【ライブレポート】見た目はポップでファニーなV系、頭脳は凝り性ひと癖ありの音楽集団。その名はBabyKingdom

ポスト

たったひとつの真実を得たいなら、とにもかくにも“現場”に臨するしかない。見た目はポップでファニーなヴィジュアル系、頭脳は凝り性でひと癖ありの音楽集団、その名はBabyKingdom(以下、べびきん )。彼らがこの夜、渋谷PLEASURE PLEASUREにて開催したのはワンマンツアー<太陽と月光の反響音(レゾナンス)>のファイナル公演だ。

◆ライブ写真

かねてより、自らをMUSIC THEME PARKと標榜してきたBabyKingdomは、これまでにも海賊、忍者、西部劇、古代エジプト、恐竜、西遊記、戦国武将……といった多彩なコンセプトを次々と提示しながら、アトラクション(作品)を発表したうえでのライヴ活動を積極的に展開してきたバンドだ。そして、今夏にリリースされたのは“警察と怪盗”をダブルモチーフにして生み出すことになったという16thマキシシングル「ハイ逮捕/FAKE in PHANTOM」だった。

これはいわゆる両A面シングル的な作品で、収録曲のうち2曲がそれぞれ表題曲としての役割を担い、MVも2本立て状態で公開されている。詳細については動画を公式チャンネルにて観ていただくとわかりやすいかもしれないが、つまるところ今回のシングルでは衣装やメイクなども“警察と怪盗”の両パターンが用意されており、ひいてはその後の全国ツアー<太陽と月光の反響音>も、一部公演を除いて基本的には各地2デイズ体制で開催されたのである。


そして、今回のツアーファイナルとなった東京では9月6日に“警察編”の公演が行われ、翌7日には“怪盗編”の公演が行われることに。警察を正義としての太陽、怪盗を陰なる者としての月光になぞらえつつ、反響音をレゾナンスと読ませるこのスタイルは、フロントマンの咲吾(Vo)から聞いたところによるとアニメ『名探偵コナン』の映画版タイトルを意識した、ある種のオマージュなのだそう。

かくして、場内に月夜の晩の光景が生み出される中、舞台上へと姿を現したのはBabyKingdomというよりも、厳密にはMV「FAKE in PHANTOM」の主人公であった“怪盗・べびきん”。メンバー全員がアルセーヌ・ルパン風のマントを現代的にアレンジした衣装を纏い、咲吾に至ってはシルクハット&チェーン付眼鏡を装備していたほか、毎回コンセプトごとに動物系キャラに扮しているベーシスト・もにょは、怪盗つながりの『キャッツ♥アイ』から連想しての猫メイク姿で登場したのだった。既にツカミは万全。

しかし、それでも飽き足りないのが彼らの性分なのだろう。なんと、咲吾は神妙そうに「……バラード曲です、聴いてください」と一言添えてから1曲目の「めっちゃアーメン」を叙情的な新アレンジで歌い出し、ワンフレーズごとに涙を拭うしぐさや感極まった様子をみせたものの、途中からは本来のアッパーなアレンジに戻るという茶番……もとい、大胆なフェイントをいきなり仕掛けてみせたのだ(笑)。

「渋谷PLEASURE PLEASUREにお集まりの“ばぶりーず(べびきんのファンを指す愛称)”の皆様、大変長らくお待たせしました。俺たちが怪盗・べびきんです! よろしくお願いします。というわけで、「あ! パトカーだ!!!」」(咲吾) 

この咲吾の言葉に対し、場内からすかさずあがったのは揃いも揃った「逃げろ!!!」の大きな声。バンド側と観衆側の隙なき連係プレイが口開けとなり、ここからはシングル「ハイ逮捕/FAKE in PHANTOM」に収録されていたカップリング曲「ちょうだい!君の心臓」が演奏されたのだが、この場面で聴けたサウンドの完成度にこそ、冒頭において前述したBabyKingdomの“頭脳は凝り性でヒト癖ありの音楽集団”たる所以が凝縮されていたと言っていいだろう。見た目こそポップでファニーなヴィジュアル系だとしても、音や演奏を聴けば彼らの正体は意外なほどに職人肌なミュージシャンそのもの。


