グラストンベリー・フェスティヴァルの歴史と今年の見所

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日本のフジロックもそのスタイルの参考にしたといわれている、英グラストンベリー・フェスティヴァル。1970年にスタートしたこのフェスティヴァルは、数多くのフェスを擁するUKの中でも、規模、評判、出演者のラインナップなどを総合したうえで「世界最高のフェス」として名高い。

グラストンベリーがこれほど高く評価されているのは、単なる週末の音楽イベントではなく、会期中はここが一つの「生活をともにする場所」として機能しているから。もともと、アーサー王伝説が色濃く残る地域であり、スピリチュアルな空間としても知られるグラストンベリー。正しくは、UKの南西部にあたるサマーセット州グラストンベリーにある、ピルトン村で開催されている。普段は農園&牧草地として使われている約900エーカーもの土地は(それゆえ近年は10年に一度くらい、土壌保護のために開催されない年もある)、この巨大フェスの主催者であるマイケル・イーヴィス氏の私有地。ここが、毎年6月最後の週末には約20万人もの人が集まる巨大な共有空間へと変貌する。人々はテント生活でアウトドア体験をし、自然食やエスニック・フードからアルコールなどの食料品、マッサージなどのサービスや自然素材の商品などが並ぶショップまで、様々な露店が軒を連ねる。

 
ステージも、いわゆる“ロック”だけを楽しむ大小のステージだけではない。サーカスからキャバレー、演劇場や映画上映、ジャズやダンス、アコースティックからキッズ・コーナーに至るまで、様々なタイプのものがある。そういったスペースでは多彩な催しが行なわれ、観客のどんなニーズにも痒いところに手が届くように応える。ザ・リバティーンズのカールも1歳の頃に親に連れられてグラストンベリー・フェスに行ったのが最初の音楽体験だったと以前話していたが、そうやって赤ん坊から老人まで、老若男女を問わず、その「場」にいることを祝福できる場所──それこそ、グラストンベリー・フェスティヴァルを貫くスピリットだ。

34回目となる今年も、すでにいくつもの話題が音楽好きの間では飛び交っている。個人的にまず興味があるのは、「ジョン・ピール・ステージ」が新たに設けられたこと。これは、昨年まで「新人テント」と呼ばれていたステージが改名されたものだが、ジョン・ピールとは他ならぬ、昨年急逝した英国の超有名ラジオDJの名前だ。ジョン・ピールはパンクの時代から新人や新たなサウンド傾向を発掘し国営ラジオで流し続けたことで知られ、たとえばセックス・ピストルズが放送禁止になった際も擁護し続けたり、英国でいち早くピクシーズニルヴァーナを評価したり、モグワイホワイト・ストライプスを「発見」して大きなシーンを作り上げていくきっかけを作った貢献者。国営放送のDJでありながら常に先鋭的であり続け、保守におもねることを拒否し続けたその姿勢こそ、グラストンベリーのスピリットに通じるものだ。
また、大きな話題になったのが最終日の大トリを務めるはずだったカイリー・ミノーグの突然のキャンセル(病気治療のため)と、その代役探し。ストーン・ローゼズの再結成がウワサされたり、オファーされたザ・キラーズが「まだ時期尚早」と辞退したりと、情報は二転三転。結果的に大トリがベースメント・ジャックス、その前にプライマル・スクリームが参加することが決定した。

今年は他にも、出演バンドたちには見所が多い。その昔、'95年のグラストンベリーが「ブリット・ポップ・バンドの総特集」的なニュアンスがあったのと同様、今年は現在UKを沸かせる話題の新人たちがこぞって総登場する。また、今年の日本のフェスには出演予定のないベイビー・シャンブルズブリティッシュ・シー・パワーなどの現在の姿も、この機会にぜひチェックしておきたいところだ。

文●妹沢奈美
写真●DVD『グラストンベリー・アンセムズ ザ・ベスト・オブ・グラストンベリー1994-2004』(東芝EMI)より

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