「とうとうやってきたぜ!準備はいいかい?」。HIROのアナウンスに大歓声が起きた渋谷公会堂で、→Pia-no-jaC←のツアー<Swing Pacchin Tour2015>のツアーファイナルは幕を開けた。初日の2015年1月11日、千葉公演から約2ヶ月で全国21カ所を廻ってきたツアーの最終日、→Pia-no-jaC←はこれまでよりも更に骨太になったサウンドで、渋谷を熱く沸かせてくれた。

◆→Pia-no-jaC←画像

「アイネクライネ」のMVさながら、トイピアノを片手に登場したHAYATOと、真っ赤なリンゴを齧りながら登場したHIRO。美しいピアノのアルペジオから始まる1曲目は「G線上のアリア」。イントロが終わると一転し、楽しげに身体を揺らすオーディエンスのクラップに包まれて、2人は初っぱなからエンジン全開だ。


「ハイ!エブリバディー!俺たちはニューヨークからスウィングパッチンを伝えるためにやってきた→Pia-no-jaC←だー!」と、怪しげな外人キャラで観客に挨拶をしたHIROは「(オーディエンスがしている指パッチンの)音が小さかったら突っ込もうかと思ったのに、突っ込めないじゃない!」と、テンションの高い会場にとても嬉しげな様子。続いて披露された「美しく青きドナウ」「ジ・エンターティナー」でも勢いを加速させたまま、ツアー序盤に比べ格段にグルーヴが増したアクトを繰り広げていく。クールなステージングと熱を帯びる演奏のギャップがいい。そしてこの日秀逸だったのは中盤の「グリーンスリーブス」。高く高く伸びていく音の波に飲み込まれていくような快感は、まさに→Pia-no-jaC←の真骨頂だと思う。



アダルトな雰囲気の「ハンガリー舞曲」、繊細で儚げな「ラデツキー行進曲」で→Pia-no-jaC←の多面性をしっかり味あわせたあと、このツアーで恒例となった「Today's swinG」のコーナーへ。 “Swing Box”から観客のひとりが引いたボールに書いてある曲をその場でスウィンギーにアレンジして即興演奏してしまおうというこのコーナーだが、この日、観客が引き当てたのは「うさぎDASH」。ライブの盛り上がり必至な曲としてファンにはお馴染みの曲だが、HAYATOのうねりまくるピアノとHIROのアクロバティックなカホンで原曲とは全く違う表情に。この、音楽で徹底的に遊べてしまうテクニックの高さも、もちろん→Pia-no-jaC←の大きな魅力のひとつ。観客からは大歓声が起きた。



本編後半は「台風」からスタート。「残月」ではステージスクリーンに映し出される映像が幻想的な世界を作る中、HAYATOが超絶技巧ピアノを見せつけながらも、エモーショナルな演奏を披露していく。「アイネクライネ」で指パッチンで盛り上がる中、2人も体を激しく動かしながら演奏に没頭していく。そして音楽異種格闘技戦と化した大熱演の「METROPOLIS」で、オーディエンスの熱気は最高潮に。その後の「Jack」では会場中にクラップが鳴り響くなか、HAYATOは立てたピアノでトリッキーなプレイを魅せ、HIROは激しいソロでさらに盛り上げる。そして「世界中で誰もが1年に一度、パーティーの主役になれる日があるのを知ってるかい?毎日誰かの誕生日!」というメッセージとともに「ハッピーバースデー」が披露され、会場はひとつになり本編は終了した。



アンコールではタオルを回して盛り上がる「交響曲第9番 合唱」、そしてシリアスでドラマティックな名曲「ジムノペディ」が立て続けにプレイされ、会場中を惹き込む。そして9月19日豊洲PITで「ONE NIGHT STRINGS」と題したイベントを行うことを発表した。さらにこの日「熊蜂の飛行」でHAYATOの新技“3Dピアノ THE ビクトリー&ムーディー”も初披露され、ピアノを2台立て、縦横無尽にプレイするHAYATOの姿にオーディエンスは大興奮。最後は「PEACE」で会場にピースの花が咲く大団円にて公演は終了した。



終演後2人にツアーを総括してもらったので、そのインタビューも合わせてお届けしようと思う。

──ツアー最終日、お疲れ様でした。今回のツアーを振り返っていかがですか?

HIRO:今日は最終日だったので、演奏しながらツアー中のことを思い出していましたね。今回のツアーは後半に行くにつれて、どんどんやりたいことも増えてきたし、勢いも加速していったツアーだったと思うんですよ。だからもっとやりたかったです。これからに向けて、いろいろと材料をもらいました。

HAYATO:僕は……ピアノの楽しさに改めて目覚めたというか。これまでよりも更に、大胆にアレンジも変えていけたと思うんです。その日にしかできないスウィングのアレンジもやりましたし。『どれが原曲なんやろ?』っていうくらい原曲を壊しても、→Pia-no-jaC←の曲として成立させたし、「台風」や「METROPOLIS」など定番の曲を変化させていってもスリルが生まれることも多くて、“音遊び”での発見が多かったです。

──音楽的な部分での冒険が多かったんですね。初日も見せて頂きましたが、非常にタフなユニットになったなという印象を持ちました。

HIRO:なんだか思い切りが良くなったと思います。HAYATOにいい意味で任せてしまったり、逆に“俺についてこい!”的な部分もあったりで、探り合いみたいなものが序盤に比べると本当になくなりました。意識の部分で変化したというか。

HAYATO:僕はもうどんどん集中度が増していって。頭でメロディーが鳴るようになっていったんです。それを出していくことにただ夢中でしたね。

──今年はこれからイベントが続きますが、このツアーから得たものがどう生かされていくのか楽しみです。

HIRO:その場所でしかできないライブというものをこれからも大事にしていきたいですね。

HAYATO:これからも→Pia-no-jaC←らしく……まあピアノとカホンだけなんでね。でもだからこその可能性というものもあると思うんです。今日やった“3Dピアノ THE ビクトリー”みたいな見た目での面白さもあるし、もちろん音楽的にも“これまでと一緒やな”って言われないように、新しいジャンルにもどんどん挑戦していきたいと思います。

真摯に音楽と向き合い、音楽で勝負する姿勢を、この日のステージでさらに強く見せてくれた→Pia-no-jaC←。インストゥルメンタルユニットとしての新たな可能性を、改めて感じる一夜だった。

撮影:中島たくみ
文:岡野里衣子






<Swing Pacchin Tour2015@渋谷公会堂 2015年3月20日>

1.G線上のアリア
2.美しく青きドナウ
3.ジ・エンターテイナー
4.トルコ行進曲
5.グリーンスリーブス
6.ハンガリー舞曲
7.ラデツキー行進曲
8.うさぎDASH
※観客の引いたボールに書いてあるレパートリー曲をその場でスウィンギーにアレンジして即興演奏
9.台風
10.残月
11.アイネクライネ
12.METROPOLIS
13.Jack
14.ハッピーバースデー
- ENCORE -
15.交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱」第4楽章
16.ジムノペディ
17.熊蜂の飛行 “3Dピアノ THE ビクトリー&ムーディー”
18.PEACE

◆【ライブレポート】→Pia-no-jaC←ツアー開幕、笑顔で指パッチン