【インタビュー】家の裏でマンボウが死んでるP「家の裏でマンボウが死んでいたこともないし、クワガタにチョップしてタイムスリップしたこともないです(笑)」

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■ボカロは機械っぽくても良いので歌詞だけは聞き取れるようにしたいという気持ち
■変に感情がこもっていない方がストーリーものは良いような気がしていて


――曲はそれぞれ漫画のキャラクターに合わせて作られているんですよね。曲を聴くだけで1人ひとりのキャラクターの個性がわかります。

タカハシ:ありがとうございます。そこを目指して作ったので嬉しいです。

――「お前の心なんていつでも金で買える」の後半は金額を提示されて迫って来るのが怖いです。

タカハシ:これは聴く人に、嫌な気持ちになってほしくて(笑)。この曲の主人公になっている金丸というキャラクターが、正体がお金だから人間にめちゃくちゃモテる設定なんですよ。老若男女みんなから大人気なので、人間にうんざりしているし、見下している嫌な奴なんです。でも、好きになる人の気持ちはわかってしまうというポジションで。今回のアルバムでも嫌な奴ぶりを発揮していて、騙されてしまう人が2人登場するんですけど、その人たちの気持ちもなんとなくわかってしまうという複雑な気持ちを感じながら、嫌な気持ちになって聴いてもらえたらなと。


――ボイスドラマ「りはびり活動記」では鬼目線で人間社会の道徳のなさを指摘していますが、タカハシさんご自身の普段から気になっていることを語らせているのでしょうか。

タカハシ:社会的なメッセージとかあればカッコイイんでしょうけど、そうでもなくて。人間というものを別に視点から見たら新しい発見がある、みたいなことでまとめたかったというか。人間じゃない子たちが人間界を目指してがんばってやってくるストーリーなんですけど、「そんなに素晴らしいところなのか?」と。自分たちの今の環境とかを見つめなおすようなきっかけになってくれたらなとは思います。

――作品創りにおいて、最初はふざけていても最後は感動的なところに着地したい、という意識はありますか?

タカハシ:最後に良い話になる、みたいなパターンはけっこうやらせてもらっているんですけど、最初にやったのが1stアルバムに入っている「粘着系男子の15年ネチネチ」という曲。ずっとストーカーみたいに女の子のことを想い続けている男の曲なんですけど、そのときはふざけた曲ばかり作っていたので、リスナーさんの驚きもすごく大きかったみたいで。タイトルで驚かせる曲作りをしていた中で、「こういう驚かせ方もあるのか」という発見になったんです。それとギャグだけだと、何回も聴いてもらいづらいというところがあって。ギャグ漫画って1回目がやっぱり一番面白くて、段々薄れていくものなので、2回目に聴くと印象が変わるような曲にしたいなという気持ちがありました。“ストーリーが良かった”という評価で終わらせたいなと。


――今回のアルバムで使っているVOCALOIDを教えてもらえますか?

タカハシ:今回は2種類を使っていまして、女性ボーカルの曲は「GUMI」という、歌手で声優の中島愛さんの声がモデルになっているVOCALOIDなんですけど、かわいくもあり、力強くもある女性ボーカルなので、色んな曲で使いやすいです。男性ボーカルの方は「VY2」というVOCALOIDで、これは誰の声か発表されていないんですけど、すごく滑舌の良い爽やかな、声で嫌われることのなさそうな癖のなさが使いやすいですね。どんな曲でもはめてくれるようなボカロです。

――タカハシさんが使う上でボカロにどんな特徴を求めているのでしょう。

タカハシ:ボカロって上手に歌わせるように色々調整するんです。音程だけ守っても人間らしくならないので。口の開き加減とか色々パラメーターがあって、それを細かくいじりながらやるらしいんですけど、本来は。もう~、面倒臭くてですね(笑)。まあ、いくらやったって人間みたいには結局ならないので、機械っぽくても良いのでとりあえず歌詞だけは聞き取れるようにしたいという気持ちです。変に感情がこもっていない方が、ストーリーものは良いような気がしていて。聴く人の想像に委ねるというか。泣く場所は人それぞれで良いかなと。よく能のお面に例えられるんですよ、ボカロって。表情は一定なんですけど、角度や見る人の気持ちによって顔が変わるみたいな。だからボカロに求めるものは、上手に感情をこめられるタイプとかじゃなくて、ただただ単調で良いからはっきり歌詞をわかりやすく歌ってくれるボカロを使っています。

