【レポート】Ken Yokoyama、「KEMURIを前に、ラストにスカの曲やるわ!」

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Ken Yokoyamaが3月15日、新木場STUDIO COASTにて<The Rags To Riches Tour VI>ファイナルとなる東京2DAYSの2日目公演を開催した。同コンセプトツアーは今回で6回目を迎えるもの。各都市で大会場とライブハウス2公演を行なった5都市8会場のツアーの締めくくりが、3月14日の新代田 FEVER公演と3月15日の新木場STUDIO COASTとなる。先ごろ公開した新代田FEVER公演に続いて、新木場STUDIO COASTのレポートをお届けしたい。

◆Ken Yokoyama 画像

“各都市にて、大会場/ライヴハウスの2公演を行う”Ken Yokoyamaのコンセプトツアー<The Rags To Riches Tour>のツアーファイナルとなる新木場STUDIOCOAST公演が、前日の新代田FEVERに続き、KEMURIをゲストに招いて行われた。

前日のライヴハウス公演に比べて子連れや家族での来場も多く見受けられ、まずそこに本ツアーのコンセプトの意義を感じ取った。さらに開演前の観客の会話から多く聞こえてきたのは「あの曲聴けるかな」「あの曲にはこんな思い出があって」といったもので、作品リリースに関わらないものとして開催されてきたツアーならではの新旧織り交ぜたセットリストへの期待感が早くも会場に充満している。

KEN BANDとしても、古くからの曲や最近ではプレイしなくなった曲を自由に織り交ぜたライヴを行うことで新たな発見があったり、曲に込めたメッセージが新たな意味を持って自分達に跳ね返ってきたり、それが次へのヒントになったりすることがあるのだろう。だからこそ、長く続いてきたツアーシリーズなのだと思う。



新代田FEVERでは、3月1日にリリースされた新譜『FREEDOMOSH』の新曲を中心に据えたライヴを見せたKEMURI。この日もまずは新曲「THUMBS UP!」で口火を切り、“Wow! Wow!”のシンガロングと会場全体“親指総立ち”のハッピーな光景を作り出す。続けて披露した「GO! GO! GO! GO! GLOW!」でトップスピードに乗ると、モッシュピットの隆起が早速凄まじいことに。その光景を見た伊藤ふみお(Vo)も思わず「いいんじゃないのー!」と声を上げるが、一音目から一気に人を巻き込んでしまう力の中心には、やはり前進力の凄まじいヴォーカルパフォーマンスがある。

そして「Knockin' On The Door」「PMA (Positive Mental Attitude)」と、往年の名曲を連打。年々MCはタイトになり、ひたすら曲の力でフロアをステージに引きずり上げるようなパフォーマンスにビルドアップされていく若返り感に、感嘆を覚えるアクトである。

さらに最新曲「DIAMOND」をプレイした直後、「一番新しい曲をやったので、次は、KEMURIを結成してから一番最初に作った、一番古い曲をやります」と伊藤が述べて「New Generation」へ。“諦めない姿勢”、“今ここからがスタートだ”という意志をストレートに歌った楽曲だが、それがいつまでも“KEMURIの今”として響くことが、そのまま、このバンドがいかに安住せずひたすら未来だけを見て進んできたかを表している。なおかつ、その“絶対に過去にしがみつかない”姿勢こそが、Ken Yokoyamaと共に、今なお、第一線で戦い続けられる理由そのものだと感じた。


「Ohicho」では、KEN BAND加入以前、KEMURIに在籍していたMinamiを呼び込んで共にプレイするというサプライズで沸かせ、「白いばら」「Ato-Ichinen」といった代表曲を織り交ぜながら、最後の最後までスピードの落ちない圧巻のステージである。

「再結成して5年が経ったけど、これからも自分達の信じるままに一つひとつ音楽を作っていけばいいのだという勇気をもらったライヴでした。人間は、実年齢ではなく心の年齢が大事だと思ってます」という言葉を最後に残し、“本当の若さの意味”をひたすら示し続けるようなライヴを見せてKEN BANDへバトンを繋いだ。



