【インタビュー】KNOCK OUT MONKEY、『reality & liberty』はヘヴィで攻撃的だけど、ポップ

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(C)FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY

へヴィ&ラウドでありながら、キャッチー。強面でありながらもハッピーなオーラを振りまいて、今KNOCK OUT MONKEYが日本中を駆け巡っている。ライブバンドとしての自負を背負って様々なフェスやイベントにも参戦しながら、彼らは、『reality & liberty』と名付けられた素晴らしくポップでカラフルなロックサウンドを生み出した。

◆KNOCK OUT MONKEY画像

過剰なほどの多様性をも携えながら、最先端の日本のロックを切り開かんとするKNOCK OUT MONKEYの、その有り余るエネルギーが『reality & liberty』からほとばしっている。感情のほとばしりが生々しくパックされた『reality & liberty』の魅力をBARKSユーザーの皆へ伝えるべく、KNOCK OUT MONKEYへのインタビューを試みた。

──2012年はKNOCK OUT MONKEYにとって激動の年であったと思うのですが、<SUMMER SONIC 2012>をはじめとする数々のフェス出演がバンドにもたらしたものはありましたか?

(C)2012 Mount Alive co.,ltd. All Rights Reserved.
ナオミチ:<サマソニ>のほかにも、北海道の<JOIN ALIVE>や<PUNKSPRING>とかに出演させていただいて。いろんなバンドと御一緒する機会があったり、有名なアーティストのプレイを間近で観ることもできて、すごく刺激になったし、勉強にもなりました。

w-shun:KNOCK OUT MONKEYというバンドを改めて見つめ直す機会にもなったよね。

──その後、2012年末まで自身の全国ツアー<『0 Future』Release Tour>が開催されました。ツアー初日に、「ミニアルバム『0 Future』がライブでどう成長していくか楽しみ」とおっしゃっていたのですが、実際全国を廻ってみて手応えはいかがでしたか?

w-shun:ツアーに出て感じたのが、僕たちの曲に対してお客さんがいろんな解釈をしてくれているということで。ライブハウスというひとつの空間のなかでも、それぞれのスペースで全然違う盛り上がり方があるんですよ。ある種、ひとつの枠にとらわれてない。じっくり聴いてくれているスペースもあれば、酒を飲みながら盛り上がってる人たちがいたり、友達と一緒に笑顔を見せてる人たちがいて、その真ん中ではダイバーが飛んでるみたいな。

──そういう多様性がKNOCK OUT MONKEYのライブや楽曲にはあるわけで。

w-shun:感性って人それぞれだから、楽しみ方も異なるんですよ。自分たちの音楽で、その人なりの楽しみ方を引き出したいなっていうのが常に心にあるんです。

dEnkA:それが目に見えたようなツアーだったよね。自由に楽しんでもらえた。

──リリースされる『reality & liberty』は、そのツアー中に曲作りを行っていたそうですが、ライブで感じたことが楽曲制作に影響しましたか?

(C)FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
w-shun:そうですね。個人的に煮詰まった瞬間もあったんですけど、4人がバンドとして表現したいことを考える方向に頭をシフトしてみようと。そのときのライブで得たものとか、各々が感じているものを活かして。自分の頭のなかにあるものを一度壊したうえで、バンドの自由な発想を求めて作ったから、ツアーがこの作品に影響しているのは確かだと思います。タイトルの『reality & liberty』には、そこで勝ち取った現実と自由という意味が込められているんです。

──バリエーションに富んだ収録曲の数々も、メンバー間のコミュニケーションを取りながらの制作の結果ということでしょうか?

w-shun:コミュニケーションはすごくよく取れていたので、こういう方向性の曲でいこうって決まった後の作業は早かったですね。曲作りは、根本的に4人全員がスタジオでセッションしながら作っていくんですよ。だから、誰かひとりが80%なり100%の原曲を投げるっていうスタイルじゃない。各々が担当楽器のなかで、今回はこういうフレーズを弾きたいとか、こういうリズムがいいとか、何かのきっかけになるようなリフやメロディから発展させていくんです。そのアイデアこそ一番尊重したいところで。そこからは全員で音を鳴らしながら、ああでもないこうでもないって作っていくのが楽しかったりするんです。それ、やり過ぎやろ!って言いながらね(笑)。

