【インタビュー】世界を驚かす兄弟ロックデュオ、TarO&JirOがヘヴィーに鳴らす『OVNI』を紐解く

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騙されたと思って一度聴いてほしい――。
世界一ぶっ飛んだ音をアコギで鳴らす兄弟ロックデュオ、TarO&JirOがリズミカルでヘヴィーな1stアルバム『Brothers Fight』とは対照的に、重低音や不協和音を響かせながら、さらにヘヴィに、さらにダークに、そしてマニアックに洋楽テイストの強いロックな自分たちを全開させた2ndミニアルバム『OVNI』(オヴニ)を引っさげBARKSに再登場してくれた。タイトル“OVNI”はフランス語でUFOを示す。TarO&JirOがフランスのギターロックの大会で優勝したとき、現地メディアから「日本から来たOVNI」と紹介されたことを思い出し、つけたという。今回はアルバムに関するマニアックなネタを紹介しながら、ワールドワイドに活動してきた彼らだからこそ知っている海外でライブをするときに遭遇する“ありえへん世界”も教えてくれた。

◆俺が曲を作るときのエネルギーは怒りとか叫びたい気持ちだったり、
負の感情から生まれることが多いんで必然的にこういう曲が増えるんです。(TarO)


――まず聴きたいのは1stからの変貌ぶり!TarO&JirOに何があったんですか?(笑)

TarO:(笑)1stの『Brothers Fight』が僕らの陽の部分だとすると、今回の『OVNI』は陰の部分が出たというイメージです。

――最初からその2面性を分けて出そうというコンセプトだったんですか?

TarO:1stは勢いをそのまま音源にしようという考えで作ったんですね。そして今回は新曲+海外で成長させてきた曲を合わせてみたら、なぜかダークなアルバムが仕上がりました。

JirO:1stには俺らの中の明るい曲調、ポップ寄りなものが集まった分、今回はダークな曲が揃った。そこは意図していた訳ではなくて、選んでみたらこうなっただけです。『Brothers Fight』とは印象が違うものを作ろうって思ってたら自然とこうなりました。

TarO:僕ら、どっちかというと、こういう2ndに入ってるような楽曲のほうが多いんですよ。

――そうなんですか?意外ですね。取材現場ではこんなに明るいんだけど、実は…………暗かったりするんですか?

TarO&JirO:そうですね(笑)。

TarO:ライブでははっちゃけてるんで明るいイメージではあるんですけど、俺もJirOもクリエイティブなところではダークな部分が多いかな。とくに俺が曲を作るときのエネルギーは怒りとか叫びたい気持ちだったり、負の感情から生まれることが多いんで必然的にこういう曲が増えるんです。1stも陽な部分といいながら、歌詞は幸せなアルバムではないですし。

――確かに。あと、これは聴き心地なんですけど。今作のほうが洋楽っぽいんですよね。

TarO:そこも僕らは全然意識してないんですよ。だから英語の曲、日本語の曲という意識もない。30分のライブを作るような感覚で曲を並べただけなんですよね。

◆出だしのギターを口ずさんでたらこの言葉が出てきから入れただけで。
結構ギターリフやメロディーから言葉が出てくることってあるんですよ。(JirO)


――1曲目の「涸れない水たまり」ですが、インストのその上に語りが入っていて、ダークな世界に導かれます。

TarO :これは次の「Once in a while」に繋ぐためのイントロとして海外のフェスとかでもよくやっていたもので。

今回、レコーディングするにあたって語りとか入れたら面白いんじゃないかと思いついて入れました。語りの歌詞はある朝、夢から覚めた後に“水たまり”と“永遠”って言葉がひたすらこだましてたんで、そこから閃いたものですね。

――ちなみに、夢は日本語で見るんですか?

