いかにもアメリカな、Spacehogオデッセイ

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いかにもアメリカな、Spacehogオデッセイ

 

メンフィスがElvisの本場というのは周知の事実。だが英国から逃げてきたSpacehogも、このElvis王国では一目置かれる存在だ。英国はリーズ出身のスタイリッシュなグラムロック・バンドは、最新アルバムをメンフィスでレコーディングしたのをきっかけに人気者となり、市長から栄誉賞をもらったほどなのだ。

これほどの歓待を受けてほんとにうれしいよ」と言うのはSpacehogのドラマー、Jonny Cragg。「リーズ市長も見習ってほしいくらいさ。オレたちの存在さえ知らないんだからね!

Craggとバンドのメンバーにとって、サザン・ホスピタリティとして知られる南部の温かさは身にしみてありがたかった。というのもアルバム『The Hogyssey』の制作は、必ずしも楽しい“宇宙の旅(A Space Odyssey)”とはいえなかったからだ。

それどころか、がっくりくることばかりだったんだ」とCraggは振り返る。レコーディングが2度お流れになったSpacehogはSireを去り、ニューヨークのインディーレーベル、Artemisに期待をかけた。そこからテネシー州へ回され、渋々ながらプロデューサーのPaul Ebersoldと組むことになる。BowieQueenといった華麗なミュージシャンに傾倒するバンドにとって、Sister Hazelや3 Doors Downを手がけたEbersoldは、がっくりくるほど地味に思えた。

みんな反対だったんだけど、やってみたらすごくうまくいったってことだね。オレたちの良さを引き出してくれたんだ。かなりストレートなプロデューサーで、ストレートなマテリアルのほうがずっといいというタイプだった」とCraggは言う。「お遊びで鼻歌程度のものをやって、人が聴いてくれると思ったら大間違いなんだよ

つまり、Spacehogの'98年の2ndアルバム『The Chinese Album』のような、高尚だがまとまりのない大作にはおさらばするということだ。このアルバムは'95年のデビューアルバム『Resident Alien』ほどの成功には至らなかった。『The Hogyssey』には全体にEbersoldのストレートなタッチが出ているというものの、Spacehog独特の味はしっかり残っている。ギタリストのAntony LangdonとRichard Steelによる鈍重なリフも、Bowie風の芝居がかったヴォーカリスト、Royston Langdonも健在だ。

それにあの生意気な態度も相変わらずで、『2001: A Space Odyssey/2001年 宇宙の旅』のテーマ曲「ツァラトゥストゥラはかく語りき」を短縮してロックアレンジにしたり(訳註:この曲はかつてElvisのショウのテーマ曲でもあった)、“This Is America”ではLangdonが「自由の女神のヴァージンはオレがもらった」と歌ったりしている。

Langdonといえば、このところ女優のLiv Tylerとつきあっている。ということは彼らのギグに、パパのSteven(Aerosmith)が現れても不思議ではない。こんな有名人と一緒にステージに立てるとは、Spacehogも感慨ひとしおだろう。なにしろその昔、Craggはニューヨークのエスプレッソバーの地下室で、シャベルを持ってドブネズミ退治をしていたのだ。当時在籍していたバンド、Hollow Menはメジャーレーベルと契約したものの解散したため、Craggは音楽に見切りをつけ、ドブネズミ退治の仕事に乗り出そうと考えていたのである。

うん、7、8匹はやっつけたよ」と彼はお茶目に笑う。もっと退治しようとがんばっていたところに、同郷リーズのAntony Langdonから声がかかり、2人は一緒に音楽をやろうと決める。Antonyは英国から弟のRoystonを呼び寄せ、Craggも友人のSteelを誘い、Spacehogが誕生した。

現在は4人ともニューヨークに住んでいる。英国のメディアに叩かれた彼らにしてみれば雲隠れなのだ。Craggは言う。「英国でちゃんとした評価をしてもらえる日を待ってるんだ。でもそれって叶いそうもないよね。だって、アメリカなんて今も大英帝国の一部みたいに思われてるところもあるし

それでも、Spacehogは期待しながら、OasisBlack Crowesのツアーでオープニングを務める予定だ。このツアーではロック界でも最も過激な兄弟パフォーマンスが火花を散らすことになる。NoelとLiam Gallagher、ChrisとRich Robinson、そしてLangdon兄弟。これほどのラインアップなら、一組くらいは血みどろの果し合いになりかねない。

俺だってびくびくものだよ」と、にやっとするCragg。「なにしろLangdon兄弟はGallagherやRobinson兄弟に負けず劣らず過激だからねぇ。違いはまだそれほど有名じゃないってことだけさ

By Dan Leroy/LAUNCH.com

 

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