【BARKS編集部レビュー】カナル型に調教されたポンコツ耳に、癒しを注ぐNW-STUDIO PRO

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市場価格5980円の新製品NW-STUDIOが市場に登場したばかりだってのに、いまさらNW-STUDIO PROのレビューで申し訳ない。今頃になってNW-STUDIO PROの音の良さに気付き、発作的にレビューを書いている次第だ。

◆NW-STUDIO PRO画像

ナインウェーブからこのNW-STUDIO PROが発売されたのは2011年2月。6月には数量限定ホワイトモデルが登場、付属品が整理されたことで13,800円前後という低価格でリリースされたばかりだったが、正直なところインナーイヤー型という開放型イヤホンには、ちょっぴり疎遠になっていた。遮音性を追求したカナル型を長年愛用してきただけに、いまさら生活ノイズにまみれるのはイヤだと頭ごなしに敬遠していたからだ。

そんな折、ふとNW-STUDIO PROを耳にしてみたら、そんなちんけなこだわりなどスポーンと吹き飛ばしてくれる強烈な説得力がNW-STUDIO PROからあふれ出てきた。波の音を聴けばそこは砂浜になるし、鳥の鳴き声を聞けばもうそこは森の中になる。NW-STUDIO PROが鳴らすこの自然な音の存在感が凄い。カナル型に調教された私の耳に、開放型の音はあまりに心地よく自然に響く。これが癒しか?これが優しさなのか? この当たり前の響き方ってなんなんだ?と、私は今、開放型の魅力に猛烈引き込まれ中だ。

もちろんだからといってカナル型を否定するつもりはないし、これからも変わらず追求していくけれど、そこに加えて開放型も常に手にしておきたいアイテムとして気になる存在となってしまった。音楽だけに集中するのであればやはりカナル型(遮音型/密閉型)になるが、BGMのように日常を音楽で彩るには、開放型がベターなのは言うまでもなし。これらは共存こそすれど競合するものではないわけで、こんなことに今頃やっと気が付いた私。

しかし使ってみて、ある面白い傾向に気がついた。BGMのように気軽に音楽を鳴らすだけのくせに、そんな開放型には非常に高い品質を厳しくシビアに求めてしまう自分がいる。あくまでもBGMだから音楽だけに神経を集中しているわけでもないのだけれど、逆にそれだけに、何気なく鳴っている音楽がヘボかったりハンパな音質で鳴っていると、どうにも許せない。好みの音質じゃないと、気になって仕方なくなる。

カナル型を使用している場合は意識的に聴覚の全てを音楽鑑賞に注いでいるので、もっと音質に対しシビアになりそうなものだけど、何故か多少音に癖があろうと耳の方がその音に慣れてしまい、5分もすれば大概のものは許せてしまうってなことになる。十数万円に及ぶカスタムIEMから3000円未満のエントリーモデルまで、実際好みのものはたくさん存在するし、どれでも存分に楽しめてしまう自分がいる。全聴力をその音質に集中させたあげく、たった5分でなんでもOKになってしまうというポンコツ耳っぷりに愕然とする。知覚している脳みそがおバカなのか?

しかし、開放型の場合は、常に意識と無意識の狭間で音楽が鳴っているわけで、こいつに対する音質の評価は、5分やそこらではブレることがないし、鳴っている音質に惑わされることもない。開放型のインナーイヤーヘッドホン/耳掛け式ヘッドホンは、判断基準をニュートラルに戻してくれる生活騒音という基準音と常に隣り合わせだ。音の評価基準が常に己のニュートラルに置かれているようで、そこがブレないため、いい音をたくさん聴いてきた人であれば、それだけ高い敷居を作ってしまう傾向がある気がする。

脳内補正という便利な人力イコライザーが一切効かない開放型は、いわゆる一般的なオーディオと同じフィールドで闘っている商品群という印象だ。高品質なオーディオサウンドを追求すると、コストは指数関数的に増加し、価格はどうしても上がりコストパフォーマンスは悪くなる傾向にあると思う。あげく「高価なくせに音漏れがする」だの「遮音性がない」だのトンチンカンな批評を受けたりするとなれば、あまりに報われない分野でもあるし、真っ当な評価が得られにくい不憫なカテゴリーであろうことが容易に想像できる。

そんな妄想も含めながらNW-STUDIO PROのサウンドを聴くと、なんと「高い志なんだ」と、評価も2割り増しになる。いや、評価も指数関数的に増していかないと、割に合わないか?

クリアーで自然な音。明瞭でいながら骨太。NW-STUDIO PROのサウンドはひとえにナチュラルで、付帯音も感じず、比類なき好バランスで音楽を聞かせてくれる。今さらながら「インナーイヤーがいい」だなんて思えたのもNW-STUDIO PROの音が抜群に良かったからで、名指しで悪いが、これがiPod付属の白イヤホンだったら、とてもこんな思いにはなれなかったし、未だ開放型のインナーイヤータイプの魅力に気付くこともなかっただろう。

最後に、蛇足以外の何物でもないが、念のため注意点を。開放型は周りの音も聞こえる代わりに、ヘッドホンの音も外に漏れがちなので、他人に対しては気遣いをお忘れなく。なお、騒音は盛大に聞こえてくるので、うるさい環境では使用は困難。電車の中では使えないと思った方がよい。逆に電車の中でも楽しめてしまうような音量は、蝸牛殻内の有毛細胞を破壊し治癒不可能な難聴を引き起こす危険があり、使用NGだ。また音漏れが乗客に迷惑となる可能性も大きい。図書館のような静寂な環境でも気をつけて使用していただきたい。

生活の中でオーディオを鳴らす…そんな楽しみ方をプライベートで実現するには、NW-STUDIO PROはベストパートナーのひとつ。音楽の楽しみ方に幅を広げ、人生のちょっとしたサプライズをもたらしてくれちゃったりします(…というか、ここだけの話…カナル型フェチにとって、こいつはリハビリ・アイテムじゃないかとも思うのです)。

text by BARKS編集長 烏丸

●9W NW-STUDIO PRO
オープンプライス(市場価格15800円前後)
オープンエアーダイナミック型
ドライバーユニット:口径13.5mm
再生周波数帯域:20Hz 20kHz
出力音圧レベル(感度):110dB ±3dB
インピーダンス:32Ω±15%
コード:Y型980mm φ1.8
入力プラグ:24金メッキステレオミニプラグ
本体質量:12g±0.5g
付属:ステレオ標準プラグアダプター、延長コード、イヤーパッド×2セット、マニュアル、保証書、キャリングケース

◆NW-STUDIOシリーズ・オフィシャルサイト
◆9W NW-STUDIO PROオフィシャルサイト
◆ナインウェーブ・オフィシャルサイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー
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◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
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◆SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
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◆フォステクスHP-P1(2011-03-29)
◆Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
◆ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
◆Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
◆Westone4(2011-02-24)
◆Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
◆KOTORI 101(2011-02-04)
◆ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
◆ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
◆SHURE SE535(2011-01-13)
◆ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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