【レポート】Ken Yokoyama、KEMURIを迎えたツアーファイナル東京初日に“これぞライヴハウス”

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Ken Yokoyamaが3月14日、新代田FEVERにて<The Rags To Riches Tour VI>ファイナルとなる東京2DAYSの初日公演を開催した。同コンセプトツアーは今回で6回目を迎えるもの。各都市で大会場とライブハウス2公演を行なった5都市8会場のツアーの締めくくりが、3月14日の新代田 FEVER公演と3月15日の新木場 STUDIO COASTとなる。まずは、新代田FEVER公演のレポートをお届けしたい。

◆Ken Yokoyama 画像

“同じ都市で大会場とライヴハウスの2公演を行う”というコンセプトのもと行われてきたKen Yokoyamaによる<The Rags To Riches Tour>シリーズ。“IV”はFACT、“V”は10-FEETとのカップリングツアーとして開催されたが、今回は各都市で異なるゲストと迎える形式に戻り、名古屋にてThe Birthday、大阪にてROTTENGRAFFTY、仙台にて04 Limited Sazabysをゲストに連日の熱戦が繰り広げられた。


そしてファイナルとなる東京2公演は、KEMURIを招いての2マンライヴである。1990年代後半から2000年頃までのパンク/スカ・パンクシーンの隆盛のまさに真ん中にいた横山健とKEMURIだが、意外なことに2マンライヴでの共演はこれが初めて。交わりそうで交わってこなかった両者の共演なだけに、この日を“ロマンティックな邂逅”として捉え、昂ぶるオーディエンスも多かっただろう。しかしこの日の両バンドのアクトの真ん中にあったのは、過去を物語化することなく、ただひたすら前だけを向いている姿だった。逆説的に言えば、だからこそこの2バンドは一線のまま立ち続けていられるのだと痛感させられる共演であった。

先に登場したのはKEMURI。「Standing in the rain」で口火を切り、曲間も惜しいと言わんばかりのスピードで矢継ぎ早に曲を叩き込んでいく。寸分の狂いなく折り重なるアンサンブルの中にあって特に凄まじいのは、今なお獰猛さを増しているドラムと歌だ。軽快さと伸びやかさはそのままに、鬼の形相でひたすら前に声と体を放り投げていく歌。その歌と激突するように爆進するビート。音を浴びているうちに、静観していても汗が全身から吹き出してくる。



そのライヴの軽快さも前向きなメッセージも、一切ブレない。しかし、今なお突進力を増すパフォーマンスからは、彼らが掲げてきた“PMA”を掴むための闘争心・覚悟をいまだ強くしているのだということが伝わってきたし、この若返り感の根底にはそういう精神性があるのだろう。たとえば、“気に食わないことを思い浮かべて 中指を立てて”という言葉から披露された「HATE」を大合唱し、ラストの「THUMBS UP!」でその中指を親指に立て替えるという流れ。ネガティヴィティを徹底的に吐き出し、それに正面から向き合い、共有することでポジティヴなエネルギーに転化していく運びは、そのままKEMURIというバンドの精神性に直結する。それをさらに強く、現在進行形で発信していこうという意志が、「PMA (Positive Mental Attitude)」や「Ato-Ichinen」といったアンセムに安住しないライヴ全体から伝わってきたのである。“今が最骨頂だ”という自負と、涸れることのない前進の意志をひたすら放つアクトだった。



続いて登場したKEN BAND。横山健が「よし、ぶっ飛ばしていこうか!」と笑顔で発すると、「Cherry Blossoms」でライヴをスタート。緩やかなギターのイントロから一気に加速してヘヴィなサウンドが響き渡ると、フロア前方から後方までが大モッシュで応える。それを受け取った横山はさらに表情を明るくして、オーディエンスと共に歌い、オーディエンスはもっと大きな声でシンガロングを返す。そういうスピーディな熱の交感が一気に巨大な塊になり、続いて披露された「Maybe Maybe」でも、ステージとフロアの信頼関係がそのまま見えてくるような“歌のぶつけ合い”が繰り広げられた。ステージ前に柵がないこともあって前方に凄まじい勢いで観客が押し寄せ、横山健が度々「一歩だけ後ろに下がろうか」と語りかける場面もあったが、光景にしても、そしてバンドと観客の心の通わせ方にしても、頭2曲でフロアとステージの境目が完全になくなってしまうライヴである。



