【コラム】おうち和楽器 〜BARKS編集部の「おうち時間」Vol.054

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外出自粛の期間、ミュージシャンたちが各々の自宅からリモートで「#Homesession」動画をSNSなどにアップしていた。これは邦楽(J-POPという意味ではなく、伝統音楽としての邦楽)界隈でも行われていたことで、和楽器奏者たちもセッション動画や演奏動画を公開していた。

それを紹介する前に「そもそも和楽器とは何」ということから述べると、和楽器は日本で伝統的に使われてきた楽器のことを指す。箏(こと)を弾く古墳時代の埴輪が出土していることからも、その歴史の深さが伺える。最初は大陸から渡来してきた楽器が原型で、それが変化を経ていまの和楽器の形になっている。

種類は50種類以上あり、弦楽器でいえば箏や三味線はもちろん、胡弓(こきゅう)、琵琶など。管楽器ならよく知られている尺八をはじめ、篳篥(ひちりき)、笙(しょう)、篠笛(しのぶえ)など。打楽器は太鼓のほか小鼓(こづつみ)や木魚(もくぎょ)なども和楽器に分類される。

音の特徴は、自然の音を音階に組み入れているところ。あえて「雑音」を受け入れ、風や波といった自然にある音を表現したり、人の声のような音を作るのだ。自然の音には不規則なゆらぎがあり、「1/fゆらぎ」と呼ばれたりするが、これにはヒーリング効果があるという研究結果もある。リラクゼーションCDには波の音や鳥のさえずり、風の音などが使われていることが多いのもそれが理由。

つまり、自然の音を表現する和楽器の音色には、癒しの効果もあるということだ。これまでの外出自粛で溜まったストレスや、緊急事態宣言後の不安を感じたときは、実は和楽器の音色を聴いてみるのも良いかもしれない。まぁ個人的には単純に和の音が好きだったりする。

和の古典音楽に手を出すのはちょっと難易度が高いけれど、今は「和楽器バンド」を始め、和楽器の魅力をキャッチーに伝えてくれる奏者がたくさんいるし、耳馴染みのあるJ-POPをカバーした「演奏してみた」動画もたくさんある。こういった音楽から、和楽器の音色に触れてみると面白いと思う。…と、前置きが非常に長くなってしまったが、以下に気になった和楽器奏者たちの演奏動画を紹介する。

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▼津軽三味線奏者の吉田兄弟からはこんなコラボ企画が提案されていた。



▼これに和楽器バンド、いぶくろ聖志(箏)が音を重ねた動画も。さすがの一言で、和楽器ならではの音の響きを楽しむことができる。



▼同じく和楽器バンドの黒流(和太鼓)と、いぶくろ聖志がリモートで作った新曲「生きかけた夢のあとがき」 も公開された。和太鼓は直に体に響く音が魅力だが、宅録でもこんなに響くのだなと感激。



▼和楽器バンド繋がりで、鈴華ゆう子(Vo)、神永大輔(尺八)、いぶくろ聖志による和風ユニット「華風月」は、4月に無観客ライブを配信。ピアノと和楽器があわさった音色は本当に癒し……。



▼イケメン和楽器集団「桜men」の大川義秋(箏)は毎日のようにカバー動画をアップしている。ジャニーズなど流行りのJ-POPカバーはもちろんのこと、ジブリ、ミュージカル『刀剣乱舞』の楽曲など、とにかく幅広いのでみていて飽きない。





▼桜menからはKIJU(津軽三味線)もコンスタントに演奏動画をSNSで公開。映像編集にもこだわったカバー動画も面白いし、日々の練習動画には「津軽三味線ってこんな音も出るんだ!」と驚く。




▼桜menといえばX JAPANの「紅」をカバーしたことでも話題。桜menのリーダー・中村仁樹(尺八,篠笛)は尺八一本でソロを披露。





▼「紅」は、和楽器アンサンブル真秀も過去にカバーしていた。男10人での迫力を持って表現した桜menの「紅」と、繊細な音色でより儚さが際立つ和楽器アンサンブル真秀の「紅」。聴き比べてみるのも面白い。


また、和楽器アンサンブル真秀は貴重な和楽器のレコーディング風景を知ることができる動画も公開中。



▼また、一見対極にあるように思える洋楽も和楽器でカバーされていたりする。KOTO(箏)PerformerのTRiECHOESはアヴィーチーの「Wake Me Up」を。豪雪の中での演奏シーン、すごい。

▼和太鼓パフォーマンス集団「DRUM TAO」もアヴィーチーをカバー。古いと思われがちな和楽器の音色が格段にオシャレに。世界で活動する彼らだからこその演奏だ。



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コロナ禍にあっても一致団結し努力を重ねてきた日本。WHOが日本のコロナ対策を称賛したとの報道もあったが、日本ならではの文化や衛生観念もそれに大きく関係している。和楽器も、わが国独自の文化。和楽器の良さも、改めて世界に称賛される日が来て欲しいなと思う。

文◎服部容子(BARKS編集部)
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