いつまでも色褪せないロックの名曲を手に入れよう AORのすべてVol.2

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キーワード:プロデューサー
アルバムの音は、制作の指揮をとるプロデューサーによって大きく変わる。演奏者やアレンジャー、作曲者を選び、アルバム全体の色を決めるのがプロデューサーだからだ。特にAOR系では、自らアレンジをしたり楽器を演奏したりして直接音に関わるプロデューサーが多く、音を聴けば誰がプロデュースしたかすぐわかるほどだ。気に入ったアルバムのプロデューサーが携わったほかのアルバムを探せば、同じように気に入るアルバムにたどり着けるかもしれない。

デヴィッド・フォスター
AOR界で最も有名なプロデューサーは、なんといってもデヴィッド・フォスターだ。ホール&オーツの『モダン・ポップ』で名声を得たあとは、ホイットニー・ヒューストン、シカゴ、アース・ウィンド&ファイアーと、ありとあらゆるアーティストの作品をフォスター流AORに仕上げて送り出した。一時期は尾崎亜美や河合奈保子といった日本のアーティストまでがこぞってプロデュースを依頼したほど。コテコテのAORを聴きたければ、フォスタープロデュースのアルバムを探せばよい。代表作はそれこそ山のようにあるが、ビル・チャンプリンの『独身貴族』やボズ・スキャッグスの『ミドル・マン』が、とくにフォスター色がよく出ていてオススメだ。

ゲイリー・カッツ
難解とも思える知的なアレンジと緻密なサウンド作りで知られるのがゲイリー・カッツ。スティーリー・ダンのほとんどのアルバムは、カッツのプロデュースによるもの。D・フェイゲンがいかに完璧主義者とはいえ、ゲイリー・カッツなくしてはあのサウンドは生まれなかっただろう。それ以外ではマーク・ジョーダンの『Mannequin』やダイアナ・ロスの『Ross』あたりが有名だが、いずれもカッツらしくきっちり作り込まれた安心感のある音に仕上がっている。また女性デュオEYE to EYEの『EYE to EYE』はシニカルな雰囲気がよく出ていて、スティーリー・ダンファンにオススメ。


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J.D.サウザー 『ユア・オンリー・ロンリー』

イーグルスに曲の提供もしていたことから「6人目のイーグルス」と呼ばれたシンガー・ソングライター。ロイ・オービソンへのオマージュとして知られるタイトル曲で一躍注目を集めた。古きよきアメリカンサウンドを、さわやかなウエストコーストロックに仕上げた。甘いが渋みのある歌声と明るいメロディラインで、ロマンチックな世界を演出する彼の代表作だ。
REOスピードワゴン 『禁じられた夜』

通算11枚目にして放ったビッグヒット。「キープ・オン・ラヴィング・ユー」、「涙のレター」、「ドント・レット・ヒム・ゴー」など数多くのシングルヒットも生まれた。ハイトーンヴォーカルが強く印象に残る元気のよいアメリカンポップスだが、アコースティックな雰囲気の中にもハードなギターが絡むのは、長いキャリアを持つロックンロールバンドらしい。

エアプレイ 『Airplay』

AOR界の巨人、デヴィッド・フォスターとジェイグ・レイドンのユニット。全体のトーンは明るいアメリカンハードロックだが、迫力あるコーラスワークやR&Bに根ざしたリズムのフィーリングはとにかく絶品。ソングライティングからアレンジ、音作りまで、ここまで完成度の高い作品はほかにない。これを機に2人にプロデュース依頼が殺到するほど業界に衝撃を与えた傑作だ。
Earth Wind & Fire 『フェイセス』

Earth Wind & Fireというと、'70年代半ば以降連発したディスコヒットを連想してしまうが、アルバム全体の完成度の高さからいうと、この『フェイセス』は飛びぬけた存在。AOR、R&Bの両面を兼ね備えたポップなナンバーが連なっているが、アレンジは洗練され、強力なスタジオミュージシャンを起用した演奏もクオリティが高い。アースならではの強靭なリズムも健在。

スティクス 『パラダイス・シアター』

架空の劇場の隆盛から衰退までのストーリーになぞらえ、アメリカの現状に問題を投げかけるというトータルコンセプトを持つ作品。基本は明快な正統派アメリカンロックだが、スティクスならではのドラマチックなアレンジ、歌唱力抜群のツインヴォーカル、そして時折見せるハードロック色の強いギターが、ユニークなサウンドを生み出している。
ラーセン・フェイトン・バンド 『ラーセン・フェイトン・バンド』

歌モノとインストを半々に配分した構成で、全体にさわやかでポップなテイストがあふれている。卓越した演奏技術と豊かな経験から生み出される円熟味のあるサウンドは、今流行りのスムース・ジャズにも通じる聞きやすいもの。暖かみのあるオルガンとシャープなギターのコントラストは絶品。

