【ライブレポート】MSTK vs 松田樹利亜、時をかけて香る'90年代の魅力「<対バンしてみた>へようこそ」

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ソロシンガーであり俳優としても長いキャリアを誇る藤重政孝は、MASATAKA名義で2020年から自らロックバンドMSTKを立ち上げ、そのボーカルを担っている。大人の色気をまとったMASATAKAと1990年代が香る音楽性の組み合わせにより生まれるMSTKの都会的な世界観は、魅力に富んでいる。

◆MSTK×松田樹利亜 画像

そんなMSTKが2月7日、渋谷WOMBにてライブ<『対バンしてみた vol.1』MSTK vs 松田樹利亜>を開催した。タイトルどおり、同シリーズ初の共演者として迎えられたのは松田樹利亜。MASATAKAと同じく、1990年代前半にメジャーデビューを果たしたガールポップを代表するひとりだ。現在に至るまで意欲的な音楽活動を続けている彼女はMSTKの対バン相手に最適の存在といえる。


同時代を歩んできた2人のシンガーの共演の経緯については、先ごろ公開されたBARKS対談で語られたとおり。新型コロナウィルス第6波の影響で一時は公演開催自体が危ぶまれたそうだが、最終的に“有観客+生配信”という形で実施。日本全国はもちろん海外も含めたリスナーが見守る中でのライブとなった。

客席から湧き起こる熱い拍手を浴びてステージに立った松田樹利亜は、ハードチューン「BAD BLOOD」「赤い糸くず」を続ける流れからライブを開始。原田喧太(G)、Ju-ken(B)、CHARGEEEEEE...(Dr)という強者揃いのバンドメンバーが生み出すパワフルでタイトなサウンドは心地よさに溢れ、爆音に負けることなくガンッと前に出てくる松田の力強いボーカルも聴き応えがある。気持ちを駆り立てるサウンドとメンバー全員が織りなすフィジカルなステージングの応酬に、オーディエンスの熱気が一気に高まった。




「こんばんは、松田樹利亜です。こんな大変な時期の月曜日に、これだけ集まってくれてありがとうございます。今日はMSTKの対バンイベントということで、めちゃくちゃ楽しみにしていました。最後まで思いきり楽しんでいってもらいたいと思います」──松田樹利亜

MCを挟んだ後は、メロディアスな「カナリア」やセクシーなシャッフルチューン「Big City Night」、爽やかかつキャッチーな1993年リリース曲「Forever Dream」などが演奏された。それぞれの曲調に合わせて歌のテイストを変える松田の表現力の高さが光り、多面性を見せつつすべてが良質なこともさすがの一言。幅広さが散漫さにつながることなく、鮮やかな色彩を感じさせることが印象的だった。



ライブ後半ではダークな新曲「RECKLESS」とアップテンポの「flight」、煌びやかな「ジュール」を続けてプレイ。オーディエンスを大いに湧かせた後、「とても大事にしている曲です」という言葉と共にスローチューンの「SPIRIT」が届けられた。情熱的に歌い上げる松田のボーカルと抒情的なサウンドをフィーチャーした「SPIRIT」で激しさを打ち出したライブを締め括るのも実に見事。心地いい余韻を残して松田はステージから去っていった。

新曲「RECKLESS」がセットリストの中で最もハードだったことからもわかるように、現在の松田は激しい音楽に惹かれているようだ。とはいえ、秀でた歌唱力を活かしてハードチューンも勢いに任せたり、がなったりするのではなく、しっかりと歌っていることは注目といえる。ハードなサウンドと艶やかなボーカルのマッチングを活かして独自の世界を創出している現在の彼女の魅力を十二分に味わえるライブだった。



MSTKのライブはアップテンポな「LIGHTS」からスタート。バリッとした立ち居振る舞いでエモーショナルな歌声を聴かせるMASATAKAに目を奪われたと同時に、演奏力の高いバンドならではのタイトさと躍動感を併せ持ったサウンドも実にいい。強いインパクトを放つ松田樹利亜のステージの直後、テイストが異なることも功を奏して、ライブが始まると同時に場内はMSTKの世界へと染まった。

「MSTKです! 今日は<対バンしてみた>の第一回目。こういうご時世ではありますけど、みんなそれぞれ自分を守りながら会場に来てくれて、ありがとうございます。今日は最後まで盛り上がって楽しんでいってください。よろしく!」──MASATAKA



