【ライブレポート】スラッシュと共謀者たち、大阪・東京が熱狂

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スラッシュfeat.マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズが、約5年ぶりとなるジャパン・ツアーを実施中だ。そのツアー初日となった3月2日、大阪・なんばHatchでの公演時の写真が到着。そこに収められたメンバーたちの表情からも、バンドが現在とても良好な状態にあり、同公演自体も盛況に終わったことがうかがえる。そして3月4日、彼らは東京公演の第一夜を迎えた。会場はZepp DiverCity Tokyo。このバンドにとっては初めての場所、ということになる。

結論から言えば、約2時間20分に及ぶそのステージは、実に濃密でテンションが途切れることのない、きわめて充実度の高いものだった。3月5日にも同会場での公演が行なわれるだけに、この第一夜のセットリスト全体をこの場に掲載することは控えておくが、この先には実際の演奏曲についていくつか具体的な記述もすることになるので、あらかじめご了承いただきたい。



この日の開演時刻は19時。オープニング・アクトを務めるMELT 4の演奏は、開場時間中にあたる18時半にスタートした。自らを「日本のヘヴィ・メタル・バンド」と称する彼らのポジティヴで勢いのあるライヴ・パフォーマンスには、このバンドをすでに認知しているか否かを問わず、誰かれ構わず巻き込んでいく力がある。そして実際、この夜の彼らも、メイン・アクトが登場する前に会場内に熱を充満させておくという役割を充分に果たしていたといえるだろう。出番前にスラッシュ本人が彼らの楽屋を訪ねてきた、と嬉しそうに明かすさまにも微笑ましいものがあった。

MELT 4による30分間の熱演を経て、ふたたび場内が暗転したのは午後7時25分のこと。オープニングSEが流れる中、メンバーたちが薄暗いステージ上で配置に就くなか、ひと目でスラッシュだとわかるシルエットが見えただけで歓声が高まりをみせる。その瞬間からアンコールに至るまで、この夜の総演奏曲数は22曲。当然ながら今回の来日公演は2022年に発表されたこのバンド名義での現時点での最新作『4』に伴うツアーの一環としてのものであり、そのうち7曲をこの作品からの楽曲が占めていた。ステージの背景を覆う巨大なバックドロップも同作のアートワークと共通するものだ。









ショウはスラッシュfeat.マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズとしての4枚のアルバムからの楽曲のみならず、スラッシュの個人名義による作品や、彼がレニー・クラヴィッツと共作した「オールウェイズ・オン・ザ・ラン」(1991年発表のレニーのアルバム『ママ・セッド』に収録。余談ながらスラッシュと彼はハイスクール時代の同級生という間柄でもある)、さらにはガンズ・アンド・ローゼズの「ドント・ダム・ミー」も披露された。こうした楽曲ではマイルス・ケネディではなくベーシストのトッド・カーンズがリード・ヴォーカルを担当するのだが、そのトッドは「ドント・ダム・ミー」が演奏される際には「(スラッシュが)1991年以来プレイしてこなかった曲」と紹介していた。この楽曲はその年に発表されたガンズの『ユーズ・ユア・イリュージョンI』に収録されているが、改めて調べてみても、過去にガンズがライヴで演奏したとの記録は見当たらない。ちなみに大阪公演では同じくガンズの楽曲の中からこの曲ではなく「バッド・アップルズ」(こちらは1991年当時に二回ほど演奏されているようだ)が披露されているが、今回のショート・ツアーの最終公演となる東京での第二夜に、どちらがセレクトされることになるのかも楽しみなところだ。また、そのどちらでもない曲が登場する可能性も皆無とはいえまい。



とはいえ、さすがにこのバンドでのアルバムが4枚も世に出ている現在、ガンズの楽曲は彼らのライヴにおいて、もはやあくまでエクストラの要素にすぎない。確かにこのバンドが動き始めた当初にはガンズの楽曲をライヴの軸にせざるを得ないところがあったが、それが最小限に抑えられた現在のステージでも不足が感じられないのは、このバンドとしての定番曲が着実に育ってきたことの証しだろう。





ただ、いざ何かのカヴァーをやろうということになれば、自分たちなりの解釈で質の高いものを提供できるのがこのバンドでもある。アンコール時に披露されたエルトン・ジョンの「ロケット・マン」のカヴァーは、まさにその好例だった。なにしろスラッシュがペダル・スティールを操り、ドラマーのブレント・フィッツがキーボードを奏でるという想定外の光景を目にすることができるのだ。完全無欠の歌い手と呼びたくなるマイルス・ケネディによる、原曲のイメージを重んじた丁寧な歌唱も印象的だった。



こうしていくつかショウの断片についてお伝えしただけでも、充実度の高いステージだったことがおわかりいただけるはずだし、本日の東京公演第二夜に向けての期待感も当然のごとく高まってくる。是非この機会を逃さずにおいて欲しい。今夜は大阪公演に続き、花冷え。がオープニング・アクトとして出演する。彼女たちがステージに登場する18時半までに会場に足を運ぶことをお勧めしておきたい。



最後にひとつだけ付け加えておくと、本日、スラッシュ自身のXのアカウント上にて、3月8日に何らかの重要事項が発表されるらしきことが告知されている。こちらについても注目しておきたいところだ。

文◎増田勇一
写真◎Satoki Demoto

◆スラッシュfeat.マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズ公演情報
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