【インタビュー】ポタリ、四人がロックと正面から向き合って作り上げた会心作『ポタリの2』
■“聴くと元気になる音楽”というところは変えたくないけど
■“守る”と“進化”の間で揺れて曲が出来なくなってしまった
――1月17日にリリースされた2ndフル・アルバム『ポタリの2』について話しましょう。制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?
鈴木:1枚目のアルバムを作った時はひたすら曲を作って、どんどん出していって、完成するまでどんなアルバムになるか分からなかったんですよ。今回は目標を立てて、ちゃんと作ろうというのがまずあって。この四人でロックというものを追求しようという話をしてから、制作に入りました。
――その結果、『ポタリの2』はキャッチーなメロディーを活かした良質なロック・チューンが顔を揃えた一作になっています。作詞/作曲のクレジットは全曲ポタリになっていますが、曲作りはどんな風に行ったのでしょう?
鈴木:今までは、私が曲のタネを持ってきて、アレンジとかをみんなでしたり、歌詞を書いてきても、みんなにチェックしてもらうというやり方をしているという意味で、クレジットは“ポタリ”だったんですね。でも、今回のアルバムはエミが持ってきた曲が多く入っていたりとか、私が書いた曲にアイコが歌詞をつけてくれたりしていて。今回のアルバムではないですけど、ナスカワが曲を書いてくれたこともあったんですよ。そういう風に、より全員で曲作りをするようになったという意味で、クレジットは全曲“ポタリ”になっています。
――曲の作り方が変わったんですね。では、曲作りを進めて行く中で、アルバムのキーになった曲などはありましたか?
鈴木:私の中では、12曲目の「走る」です。私は今回のアルバムを作るにあたって、すごく悩んでいたんです。アルバムの前にシングルとして「夏の言い訳」というバラードを出したんですけど、それはエミが持ってきてくれた曲なんです。「夏の言い訳」は曲を作る軸の人が変わったから、新しいポタリというのを感じてもらえると思うんですよ。そこで進化していくことの喜びとかもすごく感じたし、それを聴いて良いと言ってくれる人がいることも分かるから、アルバムでは新しいポタリをどんどん見せていきたいと思ったんです。でも、“聴くと元気になる音楽”というところはやっぱり変えたくないという想いもあって、“守る”と“進化”の間ですごく揺れて、本当に曲が出来なくなってしまったんです。それで、今回は他のメンバーが持ってきてくれた曲が多かったり、歌詞を他のメンバーに任せて新しい要素を入れたりしていて。そういう中で、「走る」という曲が自分の中から出てきた時に、私の中では今までのポタリの持ち味と新しさを融合させたものを一つ形にできたことを感じて。「走る」という曲が出来たことで、自分の中でポタリだと思っている要素を詰め込んだ「MUSIC」という曲を出すことにも自信が持てたんです。
▲鈴木奈津美:Vo(ナツ)
――粘り強くがんばって良かったですね。そうすると、“迷いの日々から抜け出した”と歌っている「走る」と、自分にとっての音楽の意味を描いた「MUSIC」の歌詞は、その頃の自分の気持ちをダイレクトに綴ったものといえますね。
鈴木:そう。「走る」は本当にそのままです。ただ、「MUSIC」は音楽に対する価値観や音楽の捉え方は人それぞれだから、すごく悩みました。それで、他のメンバーにも“音楽”というテーマで歌詞を書いてもらったんです。そのうえで、やっぱりこの曲は自分が書いた歌詞で歌いたいと思って、自分がリスナーとして音楽を聴いていた頃に感じていた音楽に対する想いとかを歌詞を書きました。そういうところで、「走る」と「MUSIC」は私の中ですごく大きな意味を持った2曲です。