MCを挟みつつキャッチーな「ENDRESS DREAMER」やアダルトな雰囲気の「KING」、心に響くサビを配したスローチューン「Seven Reasons, why」などをプレイ。統一感を持たせたうえで様々なエモーションを表現できることも彼らの強みで、1曲ごとに空気感を変えながら世界観を深めていく流れに惹き込まれた。起伏に富んだ構成が光り、翳りを帯びたナンバーも含めて常に煌めきや柔らかみを湛えていることもMSTKの魅力といえる。

もうひとつ、彼らのライブはプレイ面の見どころが多いことも見逃せない。テクニカルでエモーショナルなギターワークを展開するAZとJIN、力強さと正確さを兼ね備えたTETSUYAのドラムもさることながら、覆面ベーシストO.N.Z.Bのプレイには圧倒された。完全にアドリブで弾いていることがわかるフリーキーなフレージングを展開する一方で、ファットなグルーヴを紡ぐボトムプレイも魅力的。さらに高速スラップや超絶的なベースソロなどを余裕でこなすハイレベルなプレイは注目といえる。ミステリアスなキャラクターも含めて、O.N.Z.BがMSTKの重大なピースになっていることを実感させられた。



メンバー紹介を経て、ZIGGYのカバー「GLORIA」からライブは後半へ。耳馴染みのある「GLORIA」でオーディエンスのテンションをさらに引き上げた後、華やかに疾走する「Under the Gate」と爽やかな「DISCOVERY」が畳みかけるように演奏された。熱さとスタイリッシュさを併せ持ったMSTKの楽曲はライブ映えも抜群で、渋谷WOMBの場内は熱気と一体感に溢れた盛り上がりを見せた。

MSTKのライブは魅せるという言葉が似つかわしいスタイルでいながら、ヤンチャさや爆発力なども備えていることがポイントといえる。決してレイドバックしているわけではない。かといって無理して若々しく見せようともせず、等身大のロック感を打ち出しているのが彼らの魅力だ。シーンの中で面白い存在になっていくであろうことを感じた。


アンコールでは松田樹利亜がステージに呼びこまれ、彼女の誕生日を祝った後、MSTKに松田が加わった編成で1993年リリースの松田のナンバー「だまってないで」が披露された。1990年代の楽曲ながら時代を超えて輝きを放つ楽曲であることを再確認したことに加え、松田とMASATAKAによるツインボーカルが「だまってないで」に新たな表情を与えていることも楽しめた。誕生日祝いと同曲のセッションという2つのサプライズに渋谷WOMBの場内は笑顔で溢れ返り、<『対バンしてみた vol.1』MSTK vs 松田樹利亜>は最良の形で幕を降ろした。

今回のライブを観て強く感じたのは、ポピュラリティーを備えたアーティストが、好きなことをやったときに生まれる魅力や説得力には凄まじいものがあるということだった。MSTK、松田樹利亜ともに、今なお、攻めの姿勢でいることにもワクワクさせられる。ここにきて1990年代が再評価されていることもあり、彼らがこれからもリスナーを魅了していくであろうことは間違いなさそうだ。



取材・文◎村上孝之
撮影◎OKA☆DAI

■<『対バンしてみた vol.1』MSTK vs 松田樹利亜>2022.2.7@渋谷WOMBセットリスト

【松田樹利亜】
1. BAD BLOOD
2. 赤い糸くず
3. カナリア
4. Big City Night
5. Forever Dream
6. RECKLESS
7. flight
8. ジュール
9. SPIRIT
【MSTK】
1. LIGHTS
2. ENDRESS DREAMER
3. KING
4. Sorry...
5. Seven Reasons, why
6. GLORIA (COVER)
7. Under the Gate
8. DISCOVERY
encore
9. だまってないで (COVER) with 松田樹利亜

■アーカイブ配信<『対バンしてみたvol.1』MSTK vs 松田樹利亜>

ライブ開催日:2022年2月7日(月)@東京・渋谷WOMB
アーカイブ:2/14(月)23:59まで視聴可能
▼配信チケット
2,500円
https://free-planet.zaiko.io/e/mstk-tokyo2


■<『対バンツアーしてみたvol.1』MSTK vs 松田樹利亜>

【大阪公演】
4月10日(日) ESAKA MUSE
open17:00 / start18:00
【東京公演】
4月17日(日) 青山RizM
open17:00 / start18:00
▼チケット
前売¥5,000 / 当日¥5,500
※チケットおよびライブ詳細は後日発表


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