【ライブレポート】そこにあったのは覚悟とプライド。モーニング娘。'14 道重さゆみ卒業公演

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贈る言葉は羽賀朱音、牧野真莉愛、野中美希、尾形春水の12期メンバーから。本格稼働はモーニング娘。'15からであり、道重との時間はわずかなものだったが、それでも、「最年長やリーダーになった時にみんなを引っ張っていく存在になりたい」「私の永遠の目標は道重さゆみさん」と、偉大な先輩の卒業をお祝いした。

「私が2年間、モーニング娘。にいる間、ずっとリーダーは道重さんで、リーダーのすべてが道重さんです。とってもカッコイイです。」と小田さくらは涙で言葉を詰まらせる。自分からなかなか甘えにいくことができなかったという工藤遥は、道重のほうからきてくれたことがとても嬉しかったと語り、「道重さんに教わったことを伝えていきたい」と感謝の気持ちでいっぱい。

「みにしげさんは初めて話してくださった時に、怖い人だ! と思ったんですけど、今じゃ、もうお姉ちゃんみたい」と、佐藤優樹(佐藤の中で、道重は“みにしげさん”と呼ばれる)。「みにしげさんからもらった大きな愛で、モーニング娘。'15になっても包み込んでいきたい」と語る彼女は、最後に「みにしげさん……」と、次の句をためらってしまう。それは、自分がその言葉を発してしまうと、それをあらためて現実のものとして受け止めなければならなくなるから。

しかし、道重がやさしく見守り、ファンの歓声が後押しする中、佐藤は涙ながらに「卒業おめでとうございます。」と、口にするのだった。

石田亜佑美は「私いま、すっごい楽しくて、毎日が幸せで。幸せを感じる瞬間には、いつも道重さんがいた。」と語りかける。そして「私は、道重さんが笑っているだけで幸せなんです。だから……笑ってください!」と、自身は泣きながらも道重の笑顔を要求していく。そんな石田の一挙手一投足に、なぜか笑いが起こる会場。なんだかちょっとコミカルな展開になるかと思いきや、仙台での出来事を思い出しながら、「記憶力ってなんでこんなに限界があるんだろうって。こんなに苦しく思ったことはありません。でもそんな時道重さんが、「忘れたくない思い出は、絶対忘れないって信じれば、きっと忘れないよ」って教えてくれたじゃないですか。だから、私、道重さんとの思い出、全部、一生忘れません。」と話す石田に、思わず道重も涙を溢れさせる。

「道重さんは私に、「自分に自信を持って」っていつも言ってくれました。私もモーニング娘。になったからには1番になりたい。なんでもいいから、道重さんに勝てるように。」と、力強い言葉を残す飯窪春菜に、道重は大きく頷く。鈴木香音は、道重のおかげでキャラクターを引き出すことができるようになったと涙まじりの笑顔で、「これからのモーニング娘。のファンに道重さんになってもらえるようがんばる。」と、決意を述べた。

涙で言葉にならない鞘師里保。「道重さんのひとつひとつの発言とか、人を大切にするところとか、常に自分の気持ちに正直な女性だなって思いました。存在感があって、たくさんの方に元気を与える道重さんは、ほんとにカッコイイなって思いました。」と、言葉を絞り出す。一同が感動に包まれているところだったのだが、鞘師が「そんな道重さんを見て、私、何度も何度も嫉妬しちゃうことがあって……」と言った瞬間、「……ええっ、嫉妬!?」と、道重にスイッチが入ってしまう。まぁ確かに、好きな娘から嫉妬されるとちょっと嬉しい。そして鞘師も「常に自分の気持ちに正直な女性」と言った。でも今ここで、そんな自分の気持ちに正直にならなくても……と、喜んでいる道重の姿に笑いが止まらない。

そして鞘師は、道重に対して感情表現が上手くなかったことを反省し、最後に「道重さん、ほんとにほんとに大好きです!!」と叫び、道重の胸に飛び込んでいった。

「まさか生田の番で……」と、道重は足の痛みから、再度ステージに膝をつく。暗転する会場で「さゆみん」コールを煽っていくメンバーたち。数分のインターバルを経て、セレモニーは再開される。

