20代から50代までの男女計500名を対象に聴感覚の共同調査が行われ、日本人独自の聞く力「日本耳」に関する様々な結果が得られたようだ。音質や環境にこだわることが「日本耳」を育て、加齢に逆らい聴く力を高める効果もあるという。しかも「日本耳」は出世・昇給が早いかもしれないという考察もあるとか。

◆調査結果参考グラフ

これらは、ソニーマーケティング株式会社と株式会社ネオマーケティングが行った調査をまとめたもので、「日本耳」とは音から欧米人とは異なる想像力を広げられる日本人特有の能力を指している。精神科医の名越康文先生によると、日本人と欧米人は情報処理の仕方に違いがあり、日本人は音を全脳的に捉え、音からビジュアルを想像したり、感情を掴んだり、その場の状況を判断する力に長けているのだという。

今回の調査では、「日本耳」の定義となる「音の分析力」を7方向から調査、分析し、日本耳の度合いを高・中・低で評価分類した結果、「高」である「日本耳」を持っている人は9.4%(47人)と、約10人に1人が持つことが明らかとなった。

音楽を聴くとき機材(環境)に対する“こだわり”では、全体では30.8%がこだわるのに対し、「日本耳」を持つ人では7割以上(72.3%)がこだわるという結果が出ている。音質についても同様の傾向で、「日本耳」を持っている人の83.0%が「音質にこだわる」と答えており、全体(48.0%)をはるかに上回る。

また、「日本耳」を持っている人は数年前の若い頃よりも、現在聴く力が増していると感じている人が多く、逆にそれ以外の人はここ数年で聴く力が減少している自覚があることも判明。聴力は視力と同様、年齢と共に低下すると言われているが、感性や想像力などに関連する「日本耳」は機材や音質にこだわって音楽を聴くことで、加齢に反し育てていける可能性があることも明らかとなった。

日本人が音に関して独特の感性と文化を持っている例として、日本庭園で見られる「ししおどし」がある。このような人工的に音の鳴る装置は日本が発祥であるという。これは音から様々なイメージを非常に大きく膨らませてしまう日本人固有の感覚から、竹が石を打つ音が持つ風情を利用し、景色と空間のイメージをさらに深く味わえるよう、設置されたのだとか。風鈴もそういった日本情緒の一端であろう。

古来から持つ優れた聴感覚によって、言語にも日本固有の音の表現が多く生まれている。「さんさんと降り注ぐ」「しんしんと積もる」などの擬音語や擬態語は、和歌や小説、歌謡曲にいたるまで幅広い分野で特定状況の些細な違いを細かに表現し、豊かに伝えるために紡がれた日本人ならではの言葉だ。「日本語は発音が世界一美しい言語」と言われたりもするが、そもそも音に対して敏感で些細な違いを慈しむ日本人が創った言語だけに、それも当然のことなのかもしれない。

また、イヤホン/ヘッドホン・メーカーのエンジニアに話を聞くと、欧米の音楽と比べ日本語の音楽は、ボーカル部分の周波数帯域が一番広いという話も聞く。母音の発音が独特で、低域から高域まで幅広い領域を用いた発音が日本語の特性であり、質の高いイヤホン/ヘッドホンを作るには、日本語での楽曲のテストが欠かせないとの話も耳にする。

音に対して繊細な感覚を持つことで、人の想像力、創造性は豊かになる。音楽を高音質で聴くことは、日本人のコミュニケーション能力、創造性の向上に好影響があり、「日本耳」を育てる効果があること、また「日本耳」を持つことは、日常生活でも出世や昇給など経済的豊かさにも作用する可能性があることが推察された。

一方で、音楽心理カウンセラー齋藤寛氏によると、現代においては日本人特有の「日本耳」が減少していることも今回の調査結果から見てとれるという。些細な音に耳を澄まし、聴感覚を研ぎ澄ます機会、あるいは繊細な音を楽しむ環境が失われつつあるのかもしれない。日々の生活で「高音質」に触れ、繊細な音に耳を澄ませ想像力を広げる楽しみを持つことが、日本人ならではの感性や意識を育むというのが重要なポイントと言えそうだ。