中西:『ポタリの2』の曲で作った時に一番大変だったのは、「Scope」です。最初の原形を一人で作って、バンド・アレンジまで持っていったんですけど、もっと良くなるだろうという気がして。それで、この曲を良くするために、ずっと一人でめちゃくちゃ時間を割いたんです。歌詞も最後に書いたので、こういう曲にしたいというイメージだけで形にしていったこともあって、本当に時間が掛かりました。「Scope」は歌詞も自分で書いていて、今の自分の悩みをテーマにした歌詞にすることにしたんですけど、ナツに歌ってもらうわけだから、私の気持ちが出過ぎると違うなというのがあって。そのバランスを取ることを考えたので、歌詞もすごく悩みました。歌詞は、大切なもの2つを同時には守れないということに気づいた時の気持ちを書いています。何かを大事にしている時は、絶対に他の何かが疎かになる。自分が幸せにできるのは本当に近い距離の人だけなんだなと気づいて、そういう自分の弱さと向き合いながら歌詞を書きました。「Scope」は明るさとせつなさを併せ持った曲にしたくて、最終的にちゃんとそういう曲に仕上げることができて良かったなと思います。
内田:私の中で、特に印象が強いのは「君とアワー」です。今回のアルバムの中では、一番古い曲なんですよ。2年前くらいに出来た曲で、私がポタリに入って、初めてめっちゃ好きだと思った曲なんです。今回の“ロック”というテーマは、アルバムの前にリリースした「君とアワー」「ナイショナイショ」「ハルノカゼ」「夏の言い訳」というシングル曲が入ることが分かっているうえで立てたものなんですね。だから、アルバムのテーマから少し外れた曲かもしれないけど、私は「君とアワー」が入っているのがすごく良いと思います。今回私は何曲か作詞もさせてもらったんですけど、「君とアワー」という曲がなかったら歌詞は書けなかったと思うし。私の中で本当に思い入れがある曲なので、ぜひ聴いて欲しいです。
鈴木:「君とアワー」の歌詞は、場所に宿るパワーとか魅力みたいなものを描いています。この場所に来ると元気が出るなとか、蘇ってくる思い出があって初心に還れるなというようなことを感じた時期があって。それを歌詞にしたくて、ストーリー調にするという手法を採りました。この歌詞を書いてメンバーに出した時に、アイコがすごく良いと言ってくれたのが本当に嬉しかったことを覚えています。私は歌詞を書くのが苦手で、歌詞はあまり書きたくないなと思っていた時にアイコがそう言ってくれたことで、自分の言葉で歌詞を書くことの魅力に改めて気づかせてくれたんです。
▲中西詠美:G(エミ)
――「君とアワー」も、温かみや洗練感を纏った良い曲です。アイコさんは、今回どの曲の歌詞を書かれたのでしょう?
内田:「AGFG」と「scratch」、それに「カメレオンガール」をナツと一緒に書きました。3曲の中で、私が一番思い入れがあるのが「AGFG」で、人間関係について書いたんですよ。男女の歌っぽくなっているけど、本当のことを言うと、私がポタリでずっとバンド生活を送ってきている中で思ったことを書きました。今までのポタリはナツしかメロディーを持ってこなかったけど、これからはみんなで曲を出していくんだという気持ちになったことで、メンバー間の関係性も変わってきていて。そういう中で私が本当に望むことが歌詞になったと思います。
茄子川:私は、どうだろう? 好きだったり、印象が強かったりする理由はいろいろあるけど、メロディーで一番衝撃的だったのは「走る」のBメロでした。途中で転調している感じになっているんですよね。Aメロの入りとか、サビの頭とかで転調する曲は多いけど、Bメロの中でやり切っているのが凄いなと思って。そもそもポタリはBメロがフックになっている曲が多いんですよ。
鈴木:そう。私は哀愁のあるメロディーがすごく好きで、明るい曲でもBメロにその要素を入れて発散することが多いんです。
一同:そうそう(笑)。
茄子川:そこも、私がポタリの曲が好きな要因になっています。“「走る」のBメロ!”“「セツナジェットコースター」のBメロ!”みたいな(笑)。
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