【BARKS編集部レビュー】<イヤホン組立体験>雨模様の中、ヨドバシカメラでイヤホンを作ってきた

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▲ファイナルオーディオデザインの話、組立にまつわる説明を担うスタッフとして女性も活躍。
▲組立に必要な材料、マニュアルをはじめとした紙資料、ピンセットやボンドなど細々とした必要な道具も全て揃っている。
▲イヤホン本体に、ボディーをはめる際のリング、フィルター、イヤーピースなどが必要量だけセットされている。。
▲まずはケーブルを押す出すようにしてハウジングからドライバーを飛び出させて…
▲今のうちにリングを通しておいて…
▲仮止めのためのドーナツ状の両面テープ。
▲両面テープをバランスド・アーマチュアの先端の丸い円盤状にまっすぐ貼り付けて、これで仮止めの準備OK。
▲両面テープでドライバーをフロントボディーの内側に貼り付ける。
▲こちらが制振合金M2052粉末。
▲ボンドにM2052を混ぜ、こねこね。もたもたしているとどんどん硬化が進んでしまう。
▲ドバーとハウジング内に押し流してしまった。ドヤー。
▲左右とも接着が完了したら、アルミテープを貼って硬化が終わるまでのズレや外れを防ぐ。
▲とりあえず完成。
▲イヤーピースをはめて聞いてみると随分とジャジャ馬なサウンド。高域が遠慮なく鳴りまくる。
▲ハイカットに効果があるという黄色いスポンジを取り出して…
▲カッターで半分にチョキン。
▲黄色いスポンジを音響フィルターとして音導管にセット。たったこれだけでも高域の出方が変わってくる。
▲他にも様々なフィルターがセットとして付属してくるが、家庭内にはフィルターとして使える色んな物が転がっているとか。
11月2日(土)昼過ぎ、今にも降り出しそうな雨模様の中、ヨドバシ新宿西口本店マルチメディア館北館4階に向かった。11月2日(土)、3日(日)、4日(月)という3連休の間、朝10時から夜8時までヨドバシ新宿西口本店で開催されている<自作イヤホンで音のチューニングを楽しもう!~イヤホン組立体験~>に参加するためである。文字通り“イヤホンを組み立てて好みのサウンドに仕立てよう”という体験型イベントで、すでに恒例となりつつあるファイナルオーディオデザイン主催の大人気企画だ。

◆<自作イヤホンで音のチューニングを楽しもう!~イヤホン組立体験~>画像

以前、2012年6月に開催された同イベントでは、ステンレス削り出しの非売品金属筐体に9mmのダイナミック・ドライバーを組み立てたが、今回は同社Adagio IIIの筐体にバランスド・アーマチュア・ドライバーを組み込むという内容になっている。そして何より“制振合金M2052粉末をチューニングに使用する”という新ネタが熱い。定価22万円という超弩級高級イヤホンPiano Forteシリーズの上位機種にも使用している高価なマンガン系制振素材なんだとか。そんなマニアックなスペックのイヤホンが自分好みに組み立てられるとあれば、身体がうずいて収まらない。

このイヤホン組立体験は、専門的な知識やスキルは全く不要で、必要なキットはもちろん、作業に使用するピンセットやカッター台、爪楊枝など細かな道具も予め全て揃っている。お膳立ては完璧で、参加者は、出来上がったイヤホンのサウンドを確認するために自前のミュージックプレイヤーでも持っていればそれで充分だ。

イベント時間は45分間とタイトなこともあり、作業自体はずいぶんと簡略化されている。ドライバーも予め結線されており、ケーブルは結び目を持ってすでにハウジングにセットアップされている。ハンダ付けも必要なく、基本的にドライバーの固定とハウジングの接着、そして音響フィルタのセットアップが主たる作業だ。

その中でも最も面白かったのは、やはり制振合金M2052粉末を用いてのドライバーの固定作業だった。本来であれば接着剤で固定してしまえばそれで済むところを、今回はバランスド・アーマチュア・ドライバーの天面と両側面にM2052を塗ることで不要な振動を抑えましょうというのがポイント。これによって1ランク上のサウンドクオリティを得るというのが目的なのだ。ぞくぞくするぅー。

M2052は双晶型と呼ばれる制振合金で、それ自体が振動を吸収してしまう特徴を持っている素材である。その理屈は単純で、様々な大きさの双晶が簡単に発生しさらに容易に移動する性質を持っているために、振動という負荷(荷重)が加わると双晶の発生と移動によって運動エネルギーが熱エネルギーに変化してしまうことにある。つまり、振動が吸収されるというわけだ。

