『キッドA』『アムニージアック』を経てレディオヘッドのたどり着いた場所

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『キッドA』『アムニージアック』を経てレディオヘッドのたどり着いた場所
大傑作アルバム『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』をメンバーが語る



日本のオリコンでは初登場2位、米国のビルボードでは3位、そして本国イギリスでは
ぶっちぎりの1位と好調な滑り出しを見せたRadioheadの最新アルバム『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』
サウンドはエレクトロを消化し、バンド・サウンドへの回帰を見せた。
スタジオ・セッションを中心に短時間で終了したレコーディングから生まれたのは
シンプルかつ洗練された旋律だった。
評論家やライターの中でも、過去最高傑作に推す声が少なくないこの、最新アルバム。
メンバー自身が語る『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』とは?

トム・ヨーク「今回のアルバムに関してはあんまり考えないで作ったんだよ」

最新アルバム


『Hail To The Thief』

東芝EMI
TOCP-66185 2,548(tax in)

01.2+2=5
02.Sit Down Stand Up
03.SOME KIND OF MONSTER
04.Backdrifts
05.Go To Sleep
06.Where I End And You Begin
07.We Suck Young Blood
08.Gloaming
09.There There
10.I Will
11.Punch-Up At A Wedding
12.Myxomatosis
13.Scatterbrain
14.Wolf At The Door




BARKSニュースでRadioheadを追う

●『Hail To The Thief』のタイトルの意味は?
「アルバムのタイトルは、僕らにとって世界を発見して握手を交わすってことなんだ。撤退してどこか穴倉に隠れて、うなり声を上げて非難するというよりも」

●米国のフェスでがんばりました
「みんなが来てくれてうれしい。こんな形になってしまったことを、主催者に代わって謝りたい」

●メンバーを殺したいと思ってたの??
「このアルバムが初めてだったよ。出来上がったときに、お互い、殺したいって思わなかったのは」

●ちなみに『アムニージアック』についてはこう語っています
「恐らく『Kid A』は遠く離れた所の音のレコードで、『Amnesiac』はより近くに存在するものなんだ。『Kid A』は留守電に録音されたメッセージのようなもので、『Amnesiac』はもっと良い会話、誰かとダイレクトに会話をするような感じ。」


世界先行発売となった日本で初登場2位。本国イギリスでは、今年の発売第一週売り上げの記録を塗り替える余裕の1位。そしてアメリカでも全米チャートの3位に躍り出たアルバム。そう、レディオヘッドの新作『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』は音楽的に2003年を代表する一枚であると同時に、レディオヘッドに対する世界中の忠誠心が全く衰えていないことを証明した作品だと言えるだろう。これを聴かなきゃ始まらない。そういうことだ。

レディオヘッドは'80年代半ばに、イギリスのオックスフォードで同じ学校の仲間によって結成。'92年にレコード・デビューした彼らは、翌年の1stアルバム『パブロ・ハニー』に収録された「クリープ」の大ヒットによりシーンの中心に躍り出た。しかしたったひとつの曲だけで自分たちを判断されることへの嫌悪感、そして未熟だった自分たちが思うように音楽を作れなかったアルバムだという歯がゆさを覚え、持ち前のセンスに加えてその気持ちをもバネにして、その後驚異的な前進を続けることになる。

トリプル・ギターのアンサンブルと、トム・ヨーク(Vo&G)のエモーショナルなヴォーカルによって躍動感溢れるギター・ロックを完成させた2ndアルバム『ザ・ベンズ』を経て、'97年の『OKコンピューター』では実験性と普遍性を見事にバランスさせてポップ・ミュージックの新しい姿を表現。“自分たちのやりたい音楽を作ると同時に、多くの人の支持を得る=売れる”という地位を確立し、ファンはもちろんミュージシャンからも絶大な信頼と賞賛を受けることに。ここ日本でも、例えば『OKコンピューター』にはイエロー・モンキーの吉井和哉が、『キッドA』には椎名林檎が日本盤用に言葉を寄せているし、桑田佳祐がレディオヘッドにインスパイアされたという話もあるくらいなのだ。