特に、この「ちょうだい!君の心臓」は往年の大野雄二氏の作風を彷彿とさせるスリリングな曲調がひとつの特徴で、これを作曲するのにあたってはギタリストにしてメインコンポーザーでもある志記が、実際に「ルパン三世のテーマ」を作った大野雄二氏の各作品をじっくりと聴き込み、解析と研究を重ねたうえでBabyKingdomとしての新しいアプローチを開拓していったのだとか。(※それと同時に、今回のシングル制作にあたっては「名探偵コナン メインテーマ」を作った大野克男氏の曲も同じく深堀りしたそう)

表題曲のみならず、カップリングでもぬかりなく完璧な姿勢を貫くBabyKingdomは実に生真面目なバンドで、当然そのスタンスはライヴでの演奏ぶりにも如実に滲んでいた。たとえば、「ちょうだい君の心臓」でベーシスト・もにょがみせた指さばきは熟練技と呼んで良い練度であったし、「PRECIOUS ROSE」でメタル好きなドラマー・虎丸の個性が炸裂していたリズムワーク、「月夜のシンデレラ」で美しい旋律を丁寧に歌いあげていった咲吾のボーカリゼイション、「さらば!自称の正義マン」でタッピングをまじえながら志記が弾き倒したギターソロにしても、彼らは今年で7周年を迎えたバンドなだけあって、とにかく地に足の着いた音を出すことが出来る面々だと言える。

とはいえ、BabyKingdomにとっての音楽的実力とはあくまでも基盤でしかないのも事実。強固な土台の上に面白いコンセプト、派手なヴィジュアル、楽しいライヴパフォーマンスを積み重ねることで、彼らは唯一無二なMUSIC THEME PARKとしての燦然たる輝きを放ち出す。また、某千葉方面や某関西方面の巨大テーマパークとは規模こそ違えど、この場に足を踏み入れた者は誰もが童心に帰って笑顔になれるのも大きな特色。 

観客たちが俗にいう横モッシュをみせた「首領!BURACO」、アグレッシヴな曲調とシンクロするかたちで客席にヘッドバンギングの嵐が吹き荒れた「MUDDY CANDLE」なども含めて、無心に没頭していた人々はそれぞれがその時間、その瞬間を満喫して楽しんでいたものと思われる。


そんな、ばぶりーずたちのトキメキと喜びに満ちたハートを華麗に盗むべく。怪盗・べびきんが今宵の本編最後に放ったのは「FAKE in PHANTOM」。ファンク要素やジャズ要素をふんだんにちりばめながらのゴージャスなこの1曲が、ツアーファイナルをしめくくるのにまたとない曲であったことは疑う余地もない。

なお、BabyKingdomにとっては恒例の「延長営業!」という、盛大なばぶりーずたちからのアンコールがかかった際には、メンバーが再登壇する前に映像による告知がなされ、11月1日に新たなるアトラクション「PENGUIN DIVE」を発売すること、さらにそれにともなう冬のワンマンツアー<WHITE STEAM>が開催され、そのファイナルは12月12日にZepp Shinjukuにて迎えることが一気に情報解禁となった。


「まずは延長営業、ありがとうございます!映像を観ていただいたとおり、11月1日には『PENGUIN DIVE』という新アトラクションが出ることになりまして、今度のコンセプトはホワイトスチームパンクです。(中略)さらに、次のツアーはファイナルがZepp Shinjukuということでね。前にやったZepp Divercityに次いで2度目のZeppですが、今年一番の大勝負だと思ってます! でも、必ず埋めます!!」(咲吾)

この宣言からのアンコールはほぼ一瞬で、ラストの「HeartBeat」までは駆け抜けていくような体感であった。もっとも、それはBabyKingdomにとっても同じことだったようで、咲吾は「まだ終わりたくなーーい!!」と叫んだ後にこう語りだした。