生田衣梨奈は、加入してしばらくして、道重からいじられた時に泣いてしまったことを語り、そこから自身のキャラクターが生まれたことを感謝する。「そしてサブリーダーがんばります!」の言葉に「がんばって!」と道重。すると生田、あのフレーズを道重から引き出そうと「がんばってー」と投げかける。道重は、もちろんそれをわかっていながらも、「がんばってくださいー」と、まさかの肩透かし。それは「生田はそういうキャラ。」という道重からのエールにようにも見えた。

道重の隣で歌うことが幸せな瞬間だったと、涙ながらに語ったのは、モーニング娘。の新リーダー・譜久村聖。道重を手本とし、背中を見ながらがんばっていた彼女にとって、道重がいなくなる寂しさ。そんな気持ちが痛いほど伝わる中で、新リーダーとして少し不安な気持ちも言葉にするも、それでも譜久村は、「モーニング娘。を大好きな気持ちは負けないと思います。だから、道重さんのモーニング娘。を大好きな気持ちをしっかり背負って、これからもモーニング娘。として胸を張って活動していきたいと思います。」と、リーダーの顔を見せる。そんな譜久村に、「ふくちゃんなら大丈夫だよ。」と、背中を押した道重さゆみだった。

メンバーからの言葉と、1万2000人の大きな拍手に見守られて、ステージを降りる道重さゆみ。そして、彼女からの最後の言葉が伝えられるダブルアンコールを待つ「さゆみん」コール。お花畑をイメージしたドレス姿で道重は再度ステージに登場し、そして最後のスピーチを行なう。

そのコメントの全文は別記事(『【コメント全文】道重さゆみ、「さゆみのファンの人たちが、ほかの誰でもない、みんなでよかった。」』 https://www.barks.jp/news/?id=1000110114 )にて、すでにお伝えしたとおり。手紙を読むのではなく、集まってくれた1万2000人のファンが作り出した光景を目にしながら、「さゆみのファンの人たちが、ほかの誰でもない……みんなでよかった。変な人たち、サンキュー。」と、少しの涙と、実に道重らしい言葉で、12年間の感謝の気持ちを言葉に置き換えていった。

卒業セレモニーの後には、卒業していくメンバーが、思い入れのある曲をソロで披露するのがならわし。道重さゆみが選んだ1曲は、メロン記念日の「赤いフリージア」だった。

「赤いフリージア」といえば、彼女がモーニング娘。加入時のオーディション課題曲。つまり、モーニング娘。道重さゆみの始まりの曲を最後に選択したことになる。“あの頃と変わらない、可愛らしい道重さゆみの歌声”に、懐かしさと嬉しさがこみ上げたファンも多かったはずだ。続く「歩いてる」は、彼女がモーニング娘。加入後に初めてウィークリー1位を獲得した楽曲であり、また彼女がモーニング娘。として悩んでいた時期に出会った曲。道重は、ともに手を取り合って歩いてきた仲間たちとともに、この大切な曲を歌い上げる。

そして卒業公演最後に歌われた曲は、「Happy大作戦」。会場のオーディエンスも肩を組み、道重も、メンバーも、オーディエンスも、誰もが笑顔で、本公演を締めくくったのだった。

  ◆  ◆  ◆

在籍4329日目の卒業。やっぱり道重さゆみは、どこまでも道重さゆみだった。

この日のために完璧に調整し、卒業セレモニーの定番だった手紙をも手にすることもなく、ファンひとりひとりを目にしながら自分の言葉で感謝の気持ちを伝えた道重。泣き顔は見せたくない。最後まで可愛い道重さゆみのままでいたいという彼女にとって、メドレー中に発生したアクシデントは、自身が思い描いた、理想的なモーニング娘。としての最後のステージとは違ったものにしてしまったのかもしれない。

いや、それでも結果的に、この日のステージは彼女にとって理想的な形だったはずだ。

なぜなら、モーニング娘。の未来を託し、自身のアクシデントの際にも抜群のチームワークを発揮してみせた頼もしい後輩たちの姿と、全国、いや、世界中から集まった、道重曰く「変な人たち」1万2000人ひとりひとりが手にするピンク色の光と大きな歓声が、間違いなくそこにはあったのだから。

モーニング娘。'14の道重さゆみらしくステージを終えた道重。ステージを降りた直後の姿を、小田さくらがブログに綴っているので最後に紹介しよう。

「そんな道重さんが公演終わってステージ裏にはけた直後 メンバーに抱きついて、声をあげて泣いていて、あんな道重さん、初めて見ました」── 小田さくら(11月27日00:51更新のブログより)

text and photo by ytsuji a.k.a.編集部(つ)

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