そんな彼らが、打ち込みやサウンドの切り貼りを大胆に取り入れた野心的双子アルバム『キッドA』『アムニージアック』で“脱バンド”した後に、どこに向かうのかが示されたのが新作『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』である。ここ数作の流れを汲みつつ、“みんなで一緒に演奏することの素晴らしさ”、つまりバンド・サウンドの楽しさに再びよろこびを感じていることがはっきりわかる。この作品は、制作に入る前から手早く作ることが宣言されていた。



トム・ヨーク「今回のアルバムに関してはあんまり考えないで作ったんだよ。だから、とにかく偶発的に生まれてきた曲ばかりなんだ。一瞬立ち止まって考えてみるってことをしてたら、こういう曲は生まれてなかったと思うな。じっくり考えて、『このレコードのポイントは何だろう?』なんて思いながら作ってたら全く違うものになってただろうね」

エド・オブライエン(G)「ステージでプレイするのがとても楽しいってわかってきたのさ。2001年のツアーは最高だった。ヨーロッパ、アメリカ、日本でやったツアーの中には、今でも記憶に残ってる本当に良かったギグがあるよ。僕たちはやっぱりライヴ・バンドなんだって誇りを感じたし、悪くない、これなら行けるって思ったんだ」

スタジオに詰めて、機械に向かって延々と作業をしているようなイメージもあった前2作に比べて、“肉体”を感じさせるのが今作の特徴とも言える。それは人間同士が目を合わせながら演奏を高めていくようなバンド・サウンドからももちろん感じられるが、それだけではなかったようだ。

ジョニー・グリーンウッド(G)「そうそう。機材と向き合いながらも、リアルタイムでライヴなエレクトロニック・サウンドをたくさん取り入れて、元気一杯なエネルギーを注ぎ込んだんだ。まるでクラフトワークが未だにテープを使って、しこしことレコーディングしていく過程みたいにさ。物を叩いたりしながら、肉体を酷使してエレクトロニック・サウンドを捻出するような感覚に似てたかもしれないね」

『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』には、バンドのアンサンブルやギター・サウンドにハッとさせられる瞬間が多くある。これもまた、たくさんのミュージシャンに影響を与えることだろう。バンドの2人のギタリストは新作からの先行シングルとなった「ゼア、ゼア」でパーカッションを叩いたりもしているし、ジョニーはギター以外の楽器も駆使する。そんな彼らだが、今はギターとどのように付き合っているのだろうか。

ジョニー「僕にとってギターは、やっぱり特別な存在なんだよ。即効的に素早く、自分の表現したいことが表現できるものって感じ」

エド「僕たちの気持ちによく反応してくれるものだね。ギターが凄いのは、軽く爪弾くこともできれば激しく強く弦をかき鳴らすこともできるってところ。そこがギターの魅力なんだ」

そして、レディオヘッドはいよいよサマーソニックで来日する。ライヴから生まれたという『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』の世界を生で体験するこのチャンス、逃す手はないだろう。もちろんそれまでは、アルバムを聴き倒す毎日を送ろうではないか。

取材/文●播磨秀史(CROSSBEAT)

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『今、ロックが表現できる最大級のリアル』
2001/10/04 横浜アリーナ ライヴ・レポート

10月4日、レディオヘッドの日本公演の最終日を横浜アリーナで観た。

というよりも、今回ばかりは目撃した、と言った表現の方が的確かもしれない。単なるロック・バンドの来日ライヴというフォーマットではない衝撃は、感動や感激という形容詞を遥かに凌駕した凄まじいインパクトをわたしに与えた。しかも、言葉さえ失うほど。本当の感動は言葉にならないものだ。

最近の2枚のアルバム『キッドA』『アムニージアック』の実験的な内容やセールス状況から、どんなライヴになるのだろうと興味を抱き、また来日前の各ロック・メディアの盛り上がりを聞くにつけ、心構えは準備万端にして挑んだつもりではいたが、感動はそれを大きく上回るものになった。

超満員の横浜アリーナ。オープニングアクト、クリニックの演奏が終わると'50年代のジャズ・ナンバーが響きわたり、レディオヘッド登場への雰囲気を作り始める。
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取材/文●竹中吉人

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