【ライブレポート】After the Rain、初のオンラインライブで世界へ届けた歌の力

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“そらる”と“まふまふ”によるユニット・After the Rainが11月7日、全世界に向け初の無観客配信ライブ<After the Rain ONLINE LIVE 2020>を開催した。

◆ライブ画像

After the Rainは「雨の後の世界を歩いていこう」という想いから付けられたユニット名。2020年はコロナ禍という未曾有の事態に見舞われ、まさに“雨”の時代となった。多くの人が苦しみを味わったが、そこから変わってしまった世界に向けて新たな一歩を踏み出すことを始めた。

ライブ終了後のアフタートークにて、After the Rainの2人も本来であれば今年は全国と世界でライブを開催する予定だったと明かしていた。それに変わる新たな一歩として「世界に知ってもらう」ことを目的に今回の配信を決めたという。


それゆえに、ライブのセットリストはAfter the Rainらしさを詰め込むかのような構成だった。絵画がだんだんと色付いていくようなオープニング映像を経て、まずは元気をくれる楽曲「1・2・3」。リリース時にはただ前向きに背中を押してくれるように聞こえたのだが、“手探りで見えない今日の中”、“忘れた景色も 今日のどこかにある”という歌詞が、今の状況では違った意味に聞こえる。そして、そらるとまふまふが伝えてくれるように1・2・3でAfter the Rainの世界に一気に飛び込んでいくことになる。


そこから始まったのは「喰病しのイデア」から特にロック色の強い4曲。ステージに立つ2人にレーザーが降り注ぎ、疾走感が増していく。間のMCでは「緊張している」と述べていたそらるだったが、そんなことは毛ほども見せない圧巻の2人のボーカル力だ。「解読不能」では炎も上がり、最後のまふまふのハイトーンの雄叫びが胸を突く。「アンチクロックワイズ」でも二酸化炭素ガス の中から、この世界の全ての理不尽をも喰らい尽くすような熱を感じる。一見明るいキラキラロックながら、実は苦しい胸の内を描く「セカイシックに少年少女」まで、一気に駆け抜ける。


「普段は会場で実際にみんなが笑顔で手を振ってくれて、それがパワーになっているんだなって。みんなの力は偉大だったんだなと思います」とそらる。確かに無観客でのオンラインライブは、2人にとって挑戦であっただろう。しかし、こうして2人が届けてくれる歌は、確実にいま観客のパワーになっている。

そう思ったのは、そらるが「待ちぼうけの彼方」を歌唱した一幕。まふまふのアコースティックギターとそらるのボーカルによる弾き語りの演奏は、シルエットがメインのシンプルな照明の中でも力強さを感じた。


場面は一転、赤と緑の激しいレーザーに彩られ「ブラッククリスマス」が始まる。これもAfter the Rainらしい一筋縄ではいかない楽曲だ。楽しげに動き回りながらの掛け合いが、目にも耳にも楽しい。

そしてまた違った表情を見せる「四季折々に揺蕩いて」では囁くような“好きみたいです”に心を掴まれ、その切なさに追い打ちをかけるように「夕刻、夢ト見紛ウ」が披露される。背中合わせになったそらるとまふまふが情感たっぷりに表現する切ない“ありがとう”に、涙腺が緩む。



まふまふの「最後にもう一度、みんなで音楽を楽しめたら」の言葉で「彗星列車のベルが鳴る」へ。“さよならの台詞もなく 最後のページ”、エンディングへ向けて感情が高ぶっていく。本当はもっと一緒にいたいけれど。

そしてラストは「桜花ニ月夜ト袖シグレ」。メッセージ性のある詩的な言葉選び、和の要素を含むメロディー、そして何よりAfter the Rainの始まりの曲であること。この選曲は、とてもにくい。

“その声を聞いて ボクは救われた”
“キミで満たされていく”
“泣きそうな夜は 傘を差してあげよう”

画面の前にいても胸を刺すAfter the Rainの言葉。この日、このライブを見て感情が様々に動かされた。本来であれば大きな会場でたくさんの観客のもと、豪華な演出とともに披露されたであろう楽曲たち。でも、歌の力は画面をも超えて、しっかりとこの胸に伝わっていた。これからも、2人がどんな景色を見せてくれるのか楽しみにしたい。

文◎服部容子(BARKS)
写真◎小松陽祐[ODD JOB]、堀卓朗[ELENORE]、今田和也[ELENORE]

セットリスト

M01 1・2・3
M02 喰病しのイデア
M03 解読不能
M04 アンチクロックワイズ
M05 セカイシックに少年少女
M06 待ちぼうけの彼方
M07 ブラッククリスマス
M08 四季折々に揺蕩いて
M09 夕刻、夢ト見紛ウ
M10 彗星列車のベルが鳴る
M11 桜花ニ月夜ト袖シグレ

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