──確かに、『reality & liberty』には“やり過ぎ”がいっぱいあるような(笑)?

w-shun:KNOCK OUT MONKEYというバンドはこういう方向性だろうなっていうことは、どこかでみんな理解していると思うんです。まぁ、あんまりそういう話はしないんですけどね。最初は本当にとんでもない方向からアイデアが飛んでくるんですけど、要らないものを削ぎ落としていくと、必然的に自分たちらしい楽曲に落ち着くという。だけど、やり過ぎ的な部分は敢えて残しておくことも多いんですよ。

──敢えて残しておくというのは?

w-shun:どちらかというとバンド初期はありきたりな曲展開も多かったんですよ。大島(こうすけ)さんにプロデュースしてもらった前作『0 Future』からは、「もっとぶっ込んだほうがいいよ」っていうアイデアをいただいていて。それを前作で実践してみたことが大きいですね。だから今回は最初から自分たちでぶち壊して、ぶっ込んでいきました。

──たとえば、プレイボタンを押して始まるオープニングSE「Beginning(skit)」に続くナンバーは、KNOCK OUT MONKEYらしいキャッチーなメロディが印象的な「Scream & Shout」。この曲は一聴するとポップに聞こえるんですけど、いわゆるAメロ→Bメロ→サビを繰り返すような曲構成ではなく、サビを中心にどんどん展開していくじゃないですか。それこそ、どこまで行くんだろ?というくらいに新たなメロディがどんどんぶっ込まれる。

w-shun:それはもう僕らのなかではナチュラルなことなんです(笑)。完全に衝動感というか、とにかくパンチの効いた曲を作りたいっていうのがまずあって。セクションごとに、違うタイプのパンチの効いたメロディを違和感のないように入れていくっていう。だから、ひねって入れましたっていうものが一切ない。攻めの部分を整える作業は割と大変だったと思うけど、それ以外に関してはストレートなんですよ。

──決してストレートではないですけどね(笑)。そういうメロディや曲展開に対して、各楽器パートがアレンジを乗せていくような?

ナオミチ:「Scream & Shout」はそうでしたね。まずメロディからできて、そこにアプローチしていく感じでした。

w-shun:逆にすごくカッコいい楽器アレンジが出来上がって、ウワッ!って思えば、それにメロディを乗せることもあるし。曲によって制作過程はまったく違うんですよ。

──曲作りもリバティな感じ(笑)。

亜太:うん(笑)。本当に自由ですね。

ナオミチ:「Primal」はオレらからdEnkAに「ギターはアラビアンな感じのフレーズで」ってリクエストして。で、アラビアン過ぎたんで、そこから少し戻したという(笑)。

w-shun:大島さんに「やりすぎだよ!」って言われてました(笑)。

dEnkA:「だって、やれって言ったやん!」って(笑)。

──ぶっ込んで振り切れとは言えども、リミッターは掛かるんですね。

dEnkA:振り切り過ぎたら、ちょっと戻せばいいという。

ナオミチ:整えます。

──その象徴的なところでいうと、「Blazin'」はラウドなファンクからジャズアレンジに思いっ切り振り切ったわけですが。

亜太:あ、これはすごかった(笑)。

w-shun:「Blazin'」は一番困ったというかね。この曲はメンバー4人+大島さんの5人で、ああでもないこうでもないってやりましたね。時期的には、ほかの収録曲がほとんど出来上がって、ある程度キャッチーな曲も出揃ったところで作った曲なんです。だから、もうとんでもないことをしようぜって、いろんな案があがったよね。

dEnkA:レゲエを入れるとかね。

w-shun:個人的にはブラックミュージックだったり、ヒップホップ、レゲエとかも聴いてて。あらがっている音に対して、そういう要素を入れたりするのが好きなんですよね。で、強行突破みたいな感じで、ジャジーで行く!と言って(笑)。

──楽器隊にジャズの下地はあったんですか?

