【インタビュー】新山詩織、10周年記念アルバムに強い意志「自分との戦いというか、吹っ切れた感もあります」

ポスト
no_ad_aritcle

■自分に対してというよりは
■誰かに言いたいことが詰まってるかも


──「Hate you」などは、ホーンがアクセントになったノリのいいロックンロールで。キャッチーであり、アレンジの妙が効いていて、聴かせる曲になっているのではないかと。

新山:「Hate you」はわりとデモがそのまま形になった感じなんです。ホーンは入っていなかったんですけどね。そこから黄さんのマジックで、ノリのある感じになりました。この曲は歌詞が歌詞なので、サウンドでおちゃらけるじゃないですけど、遊びを入れて(笑)。笑ってるようなイメージもあったし、キュッとまとまったなかでも言いたいことは言って、みんなで発散できる曲になればいいなという思いがありましたね。今までは書かなかったこともぎゅっと詰まっているので、ファンの人にも新鮮な、“こんな感じもあるんだ!?”って受け取ってもらえたら嬉しいです。

──タイトルどおり“Hate you”という歌詞の一節もありますが、これまではいろんな思いやネガティヴな感情の矢印が自分に向くことがあっても、他者に向くものはあまりなかったですよね?

新山:全曲通してそれはありますね。今回のアルバムは、自分に対してというよりは、誰かに言いたいことだったり、言えたらなっていうことが詰まってるかもしれない。前作『I’m Here』から一歩前に出たというか。できれば隠しておきたいことでもあるんですけど、出しちゃえ!って吹っ切れた感もあります。

──それは前作をリリースをして、ツアーを通してお客さんの顔を見て得た安心感もあったから、というのもあるんでしょうか?

新山:そうですね。昔からずっと応援してくれるファンの方たちはもちろん、活動休止から復帰して以降、またライブに足を運んでくれたり、アルバムもしっかり聴いてくれたり、そういう方たちに対しては、特にどんな形であれついてきてくれてありがたいって感謝しかなくて。そういう気持ちはずっとありますし。だからこそ、という気持ちがすごくあります。


──今回のアルバムをリリースして、それを“どう受け取ってくれるかな”という緊張感もありますか?

新山:制作が始まる前、歌詞を書いている段階ではちょこちょことそういう思いが出てきたりもしていました。でも、自分との戦いというか、今回はそれも取っ払う気持ちでやっていましたね。なので今は、このアルバムを楽しく聴いてもらえたらいいなっていう気持ちでいます。

──歌い方ひとつとっても曲によって表情や表現の広がりがあって、より自由で、シンガーソングライターとしていろんな扉が開いてることを感じます。こうして一歩も二歩も踏み出せている、心持ちの変化などがあったのでしょうか。

新山:音楽の現場ではないんですが、自分がいる環境だったり、関わっていく人だったりとかが変わっていくなかで、初めて会うタイプの人もいたりしたんです。そういう新たに出会う人と話したりとか、関わっていくなかで、“こういうことを平気で言えちゃう人もいるだな”とか、“こんなことを普通にやってのけちゃう人もいるだな”っていう発見もあって。いろんな人間がいるんだなっていうことがわかって(笑)。でも、結局は考えいてることは同じなんだなというのもわかったんですね。だからこそ、より日常的な内容で、みんなが感じるモヤモヤや怒りというものをテーマに置いたり、そういった歌詞が書けたりというのができた気がします。

──それもOKなんだなと。

新山:前までそういう部分…怒りやモヤモヤを抱くことって、大げさにいうと、あっちゃいけないとか、よくないものだと思っていた自分がいたかもしれないです(笑)。でも、こういうことって私だけじゃなくて他の人にもきっとあることで、自分が特別なわけじゃないよなってなんとなく気づいたときに、怒りやイライラもみんな当たり前にあることだし、それを出し過ぎたり、言い過ぎたりしなければいいだけで(笑)。そういう気持ちを持つのは普通のことだから、受け入れてあげればいいんじゃない?って、自分に言い聞かせるというか。そんなふうに思えたんですよね。

──そういう感情を曲にすることでネタになったじゃないですが、歌に消化もできそうですしね。街でキャッチに捕まったことも、「何者」という曲のネタになったりとか。

新山:はい(笑)。キャッチの話は実話なので。そのときよほど疲れていたのか、何かうまくいかない感じがあったのか、そういうものに出会ってしまった感じだったので。歌詞に“ミッションクリア”ってありますけど、まさにそんな感じで、とりあえずこの場をなんとか去ろうっていう感じだったんですよね(笑)。


──また「Free (feat. 山崎あおい)」は、新山さんが作曲を、山崎あおいさんが作詞をした共作ですが、どんなふうに作っていった曲ですか。

新山:この曲は、メロディを私が作って、あおいちゃんにはそこに歌詞を書いてもらったんですけど、LINEのやりとりだけで作っていったんです。あおいちゃんがツアー中だったこともあって、LINEという形にはなったんですが、実際に会って作っていくのとはまた違った素直なやり取りもできたかなって思います。もともと昨年4月の<I’m Here TOUR>であおいちゃんをゲストに迎えて、「せっかくだからふたりで一緒に作った曲を披露できたらいいね」というところから始まった曲で。ライブで一緒に歌うイメージとか、あとは、ひとりの友人として、音楽という同じ道を歩んできたなかで、これからお互いがさらに羽ばたいていけたらいいいねじゃないですけど。曲を作っているときは、そういう軽やかで自由な気持ちで、音楽もプライベートも楽しくやれたらという話をしていたんです。

──同じシンガーソングライターとして山崎さんはどういう存在ですか。

新山:これは会うたびに言っているんですけど、「あおいちゃんってすごいな」って(笑)。シンガーソングライターとして、作家として活躍をしているクリエイティヴな部分はもちろん、あおいちゃんの人柄が私はすごく好きなんです。“自然と人を惹きつけるところがあるな”って会うたびに思っていて。そういう部分も知ってからあおいちゃんの曲を聴くと、本当にいい曲だなって思ったり、“あおいちゃんはこんなことも書くんだ”、“こんなことも思うだな”とか新たな部分も見えたりもして。尊敬していますね。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報