【インタビュー #2】DEZERT、千秋 × Sacchanが暴走と浄化の軌跡を語る「この13年間、ずっと焦っていた」

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DEZERTが9月23日、ワンマンライヴ<DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT->をLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催する。自身二度目の渋公ワンマンはバンド名を冠したセルフタイトルとなるもの。先ごろ公開したBARKS3ヵ月連続企画第一弾の千秋 × SORAインタビューで、「今の一番の課題は、“DEZERTがDEZERTに向き合って、DEZERTをどう伝えていくか”。メンバーにもこの話をして、であれば渋谷公会堂公演のタイトルを“DEZERT”にしようと」と語られるなど、2023年内のひとつの目標地点として位置づけられた公演が<DEZERT>だ。

◆DEZERT 画像

前述したように、渋公ワンマンは自身二度目。一度目が行われた2020年11月23日は、コロナ禍の規制の下、キャパ50%制限を遵守しつつ、公演途中に換気のためのインターバルを設け、来場者全員の検温やアルコール消毒を行うなど、感染防止対策に万全を期して行われた。約3時間のステージは約9ヶ月ぶりのライヴということもあって熱量高く、ソールドアウトした客席も、同時生配信された画面の向こう側も、ポジティヴな空気に満たされていた。以降、ライヴ活動を止めることなく継続の道を選んだ彼らは2022年6月、日比谷野外大音楽堂にて自身初の野外ワンマンライヴ<DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”>を実施し、大成功に収めるなど、着実に確実にスケールアップを遂げている。

バンドとしてのコンディションの良さは、現在開催中の全国ツアー<DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”>からも明らかだ。自己の中核にあるマグマの爆発が以前の彼らのステージだったとするならば、現在の視点はもっと外側へ、もっと開放へ向いているといって過言でない。3ヵ月連続企画第二弾は、始動メンバーである千秋とSacchan。フロントマンにしてメインコンポーザーであり、とにかく先に進む傾向にある千秋。リーダーとしてバンドを俯瞰で見つめながらバランスを図り、物事を冷静に進めるSacchan。二人のコントラストの高さこそ、このバンドに深い知性をもたらしていると言っていい。紛れもなく変貌を遂げているDEZERTについて、それぞれの立ち位置からバンドの現在を語ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

■口グセのように狂ったように
■「楽しもう、楽しもう」って


──6月17日からスタートした<DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”>も残すところ2公演となりましたが、今回のツアーの手応えや体感はどうですか?

千秋:楽しい、楽しめてるという感じですね。今まででいちばんシンプルな気持ちでツアーを回ってる気がします。


──その「今まででいちばんシンプルな気持ち」というのは?

千秋:なんのためにライヴをしているのか、ですよね。いろんな理由があると思うんですけど、元を辿れば楽しいというのがいちばんで。まあ、僕の場合は楽しいからバンドを始めたわけじゃなかったので、そこに辿り着くまでのプロセスがかなり遠回りだったんです。いろんなストーリー性を考えたりとか、色づけをしたりとか。それもいいんですけど、今回は会場限定CD「僕等の脊髄とブリキの夜に」はありますが、アルバムを引っさげたとか新しい作品を中心にしたツアーではないので。シンプルにどうやったら楽しいかなっていうセトリなんですよね。ツアー中、口グセのように狂ったように「楽しもう、楽しもう」と言ってて。

Sacchan:うん(笑)。

千秋:結構メンバーみんなも楽しそうにやってますよ。

Sacchan:同じイメージではありますね。メンバーそれぞれで思うところはあるとは思うんですけど、楽しくやるという、向かうところは一緒みたいな感覚にはなっているかなと思います。

──セットリストを場所によって変えるとか、当日変えるということも多いツアーにもなっているようですね。

千秋:セトリを変えることは昔からあるんですけど。これまでは俺の独断で決めていたものを、“じゃあ、楽しむためにはどうしようか”って。同じセトリで楽しめるならそれでもいいんだけど、朝起きて、ハコの雰囲気を見て、ちょっと音を合わせてみて、“この曲をやったら楽しいんちゃうかな、俺ら”っていうので変えたりするというのが大きいですね。


──ということでは、このツアーに向けて結構な曲数を準備していたんですか?