参加者の手元にはそのM2052の粉末が用意されており、適量をボンドに混ぜ混んで、ドライバーの固定のついでにドライバーの回りに塗りつける。やることは単純だが、ボンドがベタベタでなかなか言うことを聞かない。(1)ドライバーの固定、(2)制振のための塗りつけ、(3)フロント・ボディとリア・ボディの接着という3つを同時に行うのだが、ボンドの硬化が意外にも早く、スピーディーに正確に作業する必要がある。いわばここが最大の難関で、参加者の皆が眉間にしわを寄せながら息を潜めるという、一瞬にしてシュールな空間に早変わり。

私も最初は行儀よく作業を進めていたものの、ドライバーの横っちょにぺろぺろっと塗りつけたくらいじゃ、どうにも生ぬるい。こんなんで制振といえるのか、ん?…と、制振という魅惑の魔力にとりつかれた私は、「バランスド・アーマチュアに開けられた空気穴を塞がないように!」というスタッフの注意を背中に感じながら、ハウジングの中を充填するようにボンドに混ぜ込んだM2052をドバドバと大量に流し込むという荒業に転じた。「だ、大丈夫ですか?」と焦るスタッフに「完璧です」と笑顔で答える、満ち足りたひとときである。

空気穴を塞いでしまった場合は、低域がすっこすこになってしまうのかもしれない。が、それはそれで、俺様だけの俺様チューン(泣)。それもこれもイヤホン組立の醍醐味ではないか。At Your Own Risk、イエス、ジャスティス!

ボンドも固まりボディ部分が完成して早速音を聞いてみると、かなり高域の派手な暴れん坊の音がする。この出過ぎた高域をフィルターで抑え、トーンバランスをコントロールするのが、最後の工程だ。数種類のフィルターが用意されており、黄色のフィルタを半分に切ってはめてみると、出すぎた高域が少し減って、相対的にローミッドが出てきたように聞こえてくる。これがフィルターによるチューニングの基本だ。

ファイナルオーディオデザインのスタッフは、様々な素材をフィルタに使ってみると面白いと、その可能性を力説する。そしてフィルタを変えることによって変化するトーンの特質に気を配ってみれば、様々な傾向や特性が理解できるようになるとも言う。

「フィルターを変えたことの変化や、左右のばらつきなどもそのうち分かるようになります。全ては耳で聞いて耳で判断することが最も重要です。むしろ皆さんのほうが、我々が作るイヤホンよりもいい音がするイヤホンを作ったりするんですよ」

チューニングとは、いらない要素をカットし出過ぎたポイントを抑えることでサウンドを整える作業だ。2012年6月に作った金属ハウジングのダイナミック・ドライバーはそのままだと極端に低域が出る設計となっており、ハウジング内をフィルターで制御することで低域を抑えバランスを取る面白さがあったが、今回のモデルは高域をどのように抑えるかがポイントとなっている。

45分の中では、ひとつのフィルタを付けてみたところでイベントは終了となったが、このイヤホンに更なるチューニングが施され最高の一本に仕上がっていくのは、持ち帰ったその日からがスタートとなる。女性の参加者も少なくなかったが、化粧で使うコットンなどもいいフィルターになるとか。制振機能を持ったBAドライバーを搭載した世にも稀有なAdagio IIIが、本当の実力を発揮するのは、これからの各オーナーの試行錯誤次第だ。

なお、今回はイベント参加者限定特典として期間中にヨドバシ西口新宿本店にてfinal製品を購入すると、同じ製品あるいはその価格以下のfinal製品がもうひとつもらえるという特別プレゼントが用意されている。「友達でも恋人でも家族でも、あなたの大事な人に同じ音をプレゼントしてあげてください」という、ファイナルオーディオデザインからの提案だ。

素晴らしいサウンドは、音楽の面白さや喜びを加速させるのみならず、心の栄養として瑞々しさを運んでくれる、かけがえのない知的財産でもあると思う。楽しみながらも高いクオリティのサウンドを手にする<自作イヤホンで音のチューニングを楽しもう!~イヤホン組立体験~>、あなたもおひとついかがですか?

text by BARKS編集長 烏丸哲也

<自作イヤホンで音のチューニングを楽しもう!~イヤホン組立体験~>
@ヨドバシ新宿西口本店4階オーディオコーナー
11月2日(土)~4日(月)
(1)10:00~10:45
(2)11:00~11:45
(3)12:00~12:45
(4)14:00~14:45
(5)15:00~15:45
(6)16:00~16:45
(7)17:00~17:45
(8)18:00~18:45
(9)19:00~19:45
(10)20:00~20:45
※入れ替え制(1回45分×10回)
※募集人数:各回先着10名様、3日間合計300名様予定
※参加費:5,980円(部材費込み)
※申込方法:当日、会場にて9:30より受付を開始します。
※事前予約は承っておりません。当日会場受付にて、先着順にご希望の時間帯をお伺いします。
※参加はお一人様につき一回のみとさせて頂きます。
※組立キットのみの販売は行っておりません。

◆イヤホン組立体験オフィシャルサイト
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
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