TarO:そうですね。でもイギリスに居たときは英語で、フランスに居たときはフランス語が出てきたりしましたよ。

JirO:夢にヨーロッパの人が出てくると、そのときは英語だったりしますね(笑)。

――なんか、カッコいいですね(微笑)。で、そんなお二人がイギリスに居るときに作ったのが「Once in a while」。

TarO:ロンドンに居るときにまさにBrothers Fight(兄弟喧嘩)して一切、口もきかなかった時にそれぞれで創作してて、俺はアコースティックに、JirOは打ち込みに、ハマった時期があったんですよ。その流れがあって完成した曲のひとつですね。

TarO:元はバンドバージョンだったんですよ。でも、出だしのギターリフがカッコよかったんで、TarO&JirOスタイルにアレンジしてアコースティックロックにしました。

――これはJirOさんが弾くスラップが激ヤバ!

TarO:インパクトがありますよね。

――サビで歌ってる“タラリラリラッティ”ってところ、歌いにくくないですか?

JirO:それはよく言われるんですけど、歌えないようにしようと思って入れた訳じゃなくて。例えば『Brothers Fight』に収録されている「何人来るかな、やって来るかな?」はギターリフがそういう言葉に聞こえてきたからああいう歌詞にしたんですね。これも、出だしのギターを口ずさんでたらこの言葉が出てきから入れただけで。結構ギターリフやメロディーから言葉が出てくることってあるんですよ。

――なるほど。「Brain soap」は、JirOさんのギターの音がやんちゃすぎてヤバすぎ!ここにはどんな秘密が?

JirO:かなりマニアックな話なんですけど。これは超変則なチューニングをしてるんです。開放弦の音が「Cm♯」になるチューニングになってて。これはハーモニクスをしたときに、マイナーな音が鳴るようにしたくてやったんですけどね。

――TarO&JirOがロックな音を鳴らす武器のひとつに変則チューニングというのがある訳ですが。そもそもこれをやり出したきっかけは?

JirO:1音下げをやりだしたのはかなり前です。俺ら2006年からバンド活動をやっていたんですけど。そのときに使うようになったのがきっかけですね。俺のギターに関しては、その1音下げからさらに6弦だけをドロップCまで下げている。

TarO:だから、JirOの音はベースっぽいんです。

――なるほど。そこにさらに変則チューニングを加えた「Brain soap」は、音的にヘヴィーでイビツ感が満載、音に噛みつかれてる気分ですよ。

TarO:歌詞もまさにそう!噛み付く感じですからね。

JirO:そう言われてよかった。この曲は一発で録った音そのものに野犬みたいな凶暴性が出ていたから、オーバーダビングもしてないんですよ。俺らの攻撃性が出た曲ですね。

――でも、こうして取材しているときのTarO&JirOには凶暴性なんて微塵も感じないんですけどね(笑)。

JirO:俺ら今は猫を被っているだけなんで(笑)。これは陽の部分の俺ら。でも、本当はこう見えて人付き合いがあまり得意ではないので。愛想よく見えつつも、一人のときは人には見せられないダークな部分がありますから。

―― 一発録りの「Brain soap」に対して「襲来― Landing―」はエフェクティブな音世界で怖さが倍増してるんですよね。

JirO:アコースティックの出来る限りを使って、UFOが煙を吐きながらがら降り立ってくる感じを音で表現してみました。

――その後に続く「煙」。L.Aのストリートで演奏して散々な目にあったという逸話がある曲はこれですか?

TarO:そうなんですよ!同じ曲ばかりやってても面白くないってことでカリフォルニアの陽気な空の下、こういう曲もやろうって思って作ったんですが……

JirO:やったら逆に俺らが落ち込んだ(苦笑)。

TarO:こんな陽気な場所でやる曲じゃねぇよって、やってるこっちが暗くなって。でも、よく路上ライブをやっていた夜の新宿には合っているんですよ。疲れたサラリーマンが歩いてるところにはピッタリなんですけど、明るいカリフォルニアのピエロがジャグリングしてるような場所でやる曲じゃあないです。このとき、音楽って環境に左右されるんだって初めて思いましたね。

◆インタビュー続きへ
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