中村 中の生き様がここに。衝撃の1stアルバムを赤裸々に語る<INTERVIEW>

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――この曲のピアノ、オルガンのアレンジがまたすごくよくて。この歌の決意にいい追い風を送り込んでくれてますよね。

中村:そうですね。アルバムはロック・サウンドですけど、実はピアノが一番リードしている楽器なんです。私が元々ピアノ弾きということもあってか自然とこうなりました。

――この歌の歌詞ですごいなと思ったのが<いつか夢見た あの日の僕が 明日の自分と違っていても>というくだり。夢見た自分になれなくても、それでも間違いじゃないとこの歌は肯定している。夢を叶えるためにがんばれとエールをおくる歌は多いけど“描いてた自分になれなくても間違いじゃない”というエールの送り方は中村さんならではというか。珍しいと思うんですよ。

中村:2回目です。そういうことを言われたのは(笑)。実は「私の中の「いい女」」でも同じようなことを言われたんです。あの曲は応援歌として書いたんですけど、一言もがんばれなんて書いてないんですよ。あの曲もいろいろダメになっている自分を見せていて。そこから“がんばれ”じゃなくて、今の自分は普通のところよりも落ちてるところだよねって気づかせてあげる。今がんばれない人に“がんばれー”って言うと傷つくんですよね。

――前を向くのも辛い時期ってありますよね。

中村:だから、今君がいるところは普通のとこよりも落ち込んでるところだよとか、傷ついてることを肯定してあげる。そこに気づかせてくれるから勇気が出るってことを前に言われたことがあって。それって、今おっしゃってくれた部分も一緒だと思って。なりたい自分になれなくてもそれでいい、なにもしないよりはって。今考えてびっくりしたんですけど、私はそういう性格なんだなって(笑)。がんばれって、温かい言葉にも凶器にもなり得るんですよ。どうがんばっていいか分からない人に対して、どんなことを言ってあげればその人ががんばれるんだろうなって思ったときに、こういうことなのかなって、今思いました!

――うんうん。そこが中村さんの作品が持ってる励ましてないのに聴き手を励ましてしまうパワーの根源ですよね。そこはこのアルバム、一貫してあると思うんです。

中村:「友達の詩」も書いたときは自分の心に近過ぎてすごく怖かったんです。だから、おっかながって歌ってたんですよ。ちょうどこの歌を歌うことで、訊かれたくないことも訊かれてしまうことが増えてきて。どんよりした気持ちになってたんですけど、聴いて下さった方が“励まされました”とか言ってくれたんです。ああー、この曲にそんな力があるんだって、それで気づきました。そういう方がいるってことで、この歌とどう自分が向き合えばいいのかがだんだん分かっていったんです。

――中村さんにとって音楽は唯一、自分のリアルを吐き出す場所だった。そんな個人的なところから始まった音楽が聴き手に届いて大きくなり、その聴き手のエネルギーが宿ったものがまた中村さんに返ってきて中村中というアーティストを育てている。そんな気がしました。今の話を聞いて。

中村:ホントそうですよ。すごい大きな力になって戻ってきます。こんなにエネルギーをもらってもよいのだろうか? って思ったりしますけど(照笑)。でも、この『天までとどけ』のなかで迷ってた時期は間違いじゃなかったんだと思えましたね。

――アルバムは元旦というおめでたい日に発売され、2007年は舞台もある中村さんですが。今後の夢は?

中村:夢とか見てる場合なのかなぁ…(一同爆笑)。そうだな、未来に私がちゃんといることですね(微笑)


取材・文●東條 祥恵

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