【インタビュー】陰陽座「自分は用無しになるということを覚悟した上で、むしろその天下泰平を求めて戦いに臨む政宗の意志。それこそがこの物語の最大の肝だと思います」

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■“今”を積み重ねることでようやく“明日”が来て
■かつて“未来”と呼んでいた“今”を生きることができる



▲「青天の三日月」
――カップリングの「ゆきゆきて青し」は、「青天の三日月」の後日談と捉えて良いんでしょうか?

瞬火:後日というより、直後ですね。戦いが終わったあと、泰平という名の晴れ渡った青天を見上げている政宗の心情――いろんな意味で背負っていたものを下ろした後の穏やかな感じと、この先に泰平が続いてゆけば良いという気持ちを黒猫が歌っています。ただ、その裏には武人として去りゆく一抹の寂しさのようなものもあるので、そういったものを表現するには、どんな楽曲が合うんだろうか? と考えた結果、浮かんだのがこの楽曲です。言葉で説明するなら80~90年代の産業ロックと呼ばれたような音楽と言えばいいですかね。いわゆるポップスではなく、ハードロック然として地面にしっかり足がついていて、どっしりしてるんだけどキラキラしてて、爽やかでキャッチーなんだけど熱い……というタイプの音楽ですね。

黒猫:80年代後半から90年代初頭は、私もドキドキワクワクしながら洋楽を聴いていた時代です。産業ロックと言うと悪い意味に捉える人もいるんですけど、要は良いメロディ、良い曲がアメリカを中心にした西洋に溢れていた時代だと私は思っていて、そのころの音楽ってホントに素敵なものが多いんですよね。この「ゆきゆきて青し」は、それを陰陽座流に昇華した曲のように感じるので、私もすごく好きです。

――わかります。とても懐かしい。

瞬火:かつてはメインストリームだったこともある音楽ですが、もちろんこの2014年にこの曲がそうなることはありません(笑)。ただ描きたい情景に合う音像を迷いなく選んだ結果ですし、今まで率先して提示してきたような陰陽座の主成分ではないので、この機会にやってみることにしたんです。きっと僕たちと同世代の方か、もう少し上の方には懐かしく感じていただけるでしょうし、お若い方には“なんか爽やかな感じだけど陰陽座の中では新しいね”と思っていただけるでしょうし。そこから時代を遡って、かつての海外の高品位なハードロックに触れるキッカケになったら本望ですね。

――中でもサビの切ない清涼感が、とても良いですね。

▲黒猫
▲瞬火
黒猫:嬉しいです。安堵と一抹の寂しさという心情と、歌詞と曲がすごくマッチしているなと思ったので、そこに乗せるべき歌声もあまり考え込まず、ホントに曲の力、歌詞の力に乗って歌ったら、こういう結果になったんですよ。瞬火のヴォーカルも、ちょっと「青天の三日月」とは打って変わった感じになっていて。

――歌い出しの艶やかな声にグッと来ましたね。ところでサビの“蒼よりも 青い”は、故事成語の“青は藍より出でて藍より青し”に引っ掛けたもの?

瞬火:引っ掛けたというか、もじったというべきでしょうね。あれは主に弟子が師を凌いだときに使う言葉ですけど、この場合の“蒼”は「蒼き独眼」を指していて、つまり、秀吉に潰されそうになりながら武人として全力で戦の中に生きていた政宗自身を象徴しているんです。で、その頃よりも、この“青”天を望んでいる……つまり、天下を器のある人物に預けて、自らは身を引くという決断をした今の自分自身こそを良しとする、ということですね。紆余曲折を経て、最終的に青=天下泰平に到達できて良かったと。

――……なんと! 三部作の完結としては最高の締め括り方ですが、もしや「蒼き独眼」の時点で、すでにここまでの構想があったとか……。

瞬火:いやいや、当時は続編のことなど影も形もなかったので、「蒼き独眼」1作に伊達政宗像を集約するつもりで臨みましたよ。それが2作目、3作目と同じ人物の戦いをテーマに楽曲を作ることになったのは、全く予想外のことでしたね。ただ、3作を作り終えてみると、政宗を中心とした架空の戦国物語に対して、自分たちの軸をズラすことなく、ストーリーから外れることもなく、政宗のパブリックイメージというものを崩すこともなく、やり切れたんじゃないかと自負しています。なので、今、一番恐ろしいのは第四弾です! だって、この後は江戸時代ですからね。江戸時代も政宗は生きてますけど、ここで戦いを起こしたら、今度こそ歴史が変わってしまう。僕としては、これが伊達政宗の最後の戦いだ! という気持ちで作ったので、もし続くとしたら……今度は人物が変わるといいなと(笑)。

――人物が変われば、また新たな物語が創造できますからね(笑)。しかし、大サビの“未来は其処にない 只 明日 丈”にはハッとさせられました。これぞ瞬火イズム。

黒猫:ねぇ! 私も大好きです。

瞬火:“未来”という単語自体に否定すべき意味合いは全く無いですが、やたら未来、未来と都合よく使ってしまうと、ものすごく無責任な言葉になるじゃないですか。ここで言いたいのは一足飛びに未来を目指すのではなく、まず“今”を積み重ねることでようやく“明日”が来て、さらにソレを積み重ねることで、かつて“未来”と呼んでいた“今”を生きることができるのだ……ということですね。他のサビにある“信じることよりも 只 成した”とか“夢見てなどいない 只 成した”とかも全部そうですが、要するにおためごかしでは無く、今を生きなければ明日も未来もない、という想いを、政宗の心情と重ねてココに籠めたんです。

――もはや一種の人生哲学ですね。第三者のストーリーを軸にしてさえ、ここまで溢れ出る瞬火イズムは、果たして次のアルバムではどうなってしまうんでしょう?

瞬火:それはお楽しみに(笑)。今まで培ったものを大胆かつ丁寧に積み重ねて、作り手も聴き手も十二分な手応えを得られるものになるはずです。最低でも今回の「青天の三日月」の2曲で感じられる振り幅と方向性は同じ線上にあると言えますが……まったく別の意味で予想は裏切りますね。かなり大胆に。

黒猫:次作の構想を瞬火から聞かされたとき、メンバー全員が“ええーっ!”ってなりましたから(笑)。驚くと同時に、そこに陰陽座イズムを感じて、これは魂籠めて制作に臨むぞ! というワクワク感で今もいっぱいです。

瞬火:前作からの期間が空いているので、それだけ待ったに値する内容、クオリティであることはもちろんですが、クオリティだけで応えるのでは……あ、もうダメだ。これ以上は言えない! とにかく“待った甲斐ありすぎ”と言わせます。いろんな意味で、絶対に!

取材・文●清水素子



「青天の三日月」
サミー製ぱちんこ『ぱちんこCR戦乱BurST!』主題歌
2014/03/19発売
KICM-1509 ¥1,143+税
1.青天の三日月
2.ゆきゆきて青し
3.青天の三日月(インストゥルメンタル)
4.ゆきゆきて青し(インストゥルメンタル)


◆陰陽座 オフィシャルサイト

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