「二番手、KEN BANDです! KEMURI、素晴らしかったね。今日のKEMURI、明らかに君達を仕留めにきてたぜ。だからKEN BANDも、仕留めにいきます」という横山健の挨拶からスタートしたKEN BANDのライヴ。その言葉通り、オープニングナンバーは“KEN BANDのテーマソングだ”と度々紹介されてきた「Let The Beat Carry On」。これまでの多くのライヴで終盤に披露されることが多かった同曲だが、このツアーでは多くの会場で1曲目に披露されることが多かったようだ。マイクをフロアに預けて歌い出しを観客に委ねるのが定番になっている曲であり、常に自分の意志を明確に発信し、それに対する観客の言葉や意志に耳を傾けながら人間同士の対話を続けてきたKen Yokoyamaを象徴するオープニングである。横山健自身が観客との熱の交感をさらに大切に考えるようになっているのだろうし、事実、MC自体が“語りかける”だけのものではなく、より一層“会話”として存在するようになっている。



それを観客も実感しているのだろう、ライヴごとに、横山の歌に対する観客側のシンガロングが凄まじい大きさになっている。最近のライヴでは登場回数が少なくなっていた「Your Safe Rock」や「Kill For You」「Last Train Home」といったソリッドなナンバーの応酬にも、ただ巨大なモッシュピットとクラウドサーフだけではなく、大合唱が巻き起こる。その曲に込めたメッセージや想いを丁寧に丁寧に語り伝え続けてきた横山の歌だからこそ、誰もがその歌詞ひとつひとつを自分の言葉であるかのように大事に歌える。横山健自身も、ロックシーンやライヴハウスシーンを背負って外に打って出た時期を経て、このホームと呼べる場所への信頼が強まっているのかもしれない。そういった互いへの信頼感が大きな歌の渦を生み出しているのだ。

ただ一方では、「イベントで共演することはあっても、KEMURIと2マンライヴをするのは今回が初めて。それでも、昔から知っている顔っていうだけで、仲間がいるようで楽屋でも心地よかった」と横山が語った通り、合間合間にはリラックスしたムードも流れるライヴである。このツアーならではの“1曲1曲を楽しむ”場面も多く、横山健自身もいつも以上に自由なパフォーマンスを見せていた。




たとえば観客からのリクエスト曲を募るセクション。前日のライヴ後にJun Gray (B) のTwitterに寄せられた希望楽曲の結果が、「「Popcorn Love」と何故か「タイ国歌」(Jun Grayのタイ愛はファンにお馴染み)の同率1位だった」とJun Grayが話すと、さらに観客からも「「Popcorn Love」やってー!」の声が起こる。それを受けた横山は「そうか、ポップコーンか。……あ、ポップコーンってどこに売ってるか考えたら、コンビニだよね! コンビニといえばのあの曲、Junちゃんがあのフレーズ弾いてくれたらな!」と、いきなりの曲フリ。そこからセブンイレブンのCMでお馴染みの「Daydream Believer」に雪崩れ込み、大喜びの観客と共に多幸感溢れる大合唱を繰り広げたりと、その場のコミュニケーションを心から楽しみながら、だからこそ予定調和のないライヴが繰り広げられていった。




ただ、その楽しさだけで終わらない。どんな場面においても、歌とメッセージを発する時の横山健の表情は強い。サウンドはもちろん、姿そのものが、ズシリとした重みと“伝えたいことはすべてここで伝え切る”という覚悟の強さを感じさせる。技術やその言葉と同時に、何しろその人間力自体がライヴ全体にピンと筋を通させているのだ。

