ビョーク来日公演<昭和女子大学人見記念講堂>レビュー

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12月2日、会場である昭和女子大学人見記念講堂に着く前から、異様な雰囲気だった。

人見記念講堂へ向かう道の途中で、少なくとも10人以上が「チケット譲ってください!」と書いたダンボールを持って、立ち続けている。ダフ屋もまた、今日は仕事あがったりという顔をして途方にくれていた。今回のコンサートがどれだけプレミアムなものかを窺わせた。

ライヴは、オープニングアクト+Bjorkx2の3部構成。

オープニングアクトは、Bjorkの最新作『ヴェスパタイン』にプログラミングで数曲参加し、電子系の楽器のサポートをするMatmos。彼らははり治療機を改造したような楽器や、鳥かご、風船などを使って演奏するなど、ミュージックアートよりなパフォーマンスを見せた。

休憩後、オーケストラが入場。ステージと客席の間にはピットがあり、オペラの舞台のようにオーケストラがはまっている(当日のオーケストラは、東京フィルハーモニー交響楽団だった)。そして、オーケストラが音合わせをはじめる。指揮者サイモン・リー登場。暗転後、中心に置かれた椅子に座っているBjorkがオルゴールを回し始めると、天井から光があたって同時に白い羽が降ってくる……まるで舞台や映画の1シーンのようにBjorkが登場。それから、演奏の途中にアイスランドの民族衣装をまとったコーラスチームとMatomosが登場する。

歌も演奏も曲も音も完璧なのだが、観客はこれらの流れの中で相当、当惑したに違いない。現代アート、そしてオーケストラ、舞台のような演出。観客は黙って座って聴き続けている。どのようにして聴いたらよいのか分からないから、とりあえずお行儀よく座っているという感じなのだ。

その後休憩をはさんで、第2部もそのままの雰囲気で進行する。第2部も半ばになって、「Hyper Barrad」を演奏し始めたころから観客は座っていることに耐えられなくなる。頭でリズムをとっている人が増えてくる。そのうち、ちらほらと立って踊り始める。最後には全員が踊ることになり、人見記念講堂はダンスホールになってしまった。これまでじっと動かずにこらえていた体が、音に反応する。もうそうすると止まらない。そのままアンコールに突入。

Bjorkはオールラウンドに完璧だった。オーケストラ、現代音楽、テクノ、ポップス、アイスランドの民族音楽。すべてはBjorkのふところの中で昇華され、完璧な演奏とともに表現された。人見記念講堂はそういった表現を伝える空間としては最適であり、今回の公演がいかにプレミアムなものであるか改めて感じることができた。見ることができた人は非常にラッキーだったと思う。
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