千秋:特にしてないですね。いけるっしょっていう。うちは結構曲が出てるほうなのかな? どうなんだろう…俺らがアルバム1枚出す間にMUCCとかは3枚出してるからな(笑)。それに比べたらそんなに覚える曲もないのかな。

──時を経て、“この曲はもっとこう弾きたい”とか“こういうアレンジでやってみよう”とか、“今のモードならこうだな”みたいなのもありそうですけど。

Sacchan:DEZERTはそこまでそういうのはないかもしれないですね。ああ弾きたいこう弾きたいっていうよりは、同じ曲を弾いたとて、ライヴをやってる感覚が結構違うので。そんなにそこは問題になっていないかもしれないですね。

千秋:あとは、昨年やったコンセプトライヴ<「study」>で、過去のアルバムを復習する機会もあったので、この曲は何年ぶりだなというのはなかったんですね。

Sacchan:うん、意外とやってたなと。


──これまでいろんなツアーや試みを重ねたからこそ、より自由に、柔軟にもなっているんですかね。

千秋:逆にいうと、自由じゃなくなったから楽しい、というのが今かもしれない。昔のほうが自由だったんですよ。その日にやりたいことをやる。やってみて、“何かが生まれればいいな”っていう奇跡を願いながらライヴをするっていう感じだったんで。それはそれで奇跡が起きるときもあるけれど、なにせ打率が悪い。根本的には今も自由かもしれないけど、僕らがこれまでやってきた自由っていうのはちょっと止めているというか。そうすることで、楽しむしかないんですよ。“この先何が起きる?”っていうのは正直、ないっちゃないよね?

Sacchan:たしかにね。

千秋:アンコールとかは逆にフリーダムになるんですけどね。本編に関しては、このツアーではある意味、いかにはみ出さずにできるかっていう。大体どのツアーもどこかではみ出ちゃってたんですよ。それで、空回るというのがあったんです。まあ今回も時々はみ出しそうになってますけど。

Sacchan:ははは。

千秋:その空回っていたのもこれまでは、俺がどう思うか、自分がこのライヴを見てどう思うかにかなり重点を置いてたんです。でもお客さんの気持ちを考えたら、しょっちゅうライヴが観られるわけじゃないじゃないですか、地方の人は特に。自分がお客だった時を思い返しても、演奏で多少のミスとかがあっても正直気にならなかったわけで。というのを思うと、どんどん楽しくなってくるというか。

──観客目線で考えたら、ライヴの場を共に過ごしている時間が嬉しいみたいな。

Sacchan:特に今回は、真面目にいこうとか、楽しもうというコンセプトを立てていたわけではないんですけど、自然とそっちに向かっていったんです。新曲とかが少ないぶん、そういう部分に気が向けられるというか。ホームランを狙いにいかないじゃないですし、狙ってないわけじゃないけど、打率高めにいこう、ちょっとバット短めに持っておこうっていう感覚は少しあるのかもしれないですね。その中でどれだけ飛距離を出せるかっていうほうが、今回は近いかもしれない。


──以前、BARKSで行なったSacchanとミヤさん(MUCC)の対談で、Sacchanは「バンドを俯瞰的に見ているタイプ」という話もあったのですが、そういう感覚はライヴのあり方にも反映されるんですかね。こうしたら面白い、こうしたらもっとよくなるみたいな。

Sacchan:どうなんですかね。そう言われがちではあるんですけど。

千秋:俺らふたりは、わりと俯瞰で見てたと思う。たとえばステージから客席に降りるとかもそうで。昔は客席に降りるのは当たり前だったんですけど、俺らの時代はあまりいなかったんですよ、そういうバンドが。以前、Sacchanと赤坂BLITZに先輩のライヴを観に行って、後ろの関係者席で見ていたとき、「今、ボーカルがここまできたらめっちゃ盛り上がるよね」っていう話をしたんですよ。「来たらいいのに」って。

Sacchan:うん。

千秋:だから、自分たちも降りたくて降りてたというよりも、“客席に来たら、お客さんが楽しいし、印象に残るんじゃないか”っていうのでやっていたんですよ。そうやってずっと俯瞰的には見ていたんじゃないかなと思う。ただ俯瞰で見てたからこそ、ちょっとお客さんが増えたりすると、俺はいい感じなのにお客さんのノリが悪いなとか、そのズレが苦しかったときもあったんですよね。でも今は、自分がというより、お客さん側に寄って考えているので、そのズレも気にならなくなったし。

──その視点の変化は大きいですね。

千秋:あとは、このシーンの中で、今、自分がどの位置にいるのか、どういう状況なのかがずっと気になっていたんです。だけど、僕の中でそれを判断するのをやめようと思って。たとえば以前だったら、初めてホール会場を組み込んだツアーのときに、昔のぐちゃぐちゃな曲とかはやらなかったわけですよ。“俺たち、ホールに立つから、メジャー感出していかないといけないんじゃないの?”みたいのがあったんです。今は、そういうのがまったくない。自分の現在地を判断するのをやめようとなったら、ラクになった気がしますね。それはライヴだけではなく、曲を作ることに関してもラクになったかな。

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