――女性の曲は女性らしく華やかに、男性の曲はハードでエッヂの効いた音になっていますが、そこははっきり音色として意識していたのでしょうか。

タカハシ:男女で、というよりはキャラクターごとにという気持ちでやったら自然に男女に分かれた感じですね。曲は歌詞を書いて、こういうストーリーならこういう雰囲気の曲が良いかなと思って作るので。それで女の子の曲はポップになりがちなんだと思います。

――まず、歌詞から作るんですね。

タカハシ:先にプロットを作るんです。歌詞を最初から決めこんじゃうとメロディを当てにくくなっちゃうので、1番のAメロでは話はここからここまで、サビにはストーリーのこの部分が来る、というプロットだけ決めておけば、曲からでも詞からでも好きな方から詰められるので。Aメロはこのメロディを思いついたから、じゃあこのメロディに合わせて歌詞を書こうとか。Bメロは歌詞が重要だからこっちから書こうとか、そんな感じで作っています。


――ツカサさんの絵とはどうリンクさせていくのでしょうか。

タカハシ:基本的に完成してから任せます。詞・曲のタイミングで関わることはないですね。あっちも、一発目に聴くのは完成品が良いというか、ファーストインプレッションが活きると言っていたので、デモを送ってもあんまり聴かないみたいです(笑)。

――姉弟であり仕事のパートナーになるわけですが、今は共同制作者としての面が大きいですか?

タカハシ:僕は仕事を始めてから家を出て1人暮らしを始めたので、仕事でしか会わない人になったんです。会っても仕事の話ばかりですね。もうちょっと自立して欲しいなと思いますけど(笑)。うちの父親がナチュラルに「お兄ちゃんの言うことを聞くんだよ」って、いつの間にか順番を勘違いしているくらいなので。絵を描く以外何もできない人なので、絵が描けて良かったと思います(笑)。

――このアルバムで家の裏でマンボウが死んでるPを初めて知った人に伝えたいことがあればお願いします。

タカハシ:さんざん、自分の名前のことで文句を言ってきましたけど(笑)、名前で避けないで一回聴いてもらいたいですね。やっぱり「ギャグなんだろうな」っていう前提で「じゃあ、そういうのはいいや」って思う方もたくさんいらっしゃるんですけど、それだけではない曲もありますので。3枚目ということでだいぶ自分の納得できる曲を作れるようになりましたし、普通に音としても楽しんでもらえたら。「家の裏でマンボウが死んでるP」という名前を見て想像するものとはまた違うかもしれないので、聴いて確かめていただければと思います。

取材・文●岡本貴之

リリース情報

『百鬼蛇行』
発売中
VIZL-926 \3,200+税
CD
01.鬼の尊厳復権組織りはびり featuring 綾 (CV:柿原徹也) & 唯 (CV:山下大輝)
02.ボイスドラマ「りはびり活動記~撃鉄篇~」
03.アヘペロっ☆ドリルで掘らせろ膝の裏
04.君を忘れた
05.物語は散った後に
06.お前の心なんていつでも金で買える
07.(ちょっと深刻なレベルで)孤高の花
08.夢見がち拘束具の悲壮な高校デビュー
09.恋のタンドリーハート~素手で触るとGITOGITOするよ~
10.ハロー、ワールド
11.ボイスドラマ「りはびり活動記~慟哭篇~」
12.百鬼蛇行 featuring 綾 (CV:柿原徹也) & 唯 (CV:山下大輝)
13.ボイスドラマ「りはびり活動記~逐電篇~」
14.浮かれバケモノの朗らかな破綻
15.リバースデイズ
DVD
鬼の尊厳復権組織りはびり featuring 綾 (CV:柿原徹也) & 唯 (CV:山下大輝)
君を忘れた
物語は散った後に
夢見がち拘束具の悲壮な高校デビュー
百鬼蛇行 featuring 綾 (CV:柿原徹也) & 唯 (CV:山下大輝)
浮かれバケモノの朗らかな破綻(鼻高々Ver.)
リバースデイズ

「浮かれバケモノの朗らな破綻」第4巻 & 5巻 作品情報
発売中
GCO(スクウェア・エニッス刊)
原作/タカハシヨウ 作画/竜宮ツカサ(家の裏でマンボウが死んるP)
B6判・定価 562円+税
作品 HP :http://www.ganganonline.com/comic/ukare/


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