返している両者だが、横尾氏は、「それが面白い」と語る。

「それも人生ですよね。積極的に会おうとしなくても、いいんじゃないかと思います。何十年もの月日を経て、今回「よだれ」が『クロスファイアー・ハリケーン』にポスターとして付属されることになったことも、ひとつの運命ですよ」

50年にわたって世界中のファンを惹きつけるストーンズの魅力を、横尾忠則は“偉大なるマンネリズム”と定義している。

「12月に行われたニュージャージーのテレビ放映、まだ全部は見ていないんですけど、とにかく若いですね。あの歳であの体型を維持できているというだけで凄いですよ。昔の彼らのライヴと変わりなく、ほとんど衰えはないんじゃないかな。“偉大なマンネリズム”と言いましたけど、マンネリズムのあげく消えていくバンドと、マンネリズムで生き残っていくバンドがいるんです。その違いは、生き方でしょうね。若い頃は技術やパワーに頼りがちだけど、歳を経ると、大事なのは生き方だと判ってくる。我々はストーンズの演奏だけでなく、彼らの生き方を見ているんです。ストーンズはいつまでも生き残るタイプですね」

第3回では横尾とロックへの目覚め、そしてビートルズとの出会いについて語ってもらおう。

撮影:有賀幹夫
取材・文:山崎智之

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●WOWOWライブ「ザ・ローリング・ストーンズ50周年記念ライヴ」
2月10日(日)夜10時より放送
http://www.wowow.co.jp/music/rs/

◆月刊BARKS 横尾忠則スペシャルインタビューVol.1
◆TADANORI YOKOO OFFICIAL WEBSITE
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