【インタビュー】ライトブリンガー、単なるメロスピにとどまらないプログレッシブ感が満載の新作『monument』

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■私はシンガーソング・ライターではないので自分のエゴを曲に詰め込むのは曲に失礼だと思う
■だから、それぞれの曲に合うテーマや世界観を選ぶということにはすごくこだわります


▲『monument』初回限定盤
▲『monument』通常盤
▲Fuki
▲Mao
▲Hibiki
▲JaY
▲Yumi

――それぞれの歌詞のテイストを変えていながら、どれも楽曲にフィットしているのは本当に驚きです。

Fuki:私はシンガーソング・ライターではないので、自分の言いたいことを歌にする作業ではないというのがあって。私が書いているわけでもない曲に、自分の言いたいこととかエゴを曲に詰め込むのは曲に失礼なんですよ。そうじゃなくて、楽曲を素晴らしいものにするための仕事なんです。だから、それぞれの曲に合うテーマや世界観を選ぶということには、すごくこだわります。基本的に日本語で歌詞を書くのも、そういうところから来ているし。堪能なわけでもない英語で歌詞を書くのは楽曲にとって良くないし、いちいち辞書を調べないといけないというところでフィルターが掛かってしまう気がして。“伝える”ということを重視して、日本語で書くようにしています。ただ、「Dicer」は、全部日本語で書くのは無理だなと思って。歌い方もしゃらくさい感じで歌うことになるだろうと思ったので、英語を入れることにしました。

――歌詞も高い意識で書かれていますね。

Fuki:バンドのフロントマンであり、歌詞を歌うボーカルである自分が全部の歌詞を任せてもらっているのは、すごく嬉しいことなので。だから、そこにはちゃんと責任を持とうと思って。それに、こだわって歌詞を書くのは楽しいし、やり甲斐も感じています。今回も、「Clockwork Journey」と「monument」をリンクさせようという構想があって。アルバムの最後に来る「monument」はバラードで、「Clockwork Journey」のメロディーを引用するということを、「Clockwork Journey」の歌詞を書く前に聞いていたんですね。それで、まず「Clockwork Journey」のテーマは“スチーム・パンク”と“タイムマシン”にしようと決めて、歌詞を書いて。そのうえで、「Clockwork Journey」と「monument」の間に時間軸の流れがある感じにしようと思って。「Clockwork Journey」は過去にして「monument」は未来の話にしようと。そういう当たりをつけて関連づけることにして、「Clockwork Journey」の歌詞を書きました。それが、すごく楽しかったです。

――「Clockwork Journey」と「monument」は、手法が違っているのにリンクしているということも見逃せません。続いて、今作のプレイについて話しましょう。

Mao:このバンドらしい曲を作っていくと、自然とプレイの方向性は決まるという面があって。キーボードに関しては、同期を使う曲もあるけど、人間味のある呼吸感を出していきたいという想いがあるんです。特に、ライブのときは生々しくいきたいので、手弾きにはこだわりますね。今回も敢えてシーケンスを使わずに手弾きした曲もあって。「Gothel」のイントロとかが、そうですね。デモは全部打ち込みで作ったのを、手で弾き直したんです。「Dicer」とかは、バリバリにオルガン・ソロを弾いているし。これは、もう絶対に手弾きじゃないと出ない味ですよね。そういう部分を押し出した曲と、「Clockwork Journey」みたいにシーケンスをモリモリ使う曲の両方を入れることを意識しました。

――手弾きのパートが多いこととピアノやオルガン、アナログシンセといった音色の選び方が相まって、良い意味で昔堅気のプレイヤーというイメージがあります。

Mao:僕は古いです(笑)。それは、僕のキーボード・セットを見れば分かると思います(笑)。今でも昔ながらにキーボードを積み上げているので。

――良いですね(笑)。シンプルなバッキング・パートとテクニカルなソロ・パートとの対比を活かしていることも特徴になっています。

Mao:メリハリは、かなり意識しています。Hibiki曲はバッキングが忙しくて、結構大変なんですよ(笑)。それがすごく楽しいけど、自分の曲はメリハリを付けるようにしています。それは、もう自作曲に関しては全曲共通です。

――それも2人の作風の違いにつながっていますね。キーボード・ソロは、どういうものと捉えていますか?