dEnkA:いやー(笑)、結構なチャレンジでした。アイデアが出たときは“エー?”と。

亜太:ジャズ案が出てから、メンバーも大島さんも含めてベースに対する丸投げ感がハンパなかったですからね(笑)。

──ファンクなスラップあり、ジャズのスウィング感あり、さらにはベースソロも…というベースの多重人格感がハンパないんですが(笑)。

亜太:そうそう(笑)。「もうここまでいったらこの曲はベース推しにしよう」っていうから(笑)。ただ、ジャズは小さいころから親の影響もあって耳に馴染んでいたんで、好きなんです。けど、得意ではないんでね(笑)。結構な壁にぶつかりましたよ。

──ぶっ込み感覚がナチュラルとなったKNOCK OUT MONKEYのメンバーにとっても、さらに新しいものを追求できた実験的なナンバーだという?

w-shun:作っている最中は、なんのこっちゃと。これライブでできるのかって(笑)。最初は、それこそ自分がバンドを始めた当時、リフものを聴いて、わっ!すげえなって思ったような初期衝動感の強い曲を作りたいと思ってたんですよ。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか、リンプ・ビズキットとか、いわゆる1990年代後期のミクスチャーな音だったんですけど、なんか古いよねっていう感じになっちゃったんですよ。で、好きだったものプラス自分たちの新たな変化というか、古き良きを知って新しいものを作ったという。僕自身も最近、やっと馴染んで聴けるようになったんですけどね。自分たちの曲なのに、耳に馴染まないっていう感覚はちょっと面白かったですよ(笑)。



──この曲はベースがフィーチャーされましたが、『reality& liberty』には各楽器隊の聴きどころが満載で。ドラムは「Scream & Shout」や「Primal」というリードナンバーにもキックをガンガン突っ込んでいるあたりが痛快です。

ナオミチ:今、ラウドミュージックがシーンで盛り上がっているじゃないですか。僕らの楽曲は、そのなかでもどちらかというとポップなほうだと思うんですよ。でも、僕が今回こだわったのは、ラウドなツインペダルやツーバスとフロアタムとのコンビネーションは、キャッチーなナンバーでも採り入れることができるんだぞと。そういうところを証明したかった。

──ドラムの瞬発力が楽曲にキレを生み出しているという。

ナオミチ:そうですね。「Primal」と「Scream & Shout」は自分の限界にも挑戦しましたから(笑)。次のフレーズに手が追いつかないくらいのスピード感があります。

──dEnkAさんのギターは、今回もプレイも音色もいろとりどりで。

dEnkA:確かに今回もいろいろ入れましたね。「Neverland」はもう、わけのわからない音ばっかり入ってますよ。ギターの音じゃないだろうっていう音も結構入れてますが、全部ギターの音です。シンセの音はまったく入れてないですね。

──ライブのことを考えず?

dEnkA:考えてなかったですね(笑)。

w-shun:今、まさにどうやってライブで表現しようって困ってます(笑)。僕らは、ライブに関してはバンドの生感を大切にしているので同期とか一切入れないんですよ。エフェクターで音源の再現範囲を高めているんですが、その限界をみたいっていうのがあって。

──今、ボーカリストはまだまだこれからも音色の幅を広げていくと言いましたが(笑)?

dEnkA:結構、今、限界だよ、これ(笑)。でも、もっとやりたいっていう気持ちもあるんですよね(笑)。

──こういうサウンドをやろうと思ったら、普通はレスポールを選ばないと思うんですよね。それこそ7弦とか選びそうな方向性だと思うんですけど。

dEnkA:そうですね。僕はジミーペイジとかジョーペリーが好きなんです。

──さっき、レイジやリンプが古いと言ってましたけど(笑)。チューニングは?

dEnkA:1~5弦が一音下げで、6弦は2音下げです。

亜太:僕らは、昔からすごく重いサウンドでやっていたので、そういうチューニングを軸に曲を作ると、必然的にベースは5弦ベースっていうことになるんですよね。

w-shun:それだけチューニングを下げておきながら、曲を聴いたらポップだという(笑)。なにをしたいねんと。

──先ほどのナオミチさんの話とも合致しますね。ヘヴィで攻撃的だし、ジャズやアラビアンの要素も入っている。だけど、ポップだという。

w-shun:そうですね。そのポップ感覚は最初からありましたね。ただ、ここまで幅を広げるのって恐かったりもするんです。最終的になにがしたいの?っていうことになりかねないから。でも、そこで一貫性を求めない。それぞれが全然違う濃い個性を持った集まりで、ひとつにまとめるのが大変なんですけど、自分たちが鳴らしたら自分たちの音楽になるっていう自信があって。それはメンバーを信頼しているからこそなのかもしれないですね。今バンドをやっていて楽しいんですよ。好き勝手やっているっていうか。自分たちでさえ、次の作品ではなにが出てくるのか想像つかないくらいだから(笑)。