戦場そのものを歌った「Mama, Let Me Come Home」のような曲も、「If You Love Me」のように穏やかな愛の賛歌も、「Cherry Blossoms」のように自分達が生まれた場所への愛をストレートに綴った曲も、「Maybe Maybe」や「Save Us」のようなアンセムも、どれも同じようにシリアスな表情で「歌ってくれ」と訴える。“想いを共有することでそれぞれが何かを考えるきっかけを作りたい”、その想いはいついかなる時でもブレないし、それを説明する以上に楽曲と歌そのもので伝えようとする意志がますます強くなっている。時にマイクスタンドを上に掲げて声を上げたり、歌の前進力そのままにマイクスタンドをなぎ倒したりと、横山健自身もその昂りを隠さない。




中盤には、コンピレーションアルバムに収録されていた「My Day」、「My Shoes」「What Kind Of Love(SNUFFのカヴァー)」といったレア曲を3連打し、続けてKEMURIのホーン隊を呼び込んでのスペシャルヴァージョンで「Can't Take My Eyes Off Of You」をプレイ。滅多に観られない、もしくはこの日でしか聴けない楽曲で観客を沸かせながら、同曲には横山健自身も「カッケー!と思って鳥肌立っちゃったよ!」と興奮した口調で語った。音楽の感動にいつまでも無邪気でいて、伝えたいことに対してどこまでもシリアスで愚直。その両方が同じ場所で共存している横山健らしさが目一杯詰まったライヴである。

「今日は子連れのお客さんも多いと思うから」という言葉から披露された、これから世界を知っていく子供達へのメッセージソング「Never Walk Alone」。さらに続けた「I Won’t Turn Off My Radio」と、キャリアを重ねてきたからこその未来に向けた楽曲へ。「震災から6年経ってもこの歌を作った時と気持ちは変わらないんだ」と語り、フロアのレベルにマイクを置いて観客と目線を合わせて鳴らした「Ricky Punks III」。常に自分を信じて生きていくという人生観の核心を綴った「Believer」を立て続けにプレイし、いつまでも“この先”を見据えて進んでいく意志を示してライヴは終了……したかのように見えたのだが、ここで最後のサプライズが。


「このツアーは、KEN BANDもゲストバンドも五分五分のつもりでやっている。だから、俺達だけアンコールをするっていうのはナシにしてるのね。でも、演奏時間は長くもらってるから、最後にやり切って帰ります。KEMURIを前に、ラストにスカの曲やるわ!」──横山健

という言葉から、なんとKEMURIメンバー全員を招き入れての「Pressure Drop」がスタート。1990年代から今まで、パンク/スカパンクの最前線を駆け抜けながら、だからこそ交わりそうで交わらなかった両者のコラボレーションに大興奮のフロアと、誰よりも興奮を表して踊り歌う横山健と伊藤フミオの姿。“ようやくの共演”というロマンティックなライヴではなく、両バンドとも、ひたすら前しか向いていない現在進行形を叩きつけるアクトであったからこそ、そこに本当の信頼感や同志の絆を感じるフィナーレ。ただのお祭りではなく、互いの闘争心や前進の意志を確かめ合うような熱いコラボレーションに、両者の前にまだまだ続く道への新たなスタートを感じ取ったのだった。

撮影◎Teppei Keshida/Wataru Umeda (KEMURI)



■<Ken Yokoyama「The Rags To Riches Tour VI」>

2月23日(木) Zepp Nagoya
Guest : The Birthday
2月24日(金) 岐阜 CLUB ROOTS
Guest : The Birthday
2月26日(日) 心斎橋 Pangea
Guest : ROTTENGRAFFTY
2月27日(月) Namba Hatch
Guest : ROTTENGRAFFTY
3月07日(火) 仙台 MACANA
Guest : 04 Limited Sazabys
3月08日(水) 仙台 PIT
Guest : 04 Limited Sazabys
3月14日(火) 新代田 FEVER
Guest : KEMURI
3月15日(水) 新木場 STUDIO COAST
Guest : KEMURI

◆Ken Yokoyama<The Rags To Riches Tour VI>3月14日@新代田FEVERレポートへ
◆Ken Yokoyama オフィシャルサイト
◆PIZZA OF DEATH オフィシャルサイト
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