【インタビュー】超学生、1stアルバム『超』リリース「“こんなこともできますよ”と知ってほしい」

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超学生が2月15日にメジャー1stアルバム『超』をリリースした。本作は彼にとって初めてのパッケージアルバムであると同時に、インディーズラスト曲からメジャーデビュー曲、新曲3曲が収録されているという、軌跡をたどるような意味も持つ贅沢な作品だ。

◆撮り下ろし写真

とはいえ、実はメジャーデビューはたった三ヶ月前のこと。すでに“歌ってみた”界隈では10年の活動があるとはいえ、ハイスピードで駆け抜けてきている感はある。ただし超学生自身は、このスピード感ある活動の中でも、まだまだ「やりたいこと」「やるべきこと」が渋滞しているようだ。こちらも、メジャー1stアルバム『超』を聴き逃していては、彼においていかれそうだ。初のワンマンライブも決定し怒涛の波に乗る彼の言葉を、本インタビューでチェックしておいてほしい。

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■“本番”が増えたことは今までと違う意識

──「Did you see the sunrise?」でのメジャーデビューから3ヶ月以上経ちましたが、この数ヶ月は超学生さんにとってどんな期間でしたか?

超学生:ありがたいことに活動スタイルは今までと変わらず、ただ単純にいただけるお話やお仕事の数が増えた感じですかね。

──打ち出し方としてはメジャーという形ですが、これまでのリリースペースや動画のペース含めて、あまり大きく変わっていませんものね。

超学生:本当におっしゃるとおりで。2年前だったら動画を毎週あげていたんですが、1年ぐらい前からたくさんいろんなお話をいただけるようになって、できなくなった週もあったんです。そう考えるとデビューしたからといって極端にペースが落ちることもなく。それはスタッフさんに支えられているおかげなんですけど、変わらないペースで活動できているのはありがたいです。

──こういう形でお仕事をするようになって、ご自身の中で大きく変わったと感じるものはありますか?

超学生:以前に比べて“本番”みたいな意識で取り組む機会がたくさん増えました。“歌ってみた”はあくまで趣味としてやらせてもらっている感覚が強いので、お仕事でのレコーディングとかラジオ番組に出させていただくとか、そういう普段の趣味とは違う場面に接すると、改めて頑張らなくちゃと思うことが増えた気がします。



──仕事として取り組む形は、それまで趣味の延長でひとりでできていたこととはまた違って、その後ろにいろんな人がいるわけですものね。

超学生:自宅からのリモート出演だったらわりと普段のツイキャスに近い感覚ですけど、どこかのラジオ局に呼んでいただくとブースの外に大勢の大人の方と、目の前にパーソナリティの方がいらっしゃいますし。レコーディングでもブースの外にはいろんなエンジニアさんもいますし、コラボだったらお相手の方々が直接聴いているし──そういう意味でも“本番”が増えたことは今までと違う意識ですね。基本的に僕は緊張しいなので、そういう場面で緊張しちゃうんですけど、逆に“歌ってみた”がより伸び伸びできることも相対的に感じています。

──よりメリハリが付くようになったのかもしれませんね。趣味だったことをお仕事にすると、そこの切り分けやオン/オフが難しくなりますけど、今のお話を聞くと趣味として楽しむ部分と仕事として頑張る部分がちゃんと線引きできているのかなと。

超学生:よく「趣味が仕事になると大変」みたいな話がありますが、それって僕でいうと“歌ってみた”が直接お仕事になる状態だと思うんです。それだと大変ですけど、僕はありがたいことに“歌ってみた”は完全に趣味としてYouTubeに上げて、そこで培ったものをお仕事として反映しているという、同じ分野なんですけどそれを活かしているような感覚なので、そこでメリハリが付くのはかなりありがたいです。

──スタンスはいい意味で変わらず、仕事という視点がひとつ増えたと。

超学生:かつ、お仕事から学べることも本当に多くて。ずっと独学でやってきたぶん、伸び伸びできる反面どこか伸び悩んだりとか、どうしてもこれができない、あのプロの音が作れないという悩みもあったんですけど、実際に第一線で活躍するプロの方々とお仕事する機会をいただくことで、趣味の“歌ってみた”に活かせる学びも多いので、それはよかったのかなと思っています。

──超学生さんの中で今、音楽活動をする上でモチベーションになっているのはどういったものなんでしょう?

超学生:一番はコメントですかね。僕がマニアックな音の話を生配信でしたり、投稿したYouTube動画の概要欄に書いたりしていることもあって、コアなリスナーの皆さんは音についても着目してくださっていて。例えば、今までは「この歌い方が好き」「この声の出し方が好き」といった声が多かったのが、だんだんと「この音作りがたまらない」「このマイクの音がいい」と言っていただくことも増えてきて。そういった反応は、今でも大きな支えですね。


──黙々とひとり歌い、それをアップし続けていると、何かを見失ってしまう瞬間もあると思いますし、それに対するリアクションがあるからこそ次へとつなげることもできますし。

超学生:そうですね。極端な話、みんなに刺さらなかった曲があったとしても、それはそれで何が刺さらなかったのかがわかるからいいなと思っているぐらいで。商業的にはよくないのかもしれないですが(笑)、「こういうのが刺さらないんだ」「みんなはこういうの、興味ないんだ」みたいなこともわかるから、それはそれでいいのかなと最近は思い始めています。

──そのトライアル&エラーが、ネットベースのスピード感のおかげでやりやすくなったのかもしれませんね。

超学生:ああ、確かに。昔と比べてリスナーさんとの距離も近くなっているので、そこも大きいですよね。

──単曲単位で、スピード感を持って楽曲を制作・発表していると、そこがより身近なものになっているのかなと思います。特に最近はサブクスの普及も影響して、シングルやアルバムといった形があやふやなものとなりつつある中、超学生さんが1stアルバム『超』という11曲入りCDをリリースすることが意外だったんです。そんな超学生さんは、アルバムという形態に対してどういうイメージを持っているんでしょう?