“こんなライヴはKen Yokoyamaにしかできない”と感じてしまうのは、メッセージを音楽家として以上に人間として発信し、それを本音だけの音楽にして、目の前の人と本音だけでぶつかり続けてきたからである。だからこそ、オーディエンスもいち人間としてKen Yokoyamaの楽曲に向き合い、それを自分の人生の歌のようにして大声で歌えるのだ。“ジャブなしで打ち合える信頼関係”が見えるこのライヴの素晴らしさは、横山健が常に“自分をさらけ出す”という覚悟で進んできたからこそのものなのだと思う。



中盤の横山のMCでは、Minami(G)が元KEMURIであることに触れながら、“あと1年ったら あと1年”と繰り返すだけの「Ato-Ichinen 横山健ヴァージョン」(?)が披露されて爆笑が起きたり、楽曲のリクエストを募ったり、横山健がKEMURIの伊藤ふみおを模して「まだまだいける⁉︎」という言葉を発したりと緩やかな小休止はあったものの、それ以外は暇なくフルスロットルの爆走ライヴ。エアコンから吹き出る風は湿気によって白くなり、天井からは汗の雫がポタリと落ちてくるほどの灼熱空間。勢いが衰えるどころかさらに間髪入れず曲を畳み掛け、ひたすらフロアに突進していく“これぞライヴハウス”というストイックなアクトだ。


この日は、リリースに関わらないツアーだという特性もあって「Go With The Flow」「Dry Spell」「Empty Promises」「Cheap Shot」「Funny Things」などなど、近頃では聴けないレア曲も多くプレイされ、「Can't Take My Eyes Off Of You”ではKEMURIのホーン隊を招き入れるという一幕もあった。そうしたスペシャルなセットリストは横山自身が誰より楽しんでいて、だからこそ横山健が1曲1曲に没頭していく場面も多かったように思うし、改めて各曲のメッセージを真っ直ぐ伝え切ろうとする姿そのものが、このライヴの素晴らしさだった。そうして夢中で人に想いを伝えようとする横山の姿を誰もが感じ取り続けたからこそ「Ricky Punks III」や「We Are Fuckin’ One」といった震災以降のメッセージソングはより強烈に響いたし、終盤を飾った「Believer」「Let The Beat Carry On」はよりエモーショナルな人生の歌として心を揺さぶったのだと思う。ラストの「Pressure Drop」までの18曲すべてがフレッシュに躍動するライヴだった。

撮影◎Teppei Keshida/Wataru Umeda (KEMURI)

■<Ken Yokoyama「The Rags To Riches Tour VI」>

2月23日(木) Zepp Nagoya
Guest : The Birthday
2月24日(金) 岐阜 CLUB ROOTS
Guest : The Birthday
2月26日(日) 心斎橋 Pangea
Guest : ROTTENGRAFFTY
2月27日(月) Namba Hatch
Guest : ROTTENGRAFFTY
3月07日(火) 仙台 MACANA
Guest : 04 Limited Sazabys
3月08日(水) 仙台 PIT
Guest : 04 Limited Sazabys
3月14日(火) 新代田 FEVER
Guest : KEMURI
3月15日(水) 新木場 STUDIO COAST
Guest : KEMURI

◆Ken Yokoyama<The Rags To Riches Tour VI>3月15日@新木場STUDIO COASTレポートへ
◆Ken Yokoyama オフィシャルサイト
◆PIZZA OF DEATH オフィシャルサイト
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