──そのときに感じたものが、そのまま作品になっていくというあたりは、歌詞にも言えることですか?

w-shun:素直に、そのときの感情であったり、オレはこう思うのになっていうことを歌詞にしてますね。だから最初にテーマありきではなくて、後々歌詞を読み返すと、漠然と大きなテーマが全曲にあったんだなって気づくことが多いんです。前作はゼロというフラットなところだったんですけど、今回は時間やマインドっていうところが共通していて。そこには2012年に経験したことへの答えが詰まっていると思うし、それをリアルタイムで表現したものなんですね。

──だからこそアルバムタイトルは『reality & liberty』なんでしょうね。3月から5月にかけて<『reality & liberty』Release Tour>が開催されますが、やっぱりこのミニアルバムが中心のライブになるんですか?

w-shun:そうですね。この作品をライブで表現することで、ライブハウスをもっと楽しく自由な空間にしたいですね。

──“ライブの楽しみ方は自由”といつもメッセージしているKNOCK OUT MONKEYですが、もし自分がKNOCK OUT MONKEYのリスナーだとしたら、あなたはライブハウスでどんな楽しみ方をしますか?

w-shun:さっきは“モッシュやダイブだけがライブの遊び方じゃない”っていいましたけど、俺はモッシュやダイブですかね(笑)。

全員:おい!

w-shun:ははは(笑)。自分はそういうのが好きで始めた人間なんで、どちらかっていうとガチャガチャしたほうが個人的には楽しいんですよ。

ナオミチ:僕はお酒が好きなんで、ライブハウスではお酒を飲んでテンションをガッと上げて……まあ、ダイブとか(笑)。

全員:おまえもかい(笑)!

ナオミチ:まあ、輪(サークルモッシュ)の中にいると思います(笑)。

dEnkA:僕は意外にオトナ観したいですね。楽曲の展開が激しいので、それをライブでどう再現するのかっていう。ジャックダニエル片手に冷静に観てみたい。

──腕組みしながら、ギタリストの手元や足元を凝視しちゃうタイプですね。ステージ上のアーティストにプレッシャーをかけるように。

dEnkA:それです(笑)。

亜太:いつもステージ上からフロアを観ているじゃないですか。僕らのお客さんって結構お客さん同士でつながっていくんですよね。ライブハウスで初めて知り合って、アドレスの交換をして、本当に友達になっていく。純粋に音楽が好きで、ただただつながっていく。学校とか会社とかそういう組織とは違う場所で。ここでしか得られないものがあって、それをステージ上から観てても肌で感じるんですよ。その光景を観ているから、やっぱりそこに混じりたいですね。綺麗事じゃなく、僕らは会場にピースな空間を作っていきたいし、居心地のいい場所に感じてもらいたい。ステージとフロアっていう差はありますけど、どちらにいても共通してそういう場所を作っていきたいですね。

取材・文:梶原靖夫




New Mini Album『reality & liberty』
2013年3月6日(水)リリース
QCL-014 \1,500(tax in)
1.Beginning(skit)
2.Scream & Shout
3.Primal
4.Blazin’
5.Neverland
6.ピエロの仮面
7.TODAY
8.Climber

(C)2012 Mount Alive co.,ltd. All Rights Reserved.
(C)FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY

<KNOCK OUT MONKEY【reality & liberty】Tour>
3月21日(木)広島CLUB QUATTRO
3月22日(金)京都MUSE
4月4日(木)神戸 太陽と虎
4月6日(土)長崎Studio DO!
4月7日(日)福岡Queblick
4月12日(金)名古屋Electric Lady Land
4月20日(土)旭川CASINO DRIVE
4月21日(日)苫小牧ELLCUBE
4月22日(月)札幌Bessie Hall
4月24日(水)帯広Studio Rest
5月17日(金)仙台MACANA
5月19日(日)心斎橋CLUB DROP
5月23日(木)渋谷O-WEST -Final-
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