聴く者の心を鼓舞する純粋なロックンロール・アルバム

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聴く者の心を鼓舞する純粋なロックンロール・アルバム

北アイルランドから来たポップでイキのいいガキンチョ・パンク・バンド。
'94年に彼らが登場した時の鮮烈な印象ゆえ、いまだにASHに対してこんなイメージを抱いている人も多いかと思う。

しかし、あれから7年。その間のASHは瑞々しいメロディとストレートなロック・サウンドを詰め込んだ1stフル・アルバム『1977』で“恐るべき十代”を印象づけ、'98年の2ndアルバム『ヌー・クリア・サウンズ』では深みのあるダークなトーンも披露し、もはや“ガキンチョ”とは言わせないだけの成長を窺わせていた。

そして今年4月。彼らは約3年ぶりとなるニュー・アルバム『フリー・オール・エンジェルズ』を満を持して発表したのだ。これがもう、本当に素晴らしい作品なのだな。
前作を覆っていた暗い影は一掃され、夏の陽射しのようにキラキラと輝くメロディがタイトなギター・サウンドに乗せて鮮やかに広がる、まさに胸キュンもののロック・アルバム。

彼らが第一のピークを迎えたことを宣言する傑作を完成させたASHにインタビューした。


すごく素敵な“夏のアルバム”だよね

最新シングル

「BURN BABY BURN」

SME Records SRCS-2443
2001-04-11リリース

1.Burn Baby Burn (Radio Version)
2.SUBMISSION (ARTHUR BAKER REMIX)
3.SHINING LIGHT (RADIO VERSION)
4.THINKING ABOUT YOU
5.FEEL NO PAIN

最新アルバム

『Free All Angels』

SME Records SRCS-2442
2001-04-18リリース

1.WALKING BAREFOOT
2.SHINING LIGHT
3.BURN BABY BURN
4.CANDY
5.CHERRY BOMB
6.SUBMISSION
7.SOMEDAY
8.PACIFIC PALISADES
9.SHARK
10.SOMETIMES
11.NICOLE
12.THERE'S A STAR
13.WORLD DOMINATION
14.WARMER THAN FIRE
15.GABRIEL


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――3年ぶりのニュー・アルバムだけど、前作がちょっとダークなアルバムだったせいもあって、3年のブランクを心配していたファンも多いと思うんだ。

ティム・ウィーラー(Vo,G)(以下、ティム):
確かに『ニュークリア・サウンズ』にはダークなヴァイヴがあったよね。それは『1977』の成功で周囲が騒がしくなって、いわゆる業界チックな世界に疲れ果てちゃったからなんだ。

マーク・ハミルトン(B)(以下、マーク):
成功のあとに訪れる過酷な状況ってやつだね(笑)!

リック・マックマーレイ(D)(以下、リック):
だから『ニュークリア・サウンズ』は、ダークネスとマッドネスの産物なんだ。

ティム:
それと“怒り”。そういう色々な感情があのアルバムに反映されているんだ。それに、どこかで“カッコいいアルバム”を作ろうとしてたような気もするしなぁ(笑)。

――つまりフラットな状態でアルバムを制作に臨んだわけではなかったことだね。

ティム:
そうなんだよ。それで、アルバム発表後のツアーを終えてから、僕達はたっぷりと休みをとることにしたんだ。また自然に曲が生まれてくるような状態になるまでね。

――じゃあ、そういう状態を取り戻したのはいつ頃だったの?

リック:
2000年の初めぐらいだね。4人それぞれが曲を持ち寄って、ティムの両親の家で曲作りを始めたんだ。30曲ぐらいだっけ?

ティム:
いや、60曲は書いたよ。レコーディングまで持っていったのが30曲だよ。

――60曲!? 凄いね。じゃあ、本当にいい状態を取り戻せたんだね。

ティム:
うん。休むことで充電できたから、曲作りやレコーディングに臨むのが楽しくて、幸福感でいっぱいだった。

――曲作りはティムが中心になってるけど、彼が書いてきた曲をメンバーはどう思った?