ホール&オーツ 『モダン・ヴォイス』

ブラックミュージックに強く影響され、ブルー・アイド・ソウルの寵児、ホール&オーツが初めてセルフプロデュースし、よりポップ色を強め、エレクトリックなサウンドに転化した意欲作。ダンサブルな「キッス・オン・マイ・リスト」、ソウル系バラードのスタンダードにもなった「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」などディスコ系ナンバーがヒット。
エア・サプライ 『ロスト・イン・ラブ』

メロウなハイトーンヴォーカルが特徴的なオーストラリア出身のグループ。「ペパーミントサウンド」というキャッチコピーのデビューアルバムは、声質の異なるツインヴォーカルを生かしたポップなメロディラインとアコースティックサウンドで多くの女性ファンを獲得、夏の定番として定着した。そのサウンドの甘さゆえ、男性のファンからは評価されなかったが。

クリストファー・クロス 『南から来た男』

どこまでも甘く伸びやかで澄んだハイトーンヴォイス、流麗で耳に残るメロディ。サウンドプロデュースも完璧で、西海岸のさわやかさを凝縮したような仕上がりだ。デビュー作にしてこの完成度の高さは驚嘆に値する。ラリー・カールトンやジェイ・グレイドンのギターソロも聞きどころ。グラミーも5部門を独占した、AOR史上に残る名作だ。
ジノ・ヴァネリ 『ナイトウォーカー』

凝ったアレンジと緻密なサウンドで、完全主義者と言われるジノ・ヴァネリ。なかでも、最も情感があふれ完成度が高いのが本作だ。難解なコードや複雑なアレンジを駆使してドラマチックに展開する楽曲は、ジャズやプログレの影響も感じさせる。絶唱型のジノのヴォーカルと攻撃的なヴィニー・カリウタのドラムはあたかもバトルを演じているよう。

ジャーニー 『エスケイプ』

全世界で800万枚を売った本作では、持ち前の明るいアメリカンロックサウンドとライトな感覚の楽曲が見事にかみ合い、ハードAORとでも言うべき誰もが聴きやすいハードロックを作り出した。マライア・キャリーもカヴァーした名バラードの「オープン・アームズ」も、スティーヴ・ペリーの伸びやかな声、ニール・ショーンのメロディアスなギターで聞くのが最高だ。
TOTO 『TOTO IV』

アメリカンプログレハード路線から一転して、ホーンセクションやパーカッションを大胆に導入、R&B色を強めた作品。ドラマーの故J.ポーカロが、バーナード・パーディとジョン・ボーナムのフィーリングをミックスしたという“ポーカロシャッフル”で始まる「ロザーナ」や全米No.1となった「アフリカ」がその象徴。CDが登場した'82年に、世界初のCDタイトル50枚に含まれていたのも、これが名作である証。

ドナルド・フェイゲン 『ナイト・フライ』

今もってスタジオワークの教科書とされるポップスの名盤。ジャズやR&Bを巧みにポップスに仕立てるスティーリー・ダンの、都会的でシニカルな部分が凝縮され、さらに切れ味が増している。軽快だがブルージーでグルーヴィ。最高に大人っぽいポップスの傑作だ。バックはもちろん、LAとNYの超売れっ子スタジオミュージシャンで固められている。
シカゴ 『Chicago 16』

大ヒットシングルの「素直になれなくて」をはじめ、プロデューサーのデヴィッド・フォスター色が全面に表われたメロウなAORアルバム。トレードマークの分厚いブラスセクションを劇的に展開するシカゴらしい曲もあり、大人のロックバンドとしての地位を確立、一気に復活を遂げた。次のアルバム以降もヒットを連発するが、バラードばかりになってしまった。

スティング 『ナッシング・ライク・ザ・サン』

ソロのスティングは、ジャジーで落ち着いた味わいのAORを聴かせる。このソロ2作目では円熟味さえ漂っている。ポリスにいた尖ったロック小僧と同一人物とは思えないほど、ジャズやソウルへの造詣の深さが感じられる。「Fragile」や「Englishman in New York」といった名曲のほか、CMで使われたキャッチーな曲やジミヘンのカヴァーもあり、全曲通して楽しめる。
リチャード・マークス 『リピート・オフェンダー』

この8月に7年ぶりの新譜が発売されたリチャード・マークスは、甘いマスクとエッジの効いたパワフルなヴォーカルが魅力。シカゴやケニー・ロジャースに曲を提供していた経歴もある。このセカンドはアルバムとシングル両方で全米1位を獲得した大ヒット作。「ライト・ヒア・ウェイティング」のようなメロウなバラードもいいが、軽快でファンキーなロックチューンに彼本来の明るさが光っている。
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