Mao:バンドとして一番聴かせたいのは歌ですが、その合間に入ってくる味付けも大事だなと思っていて。ソロは、それぞれの楽曲の世界観を、より深めるものであるべきだと思っています。さっきテクニカルと言われましたけど、LIGHT BRINGERはテクニカルなソロが合う曲が多いから自然とそうなっているだけで、テクニックをひけらかす場所とは捉えていません。

――ソロを録るときは、事前に決め込んでいくタイプでしょうか?

Mao:いえ、基本的にアドリブです。「Gothel」のキーボード・ソロとかは、ほぼ一発録りでOKでした。「Dicer」みたいに、キーボードとギターが交互にソロを弾くような曲も事前に2人で話し合ったりしないし。なにも決めずにスタジオに行って、その場のノリに任せてソロを弾いて。ライブのときもCDと同じソロを弾くとは限らないという(笑)。そういうスタンスが好きなんです。

Fuki:Mao君、すごいね(笑)。自分の歌に関しては、「Dicer」で今までしたことがない歌い方をしてみました。「Dicer」は、喋っている時の地声に一番近い発声方法で歌っています。だから、すごく楽に録れたんですよね。メチャクチャ早く録れて、スタジオに入ってから2時間半後に、“お疲れ様でした!”と言っていました(笑)。他の曲はウォーミング・アップの段階で、こういう出し方をしよう、こういう声にしようって考えながら、結構試行錯誤して歌の方向性を決めるんです。歌も他の曲と似ないように…ということを考えますし。それが一番簡単だったのが「Dicer」です。

――歌も被らないことを意識されているんですね。

Fuki:しています。歌い方が似ないように気をつけなきゃと思ったのは、「魔法」と「名もなき友~Lost in winter~」と「monument」。この3曲はゴリゴリに激しく歌うものじゃないというところで、自分の中で同じジャンルとしてあって。最初に録ったのが「魔法」だったかな。かなり、ポップス・ポップスした歌い方をしましたね。この曲は、幼い女の子が主人公の歌詞で、ラブソングで…ということで、優しくて、かわいい感じの歌になっています。他に静かめの曲が2曲残っているから、それと差別化するために、かわいい成分を多めにすることにしました。後々、困らないように(笑)。次に「monument」を録った時は、かわいくなり過ぎないように、かつ透明感のある感じを目指して。自分の中で歌うのが難しくて、かつ一番気に入っているのが、「名もなき友~Lost in winter~」です。これは、アルバムの中で一番最後に録った曲でもあるんですけど、ライブで再現できるかなという、ちょっと難しい歌い方をしていて。小さい声で歌うと、そのぶん空気の成分というか、ウィスパー成分が増幅されることを活かして、そういう歌い方をしています。それに、この曲は“僕”という一人称で、幼い男の子をイメージしているので、女の子に聴こえないけど、幼いという部分を意識しました。

――やりますね。パワフルな歌も、切迫感のあるものと力強さと華やかさを併せ持ったものという風にニュアンスを変えていますし。

Fuki:分かってもらえて嬉しいです(笑)。あとは、「Gothel」も唯一の歌い方をしていますね。この曲は、グリム童話の『ラプンツェル』という話がモチーフになっていて、それに出てくる悪役の魔女が“Gothel”という名前なんです。なので、この曲は“魔女感”を表現するために、妖艶さを出したくて。そのために、「Dicer」みたいな地声系ではないし、お腹から“スパーン!”と声を出す「Clockwork Journey」や「ICARUS」みたいな歌い方でもないという歌唱法を採りました。

――音源を聴くと、今話してくれたことが全部その通りになっていることが分かります。本当に、表現力に富んでいますね。

Fuki:ありがとうございます。歌というのは心じゃなくて、技術なんですよね。たとえば、魔女になった気持ちで歌えば魔女っぽくなるかというと、決してそんなことはなくて。“魔女感”を演出するためのテクニックが必要なんです。手段として技術がなければ伝えられないので。そういうことは、常に意識しています。

――LIGHT BRINGERは、秀でたテクニックと歌心を併せ持ったメンバーが揃っていることも大きな魅力です。それに、『monument』を聴いて、独自の音楽性を確立した印象を受けました。その辺りは、どう捉えていますか?