マーク:
嬉しかったよ~(笑)。ホント、素晴らしい曲ばっかりだったんだ。

リック:
ティムが再び“ポップ・ソング”を書いたことが何よりも素晴らしかったよな。

シャーロット・ハザリー(G)(以下、シャーロット):
そうね。『ニュークリア・サウンズ』の時はみんなの感情がポップじゃないものを求めてたような気がするけど、今回は正反対だったわよね。

ティム:
だから、スタジオに入る時にはもう“ポップでアップビートなロックにしよう”っていう方向性がはっきりしてたんだ。

――で、実際のレコーディングはスペインでやったそうだけど。

ティム:
そう、去年の9月から10月にかけて6週間、スペインでやった。イギリスとは違う、リラックスできて夜は騒げるような、開放的な環境に自分たちを置きたかったんだ。

マーク:
それにスペインのほうがスタジオ代も安上がりだし(笑)。

リック:
飲みに行くのも楽しいし(笑)。イギリスだと“落ち込んだから”飲みに行くって感じだけど、スペインなら“楽しいから”飲みに行くっていう感じなんだよ(笑)。そんな感じで、リラックスして、腰を据えて自分たちのペースでレコーディングできたのは本当に良かったと思う。

――そうした開放的な空気がアルバム全体から感じられる仕上がりだよね。なんというか、太陽の光がキラキラ輝いているような。

マーク:
そうそう。大きな窓から光が降り注いでくるような感じなんじゃないかな。

ティム:
まさに!(笑)すごく素敵な“夏のアルバム”だよね。繰り返しになっちゃうけど、やっぱり良い休みをとれたこと、しっかり準備ができたこと、そしてリラックスしてレコーディングに没頭できる環境を作れたことが大きかったよね。で、あらゆるビジネスから自分たちを切り離した上で、自分たちの原点を再確認したアルバムが、この『フリー・オール・エンジェルズ』だと思ってるんだ。

――うんうん。その原点というのは、瑞々しくポップなメロディ、ピュアなイノセントな歌詞、力強いロック・サウンドということになるのかな?

ティム:
そのとおり。特に今回は“素晴らしい曲が詰まったアルバム”を目指したし、みんなの心にストレートに響く“いい曲”がいっぱいの力強いアルバムが作れたと思う。大それたことを言っちゃえば、『ネヴァー・マインド』ニルヴァーナ)のようなアルバムを、ね。

――それくらいの自信作ってことだね。で、その“いい曲”を象徴する楽曲が、1stシングルにもなった「シャイニング・ライト」。もう誰も反論できないくらい素晴らしい、永遠の青春ロックじゃない?

リック:
イェ~イ!まさに“これだ!”っていう、ミッド・テンポの素晴らしいピュア・ポップだよね。ティムが初めてこの曲を聴かせてくれた瞬間に、1 stシングル即決って感じだったんだよ。

シャーロット:
でも、今回はこの曲も含めて最低8曲はシングル・カット可能な曲があるわ。前作は2曲ぐらいしか見当たらなかったんだから、これは大いなる成長ね(笑)。

ティム:
そう、僕達は成長したんだ。そして、4人の間に絆が生まれ、しっかりとバンドとして固まった感じなんだよ。

シャーロット:
だからこそ、こんなに力強くポジティヴなアルバムが作れたのよね。このアルバムが聴く人の気持ちをポジティヴにさせられたらいいと思うし、青春の真ん中を生きている子たちの力になれたら、もう最高なんだけどな。

ティム:
そうなってほしいよね。解放されたいと願ってるみんなに向けて、“頑張って闘え!”って言いたいんだ。このアルバムにはそうしたポジティヴなメッセージを込めたつもりだ。“自由を!君達の心に!!”ってね。それが『フリー・オール・エンジェルズ』の意味さ。

――O.K. 聴く者の心を鼓舞する純粋なロックンロール・アルバムだよね。

ティム:
うん。9年かけて純粋に抽出したファイン・モルト・ウイスキーみたいな、ね。

――しかもその味は抜群に爽やか。

ティム:
そりゃ、いいね。もう、とことん酔っぱらわせちゃうからね~(笑)!

取材・文●染野芳輝

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