超学生:曲そのものにフォーカスを当てて言うと、普段僕はYouTubeに投稿しているので再生リストもあるし、自分の好きな曲だけを集めた再生リストをユーザー側として作ることもできるので、アルバムという形式はあまり重要視していません。ただ、そうなったときにアルバムがどういう意味を持つのかといったら、サブスクでひとつの“箱”というかフォーマットの中で、「1stアルバム『超』」というものを、僕のアカウントから各サブスクに提供することにまず大きな意義があるんじゃないかなと思っていて。昔だったらCDに収録された曲順で聴くので、曲順や曲間の長さにこだわることに比重が傾いていたと思うんですけど、今はサブスクで好きな曲だけを再生するでしょうし、シャッフル再生する方も多いので、今回のアルバムに関しては「曲順はこうで、がっつり聴いてもらう」という意識よりは、一応“多様性”という裏テーマみたいなものもあります。いろんなタイプの曲を聴けるように、従来のアルバムのように曲の並びの意味も踏襲したいなと思ったので、1曲目に僕のインディーズの1stシングル「ルーム No.4」を入れて、最後にメジャーデビュー直前のインディーズ最終曲「サイコ」を入れるという形にしています。



──なるほど。

超学生:あと、現物的な意味合いではファングッズのひとつとしての意味が強いのかなと。僕が超学生のファンだったら、どういうものを部屋に置きたいかなということを第一に考えて、作らせてもらいました。

──やっぱり、サブスクのプレイヤーに小さく表示されるアートワークと、実際にCDサイズのアートワークだと感じ方もまったく異なりますし。かつ、CDを手にしたときに、所有するという感覚がより増しますしね。

超学生:確かに。今回それで言うと、豪華盤のほうはかなり作りをこだわっていて、ぜひじっくり堪能していただきたいなと思います。なかなか普通のアルバムにはない仕上がりをしているとは思うので、実物をお手にとっていただいた方にはその作りにも注目してもらいたいです。

──改めて『超』というアルバムをじっくり聴かせていただくと、いい意味で1曲1曲それぞれが違う方向を向いているからこそ、プレイリスト的なオムニバス感も強いんですが、冒頭の「ルーム No.4」とラストの「サイコ」が同じボカロPさん(すりぃ)が制作していることもあって、アルバムとしてギュッと締まった感もあるんです。

超学生:ファッションじゃないですけど、頭と下が合っていればひとつ芯があるような感じがしていいと思ったのもありますね。今回は1stアルバムという事実や、メジャーデビュー後最初のCDということもあったので、自己紹介的な意味も込めて「超学生はこんなこともできますよ」ということをこの11曲を通じて知ってもらいたかったので、次回以降は、もっと一貫性のあるテーマを用意して作れたらなと考えています。

──おっしゃるように“超学生入門編”といえるカタログ的作風だからこそ、次作以降はどんなジャンルにも進んでいける可能性が伝わってきます。

超学生:今後一貫性のあることにも挑戦したいという話にもつながるんですけど、次回やりたいことで言うと、このアルバムに含まれないようなことに絞って制作してみたいなと思っていて。「ルーム No.4」とか「サイコ」みたいなアルバムを1枚作るのではなくて、ここにはない要素で1枚作らせてもらえたらな、とうっすら考えているところです。


──その一方で、古き良き時代のアルバムを強く意識していなかったからにも関わらず、超学生さんの声があるからこそ不思議と統一感があるようにも聞こえるんです。

超学生:ああ、なるほど。

──もちろん、曲によって歌い方を変えたり声色に変化を加えているものの、歌に対して一本芯が感じられて。それがあるから、最初から最後まで安心して楽しめるところもあるのかなと。

超学生:ありがとうございます。それに加えて、もしかしたら音質的なところも大きいのかもしれません。また音の話になってしまいますけど、ディレクションとして僕は音に口出しすることが多いんですね。ミキシングをしていただいたときに、単純に音に合っているか、曲に合っているかというのもありますけど、僕の好みの音として「超学生っぽい音か?」という視点で聴くことが多くて。普段から“歌ってみた”を自分でミックスしているぶん、通常のアーティストさんよりも指示がちょっと具体的なことが多いんじゃないかなと。すごく専門的に「このツールを使っていると思うんですけど、ここの辺りをもうちょっとこうしたらどうでしょう?」みたいな、そういう細かいことに対応していただくことが多いので、もしかしたら無意識下にそういう音質的な要素でも一貫性があって聞こえるのかもしれません。

──なるほど、それは確かに大きいかもしれませんね。

超学生:今回でいうと「けものになりたい!」を除いて全部をエンジニアさんにミックスをお願いしているんですけど、今後のオリジナル曲では普段の“歌ってみた”みたいに僕がミックスをしてみる曲も設けたいなと思っているんです。まだ相談段階ですし、もちろん勉強しなくちゃいけないこともまだまだあるんですけど、メジャーリリース作品でそういうことを試せたらいい経験にもなるのかなと。中には「超学生の作る音が好きだよ」と言ってくれるコアな方もいらっしゃるので、マニアックな方はそこも楽しみにしていてほしいです。

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