【インタビュー】Kαin、BLITZ公演を前にYUKIYAが語る「ここが最後じゃなきゃいいね」

ツイート

■自分が10代の頃に好きだったインディーズバンドみたいにしたい
■リリーススパンの短い現代のバンドとは、まったく違うんです

──では、その“変わらない根本”とは、何なんでしょう?

YUKIYA:……そうですね。今、Kαinというバンドをやっていること自体が、自分の中では原点回帰なんですよ。D≒SIREで初めてちゃんとしたバンドを始めたら、幸いすぐに世に出ちゃって、そこからJILSをやって。JILSが支持を得ていく中で、言葉は悪いですけど調子に乗っちゃったというか。もっともっとお客さんが喜んでくれるもの、ライヴで盛り上がる曲を……という方向に傾いてしまって、ちょっとブレてるなぁと感じたんです。俺、そんなにロックンロールな曲好きじゃないのに!みたいな。そのとき僕も30代の後半だったから、自分の体が思い通りに元気に動くうちに、ちゃんと自分が本来好きで一番作りたかったものを再確認しないと、ただ流されていくだけのような気がして。JILSを突然やめた理由の一つにそれもあって、だからKαinに関しては“ブレないように”っていうところにメチャメチャ気を遣ってるんですよ。単に良い曲が出来たから採用するんではなく、本当にKαinの色に合うのか? 描かれている世界観の状況描写までメンバーと話し合って、例えば歌詞の中に出てくる橋の素材は木なのか石なのか鉄なのか? そこに雨は降っているのか? 時間帯は?っていうディスカッションを重ねながら、ギターの音色とかも決めていくんです。

▲SHIGE

──つまり曲調云々というよりも、キチッと情景描写が出来る曲か否か?が、採用の基準になるわけですね。

YUKIYA:あ、そうです。世界観は絶対大事で、Kαinはそれがコンセプトだからルールがたくさんあるし、それをどうクリアしてゆくか?ってところがミソ。今までで一番揉めたのが「証」っていう曲で、ファンが思う“YUKIYAが得意な作曲パターン”の一つであるシンプルな8ビートなんですけど、最初に何も考えずにアレンジしたら、やっぱりJILSっぽい曲になったんですね。でも、それだとこのメンバーでやる意味がないから、じゃあ、どうアレンジしたらKαinに似合うものになるのか?っていうところを詰めるのに、ものすごく時間がかかりました。

──そういえば「証」は未だ流通音源化されていませんが、ライヴでしか披露していない曲が多いのも、そのクリアしなければいけないハードルが多いから?

YUKIYA:それもありますけど、単純にKαinは自分が10代の頃に好きだったインディーズバンドみたいにしたいんですよ。当時は音源もCDじゃなくレコードで、でも、レコードなんてよっぽど人気のあるバンドしか出せないから、ライヴで演奏してる曲が音源になってないなんて当たり前だったんです。だからKαinは在り方自体、リリーススパンの短い現代のバンドとは、まったく違うんですよね。

──ファンの信頼を裏切らないためにもリリーススパンに拘らず、本当に良いものだけを発表するというスタイルは、むしろ誠実ですよね。

YUKIYA:どうなんですかね? 流通音源は7年も出してないって時点で、期待を裏切ってる気もしますけど(笑)。ただ、CDを出さないのにはもう一つ理由があって、Kαinは完全なるインディーズバンドでありたいから、レコーディングも全部メンバーでやってるんです。エンジニアも一人もつけず、マイクを立てるところからメンバーだけでやって、実際それでアルバムとシングルを作ったんですけど、一つ盲点だったことがあって。自分たちがハイレゾ録音したものをダウンコンバート……つまり音質を低下させつつ、雰囲気を変えずにCDに収まるフォーマットに変換するのって、想像以上に難しいんですよ! おかげでCDになった自分たちの音にガッカリしてしまって、そこで“どうする?”ってなったときに、じゃあ、上手く出来るスキルが自分たちに身につくまで待とうと。

▲SANA

──プロのエンジニアを入れるのではなく?

YUKIYA:はい。だから、その後も実験はずっと続けていて、会場限定のシングルとして売ったり配布したりもしてるんです。ただ、最近はハイレゾ音源のままリリースする手段も増えたし、世の中にハイレゾっていう言葉も浸透し始めてきたんで、そろそろいけるんじゃないか?と。自分たちのマスタリングスキルも向上しているので、実は今年は作品をパッケージ化することも視野に入れてるんですよ。

──パッケージ化を待っている曲って、現時点で相当ありますよね。

YUKIYA:そうですね。ワンマンでもCDになってる曲を1曲もやらずに成立する日もあるんで、たぶん20曲近くはあります。

──いっそ2枚組で出していただきたいところですが、では、そこまでインディーズ(=すべてを自力でやること)にこだわる理由って、何かあるんでしょうか?

YUKIYA:D≒SIREは結成3ヶ月とかで事務所と契約してもらえたので、逆にインディーズ活動っていうものがほとんど無かったんですよ。その後も割と大手のところで僕、ずっとお世話になっていて、いろいろ創作活動をした結果……インディーズのほうが良いなと思う理由があるってことですよね。詳しく話すと人の悪口になっちゃうんで控えますけど(笑)、そもそも僕らがどこかと契約してたら、7年リリースが無いとかありえないじゃないですか?

◆インタビュー(3)へ
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス