【インタビュー】ファンキー加藤、「古いと言われようが、オンボロと言われようが、続けていくしかない」

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■久しぶりに生身のファンキー加藤だけで挑む

──<八王子エイド>の出演者の皆さん、ライブに来場された方々ともに、発起人の加藤さんには本当に感謝していると思います。話を『F』に戻しますが、加藤さんらしい楽曲に加えて、サンバ・テイストにシンセベースを配した「Be Alright」や、ダーク&サイバーな「デ・マ」といった新機軸の楽曲も収録されています。

ファンキー加藤:前作のアルバムから2年経っているので、一緒に作業するアレンジャーさんやプロデューサーさんも新しい機材や技術を導入していて、カッコいいサウンドを提示してくるわけですよ。そういうものはぜひ活かしたいなと思って、採り入れさせてもらいました。自分の歌詞と声が乗ればちゃんとファンキー加藤になるという妙な自信だけはあるから、どんなサウンドでも、どんなジャンルでも、良さを感じたらやりたいんです。「Be Alright」は言われたとおり、シンセベースが結構ポイントになっていますね。シンベが鳴っていることで、新しいものになったなと思う。「デ・マ」もシンプルに1リスナーとして若い子達の音楽を聴いたときに、カッコいいことをやっているなと思って、ちょっとそういうこともやってみたくなったんです。


──今はこういう音楽が流行っているからやろうではなくて、純粋にカッコいいから自分もやりたいなと思ったんですね。

ファンキー加藤:そう。僕も元々はクラブミュージック上がりなので、ずっとヒップホップは好きで聴いているんですよ。自分は声にオートチューンをかけたりしたことはないから、すごく気持ちよさそうで羨ましいな……みたいな(笑)。「デ・マ」は、そういう感じで生まれた曲です。ただ、トラップのリズムにラップをはめていくのが最初はすごく難しかった。あと、「デ・マ」の歌詞に関しては、アルバムでは毎回治外法権というか事務所の社長もノータッチで、好きなことを好きなように書いていいよという枠が1曲あるんですよ。それで、2014年に出した『ONE』のときは「Good Show」という曲を作って “グショグショ”と歌ったり、前作の『今日の詩』(2018年)に入っている「急性ラブコール中毒 Solo ver.」ではセクシー女優の名前を英語っぽく羅列してみたりとか(笑)。今回その枠を活かしたのが、「デ・マ」です(笑)。

──そうなんですか!? “荒んだ時代だけど、もっとプラスのイメージを持とうよ”という真っ当なことを歌われていると思いますが?

ファンキー加藤:これね、ダブルミーニングなんですよ。なぜ “デマ”というタイトルで、間に“・”が入っているかを考えればわかると思います(笑)。

──えっ? ……もしかして、スイッチを入れると振動するアレですか?

ファンキー加藤:そう、実はそれについて歌っているという(笑)。表向きは“デマに踊らされるな”ということを歌っているけど、裏を引っ繰り返すと“デ〇マ”は世界を救う……みたいな(笑)。


──えー! うーん……やはり、加藤さんは最高です(笑)。アルバムに毎回こういった“治外法権ナンバー”が入っているというのは、ファンの皆さんの楽しみのひとつになりますね。

ファンキー加藤:楽しみにしてくれています。というか、僕のファンの人はこういう曲を入れないと怒るんですよ(笑)。なにマトモぶっているんだと。今回も反応が早かった。アルバムの曲タイトルを発表した1時間後くらいに、“今回のおふざけソングは「デ・マ」ですね”とか、“意味に気づいてお茶を噴き出しました!”というメッセージがきたんです。“早っっ!”ていう(笑)。「デ・マ」は今後のライブでもやろうと思っているけど、どういうふうに演出しようかというのが、すごく悩ましいんですよね。気づいていない人もいるだろうから、そういう人にしてみたら意味不明じゃないですか。だから、意味がわかっている人は“キタキタッ!”てなると同時に、気づいていない人がライブを観て、そういうことかとわかるようにしたいなとか色々考えてます(笑)。

──楽しみです(笑)。『F』はいろいろな顔を見せた後、「夢のカケラ feat. ファンキー加藤 & ベリーグッドマン(SC Remix)/ SPICY CHOCOLATE」というレゲェテイストを活かしたウォームな曲で締め括るという構成も絶妙です。

ファンキー加藤:これはSPICY CHOCOLATEさんから、アルバムで何か一緒にやってくれないかという話をいただきまして。それで、この曲を作って、SPICY CHOCOLATEさんの『TOKYO HEART BEATS』(2020年)に収録されたんです。そのリミックスを今回入れさせてもらいました。アルバムの余韻というか、映画のエンドロールみたいなものとして最適だなと思ったんです。

──楽曲の良さはもちろん、キャラクターの異なる4ボーカルも聴きどころです。さらに、今作のリード曲「終われない歌」のミュージックビデオも注目ですよね。

ファンキー加藤:ミュージックビデオのアイディアは、最初はスタッフ間で意見が分かれたんです。ドラマ仕立てだったりとか、河川敷とかでちゃんとリップシーンを撮ったりしたミュージックビデオがいいんじゃないかという声がある一方で、今ファンキー加藤の新曲にドラマ仕立ての映像をつけてYouTubeにアップしても、若い子達は視聴するかねぇ……という声もあった。僕自身は自分の立ち位置を冷静に俯瞰で見たときに、どちらかというと“王道的なミュージックビデオはどうなんだろう?”と思っていたんです。YouTubeは1クリックしてもらうことだって大変な世界だから、サムネにとんでもないインパクトをつけたかったんですよ。“これ、なにがあって、そうなったの?”と思わせるものにしたいと。そしたらマネージャーから「次々と妨害を受けるけど、それでもまっすぐに歌い続ける」という大枠の案が出てきて、それで僕がどんな罰ゲームが良いのかテレビ番組とかで研究して、罰ゲームのアイディアを自分から出しました。


──“えっ、ここまでやりますか!?”という内容になっていて、衝撃を受けました。

ファンキー加藤:やるからには、そこまでやらないと意味がないから。社長とか、事務所の上のほうの人とかは反対だったんですよ、曲のメッセージがブレるだろうと。でも、妨害を受けながらもずっとがんばって歌い続けるというのは「終われない歌」のメッセージの芯と合致しているんですよね。僕のことをよく知らない人が観たら“なんだ、これ?”となるだろうけど、面白いなと思って2回、3回と見てもらえば“そうかっ!”となってくれるだろうと思って、そこに賭けました。

──かなりインパクトのあるミュージックビデオになっていて、いい選択をされたと思います。ただ、あのミュージックビデオは最初から最後まで1カットで撮っていますよね。ということは……。

ファンキー加藤:そう、1カットだから途中でミスがあったら、もう1回最初から全部やり直すことになる。でも、ああいうミュージックビデオは1カットで撮らないと意味がないから。初回限定盤にミュージックビデオのメイキング映像がついていて、それを観ていただければわかりますけど、現場の緊張感がハンパなかったです。特に、妨害を仕掛ける側の人達はすごく緊張していましたね。しかも、1テイク目は失敗したんです。


──えっ、マジですか?

ファンキー加藤:うん。リハーサルを何度も何度も入念にしたけど、1テイク目はタイミングがいろいろ悪かったし、バケツの水がまったく僕にかからなかったりしたんです。それで、顔についたいろんなものを落としてメイクをし直して汚れた服も全部着替えて…ということになって、それに1時間くらいかかってしまった。リハーサルに時間がかかったこともあって、もう陽が暮れ始めていたんですよ。だから2テイク目で決めないとヤバいということになって、みんなキンキンに緊張して……みたいな(笑)。そうやって臨んだ結果、2テイク目で撮れました。

──おおっ! それにしても、映像関連も様々な技術が発達している中で、1カットの1発勝負というアナログな手法を採られたんですね。

ファンキー加藤:僕はアナログ人間なので、こういう映像が好きなんです。ただね、なにが嫌だったって、最初の女性のビンタとプロレスラーのチョップが超痛いんですよ(笑)。ミュージックビデオは音が乗らないから、チョップとかタイキックとかは思いきりやってくれと言ったんです。そうじゃないと伝わらないからと。で、後悔したという(笑)。もう痛すぎて、頭がまわらなくなるんですよ(笑)。

──本当に、身体を張っているんですね(笑)。さて、『F』は加藤さんの最新の魅力を味わえる好盤になりました。4月から始まる全国ツアーも楽しみですね。

ファンキー加藤:今回ツアーの前半戦ではすごく久しぶりにライブハウスをまわるんですよ。ライブハウスは大がかりな演出ができない分、誤魔化しの効かないステージで、人間と人間のぶつかり合いというライブになるじゃないですか。今まで主にホールツアーをやらせてもらってきて映像とかを使って遊べたけど、今回は久しぶりに生身のファンキー加藤だけで挑むということで燃えています。ワンマンライブでは久しぶりにいく場所も結構あるから地元の人達に喜んでもらえると思うし、そういう姿を見れるのは嬉しいことだし。ツアーに出ることをすごく楽しみにしています。

──各地のファンの皆さんに元気を与えてきてほしいです。もうひとつ、『F』のリリースで幕を開けた2020年は、どんな1年にしたいと思っていますか?

ファンキー加藤:僕自身もそう思っていますけど、周りの近しい人達……スタッフさんとか、マネージャーとかが『F』は今までのアルバムの中でも一番好きだと言ってくれているんですよ。前回のアルバムの時に比べてそういう賛辞が多いから、リアルにそう感じてくれているんだと思う。だから、ファンの人達はもちろん、ちょっとファンキー加藤から離れていってしまった人達にもあらためて『F』を聴いてもらえるようにがんばる。今年は、そういう1年にしたいと思っています。

取材・文◎村上孝之
写真◎釘野孝宏

4thアルバム『F』

2020年4月1日(水)発売

初回限定盤(CD+DVD)MUCD-8142/43 ¥4800+税
通常盤(CD)MUCD-1451 ¥3,000+税

■収録曲
01.希望のWooh(テレビ朝日系「ワールドプロレスリング」2018年8・9月ファイティングミュージック)
02.今だけを信じて
03.終われない歌
04.君でした。
05.DIVE
06.八王子キッド
07.死守
08.Be Alright
09.デ・マ
10.40
11. 夢のカケラ feat. ファンキー加藤 & ベリーグッドマン(SC Remix)/ SPICY CHOCOLATE

■初回盤DVD収録内容
・OUR MIC FES ファンキー加藤 LIVE
・「希望のWooh」MUSIC VIDEO
・「終われない歌」MUSIC VIDEO
・「終われない歌」MUSIC VIDEOメイキング映像


▲初回限定盤 ジャケット



▲通常盤 ジャケット


<ファンキー加藤 ライブツアー“F”>

【ライブハウス公演】
2020年
4月11日(土)静岡・Live House 浜松窓枠
4月18日(土)高知・高知X-pt.
4月19日(日)広島・SECOND CRUTCH
4月25日(土)兵庫・神戸VARIT.
4月26日(日)京都・KYOTO MUSE
5月9日(土)鹿児島・CAPARVO HALL
5月10日(日)福岡・DRUM LOGOS
5月16日(土)長野・松本Sound Hall a.C
5月17日(日)新潟・新潟Live Hall GOLDEN PIGS RED SATGE
5月23日(土)北海道・旭川CASINO DRIVE
5月24日(日)北海道・帯広 MEGA STONE
5月30日(土)岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
5月31日(日)福島・Club SONIC iwaki
6月6日(土)茨城・水戸LIGHT HOUSE
6月7日(日)栃木・HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
6月13日(土)大阪・umedaTRAD
6月19日(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM

【ホール公演】
2020年
10月10日(土) 埼玉・さいたま市文化センター 大ホール
10月24日(土) 愛知・名古屋市公会堂
10月31日(土) 香川・サンポートホール高松 大ホール
11月3日(火・祝) 宮城・東京エレクトロンホール宮城
11月15日(日) 神奈川・相模女子大学グリーンホール 大ホール
11月28日(土) 岡山・岡山市民会館
12月5日(土) 福井・越前市文化センター 大ホール
12月26日(土) 大阪・NHK大阪ホール

◆ファンキー加藤 オフィシャルサイト
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