Mao:聴いてくれた人が、これはメタルじゃないと感じるなら、それで全然良いです。前作は僕らが“メタルだぞ!”といって作ったアルバムなので、それに対しては“メタルですね”と言って欲しいけど。今回は本当にハイブリッドなジャンルなので、聴く人によっていろんな感想が出てくると思うんですね。でも、ジャンルを超えたところで良い音楽を作れた自信があるので、そこを楽しんでもらえればと思います。

Fuki:前作が、あまりにもメタル・メタルしていたので、『monument』を聴いて全然違うものだと感じるだろうな…ということは予想していました。それで、レコード会社のスタッフとかにも、“今回のアルバムは、メタルだと思いますか?”と聞いたんですよ。そうしたら、“プログレ感は増したけど、メタルはメタルじゃない?”と言われたりして。聴く人によって、その人が知っている音楽によって、印象が違ってくるんじゃないかなと思っています。私としては、メタルと受け取ってくれてもいいし、プログレッシブ・ロックと感じるならそれで構わない。そういうことよりも、今の自分達が一番カッコいいと思う音楽をパッケージした作品を作れたことに満足しています。

――『monument』は、より多くのリスナーを惹きつける一作になりましたね。アルバムのリリースに加えて、11月に行なわれる東名阪ツアーも要注目です。

Fuki:今度のツアーは、新曲は全部やるよね?

Mao:うん、全部やる。リリースからライブまでかなり時間がないので、お客さんには頑張って予習してきて欲しいです。Fuki:もしかしたら、潔くアルバムは買わずに、ライブで初めて聴いて、会場の物販でCDを買ってもらっても良いかもしれない。1stメジャー・アルバムだった『genesis』は、ライブで初めて聴いてもノレない曲ばかりだったんですよ(笑)。でも、今回は入りやすいというか、曲を知らなくても楽しんでもらえる曲が多いんですよね。なので、ライブを観てからアルバムを聴いてもらうのも良いと思います。アルバムを買おうという気持ちにさせるライブをする自信もありますし。あとは、新曲を楽しみにしていて欲しいけど、いつも通りみんなで声を出したり、ジャンプしたりする楽しさを持った曲もやるので。いろんな要素を楽しめるライブになると思うので、期待していて欲しいです。

Mao:さっきも話したように、今回の自作曲はソロ・パートをそれぞれに任せたというところで、ライブをすごく楽しみにしています。自分も含めて、もうソロの感じとかはライブごとに違うと思うんですよ。11月のツアーでは、3会場で3パターンのソロを楽しめることを約束します。特に「Dicer」とかは、間奏をライブ・アレンジにして、尺を決めずにアドリブの掛け合いにしようかなと思っているんですよね。最近は、ライブのときにフリー・パートを披露するバンドはあまりいないので、ぜひやってみたくて。そういう要素も採り入れて、LIGHT BRINGERならではの構築美と、ライブならではのエモーショナルな部分の両方を楽しんでもらえるライブをしたいなと思っています。

取材・文●村上孝之


『monument』
2014/11/05発売
【初回限定プレス盤】KICS-93060 ¥3,333 + 税
【通常盤】KICS-3060 ¥2,857 + 税
【DISC1 アルバム】
1.旅途
2.Clockwork Journey
3.Gothel
4.Dicer
5.魔法
7.名もなき友 ~Lost in winter~
8.monument
9.陽炎[Live]
●DVD[初回限定プレス盤のみ]
Clockwork Journey(Music Video)
Making of Clockwork Journey

<らぶりーみゅーじっくつあー 2014 >
11月8日(土)心斎橋JANUS
[問]サウンドクリエーター 一般発売 9/20(土)~
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[問]ソーゴー東京 03-3405-9999 一般発売 9/27(土)~
http://www.sogotokyo.com/

◆LIGHT BRINGER オフィシャルサイト

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