【インタビュー】グラビティ、「今までやってきたことを肯定しながら深みを出していきたい」

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自由な発想でヴィジュアル系シーンにインパクトを与えている、新世代バンド・グラビティ。

◆ミュージックビデオ

中毒性のある楽曲や一緒になって暴れられるライブといったバンドとしての“楽しさ”に加え、YouTubeでバラエティ企画を配信するなど、従来のヴィジュアル系文化にはなかったものも柔軟に取り入れ、着々と知名度を上げている。そんな彼らには、ひとつの信念がある。3月に発売された12thシングル「ORIGINATE」から、彼らの思いを紐解いていこう。

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■すれ違いが致命的なものになる前に、それをしっかり伝えておきたかった

──最新シングル「ORIGINATE」の表題曲である「ORIGINATEに帰す」って、グラビティのイメージからすると、かなり新しいイメージの曲じゃありません?

六(Vo):客観的に見ると、真面目というかシリアスな感じの曲ですね。

杏(G):グラビティっぽさが薄いというか、ガラッと変わった感じがあったんで、最初に六からデモが来たとき、正直なところ自分は不安になったんです。でも、いざスタジオに入ってSEから通してやってみたら、すごくカッコよくて! さすがだなぁ、作曲者を信頼してなくてゴメン!ってなりました(笑)。

リクト(B):確かに、今までのグラビティには無かったような曲調だけど、バックサウンドもカッコよくて結構好きな感じだったから、自分は楽しみにしてましたね。

社長(Dr):うん。純粋にカッコいい。

──歌詞は深読みすると、もしやDV男の心情を歌ってる?とも思ったのですが……。

六:いや、違います(笑)! これはファンのためというか、ファンとの関係性について書いた曲なんです。自分らの意図がファンに思い通りに伝わらないことって多いけれど、それって考えてみれば当たり前なんですよ。こんなに毎日一緒にいるメンバー間でだって、すれ違いは起きるし、上手く伝わらないことがあるんだから。

──でも、よくバンドって“メンバーとは同じ方向を見ている”って言いません?

六:初期はそうなんですよ。やりたいことの共有はするし、ファンからしても同じ気持ちで見ているはず。曲だって数曲しかないのに、すれ違うわけがないですよね。でも、曲の数が増えて、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、やっぱりすれ違っていくんです。みんな毎日変化するものだし、人が変化しなくても世間が変化すれば変わっていくのは当たり前。だから、すれ違いしすぎないうちに誤解は解いていこうね、っていう曲なんです。これは。

──すれ違いって、具体的に言うと?

六:例えばMVには、病気のお母さんと子供、2人組の強盗、男女のカップルが出てくるんですけど、お母さんは無理して子供に元気な姿だけを見せるんですね。それは病弱な親を思い出に残さないための母の愛なんだけど、結局、最後には死んでしまうわけで、娘からしたら怒りにしかならない可能性もある。男の子2人が強盗するのも片方が悪事に誘うのが始まりで、それに付き合うのも愛だし、咎めるのも愛だと思うんですよ。カップルは仕事を頑張りたい男と、とにかく会う時間を増やしたい女で、男は相手を幸せにするために働いてるのに……っていう、よくある恋愛のすれ違いですね。で、最終的に誤解を上手く解けなくて彼らは殺し合うことになるんですが、バンドも似ているなと思うんです。バンドが“売れよう”とすることって、ファンにとっては嬉しくないことだから。



──売れて大きくなること=遠くなることに直結しますもんね。でも、全く大きくならなかったら最後にはファンを悲しませる結果になるだけで、バンドは常にその板挟みにある。

六:そう。バンドが売れたりキャパが増えていくこと自体は、ファンとしては嬉しいはずなんですよ。ただ、売れようとして外向けになればなるほど、ファンに寂しい想いをさせがちになる。いわゆるファンに“刺さらない”曲が生まれたり、「このバンドにこんな曲求めてない!」って言わせたりすることになるんですよね。でも、それも全部バンドを良くしようとやっていること、ひいてはファンに喜んでもらうためのものなんです。いわゆる“刺さらない”曲があったとしても、貴方に刺さる曲はその先で出るし、バンドがやることとファンが求めていることが食い違っていたとしても、長いスパンで見ればちゃんとファンの為になるんだから……って。すれ違いが致命的なものになる前に、それをしっかり伝えておきたかったんです。

──だから“離さず話せばよかった”というフレーズで始まるんですね。実際、バンドの将来を考えて、今のファンが望まないような楽曲を出すというのは、正直よくあることだと思うんです。ただ、それをちゃんと説明するバンドってほとんどいない。

六:そう! 説明できないんですよ。説明しちゃったら面白くないし。でも、ファンの気持ちはわかっているし、ちゃんと同じ方向を見ているよって伝えておくことは、すごく大事じゃないですか。

リクト:メッセージの前提として「俺たちはファンを愛してるし、ファンは俺たちを愛してるよね」っていうところがあるんですよね。だからプレイするときは、シリアスな雰囲気を作ったりカッコつけたりもしつつ、ファンに向けて「心ではメッチャ愛してるよ」って思いながら演奏しているので、それがちょっとでも湧き出ていたり、伝わっていたら嬉しいです。

my(G):歌詞とか曲をしっかり聞いて、曲に入り込めば勝手にそうなるんですよ。例えばポップで明るい曲をやるとなれば、特に意識しなくても、勝手に明るくなるじゃないですか。この曲だったら完全にシリアスな感じなんで、しっかりメッセージを届かせようってなるんですよね。

社長:MVも今までにないスタイルで撮ったんです。メンバーが円形になって演奏する目の前に、さっき六が言ってた3組が芝居してるっていう。僕の前にいたのは強盗の2人だったんで、彼らの情緒をイメージしながら叩いてました。

──バンドの演奏シーンにエキストラのドラマを挟み込むのはよくある手法ですけど、演奏と芝居を同じ場でやるというのは斬新じゃありません?

六:そうですか? やりたいことが見えていたから、特に「新しいことやってやろう!」っていう気持ちもなく、僕らとしては当たり前だったんですけどね(笑)。より苦しい感じが出るし、楽曲のメッセージを一番表現しやすいじゃないですか。曲を作っている時点で、そういう絵で撮りたいとずっと考えていたから、想像通りの絵が撮れて良かったです。

リクト:周りで本職の役者さんがガチの演技をしてくれてるから、自分たちも入り込まないと浮いちゃうなぁって、すごくプレッシャーを感じましたね。おかげで、良い相乗効果になったと思います。

myu:ただ、カッコつけてギターを回してたらストラップが取れちゃって、後ろにすっ飛んでいったんですよ! そしたら、ちょうどベッドに寝てるお母さんと子供の横をギターが通過していって……ぶつからなかったのが不幸中の幸いでした。

杏:僕は子役の子に怖がられないようにしましたね。優しく声かけてました!

──良かったです(笑)。この曲は、既にライブでも披露されているんですよね。

六:はい。ウチって「キュンキュン警報」とか「推しガチャ!」とか、いわゆるアイドル寄りの曲が目立つぶん、ちゃんと“バンド”としてのイメージを付けていきたいという気持ちが強いので、そこを押し出していく1作目になってくれればいいなぁと思ってます。

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