「あともう1曲、つきあってくれますか?『PENGUIN DIVE』は生まれながらに飛べない鳥と呼ばれるペンギンの歌です。でも、本人にとっては海の中が大空やと思って飛んでるかもしれないし。誰だって、自分の世界で幸せになれればそれでいいからね。親ガチャ失敗とか今はいろんな言葉がある時代やけれども、みんなには自分の世界の中で満足のいく人生を送って欲しいと思って書いたのが『PENGUIN DIVE』。そして、それより前に書いた『Babybird』も同じように大空を羽ばたこう!という曲で、これから『PENGUIN DIVE』のライバルになっていく曲かもしれないと自分では思ってます。これからこの曲もまた大切にしていくという決意を込めて、最後に聴いてください!」(咲吾)

ポジティヴなエネルギーに満ちた「Babybird」を歌い終え、それでもまだ気持ちがあふれてしょうがないのか、咲吾はこの夜さらに以下の言葉も残すこととなった。


「MUSIC THEME PARKっていうのは、今までになかったものです。何ソレ?って言われ続けてきたものが、誰もが知っているような言葉に変わる時が、きっとBabyKingdomの存在やMUSIC THEME PARKがみんなに知れ渡る時なのかなと思います。そして、BabyKingdomは赤ちゃんの王国ではなく、ずっとずっと未発達の王国という意味です。これからも進化していく僕らのMUSIC THEME PARKに遊びに来てくれて、今日は本当にありがとうございました。(中略)また何時でも遊びに来てください!」(咲吾)

BabyKingdomの生み出す空間にしかない、たったひとつの真実を得たいなら。とにもかくにも“現場”に臨することをおすすめしよう。もちろん、MUSIC THEME PARKの扉が閉まることはない。BabyKingdomはいかなる時も我らを歓待してくれること必至だ。

取材・文◎杉江由紀
写真◎菅沼剛弘

リリース情報

17th maxi single『PENGUIN DIVE』
2023年11月1日(水)3type リリース

ツアー情報

<BabyKingdom winter oneman tour 『WHITE STEAM』>
2023年
11月11日(土)兵庫・神戸 VARIT.
11月12日(日)京都・MUSE
11月14日(火)広島・SECOND CRUTCH
11月18日(土)福岡・INSA Fukuoka
11月23日(木・祝)大阪・MUSE
11月26日(日)愛知・名古屋 Electric Lady Land
12月2日(土)神奈川・新横浜 NEW SIDE BEACH!!
12月3日(日)千葉・柏 PALOOZA
12月9日(土)宮城・仙台 ROCKATERIA
*TOUR FINAL*
12月12日(火)東京・Zepp Shinjuku

公演共通、開場・開演時間(※ファイナルを除く)
【開場 / 開演】17:30 / 18:00
ファイナル公演、開場・開演時間
【開場 / 開演】17:00 / 18:00

チケット情報(※ファイナル公演を除く)
【前売/当日】¥5,500/¥6,000(税込)※Drink代別
【e+プレオーダー】2023年9月19日(火)12:00~2023年9月25日(月)23:59【一般発売】2023年10月10日(火)12:00~

ファイナル公演・チケット情報
【前売/当日】¥6,000/¥6,500(税込)※Drink代別
【e+プレオーダー】2023年10月24日(火)12:00~2023年10月30日(月)23:59【一般発売】2023年11月10日(金)12:00~

ライブ情報

<BabyKingdom HELLOWEEN ONEMAN LIVE『☆べびはろ☆2023』>
【日程】2023年10月31日(火)
【会場】埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
【開場 / 開演】17:30 / 18:00
【前売 / 当日】¥5,500/¥6,000(税込)※Drink 代別
【e+プレオーダー】2023年9月19日(火)12:00~2023年9月25日(月)23:59【一般発売】2023年10月10日(火)12:00~

<BabyKingdom Xmas ONEMAN LIVE『べびきんクリスマス会 2023』>
【日程】2023年12月25日(月)
【会場】東京・渋谷 WWW X
【開場 / 開演】17:30 / 18:00
【前売 / 当日】¥5,500/¥6,000(税込)※Drink 代別
【e+プレオーダー】2023年10月24日(火)12:00~2023年10月30日(月)23:59【一般発売】2023年11月10日(金)12:00~


この記事をポスト

この記事の関連情報