2006年第一弾シングル「衝動」レヴュー&先行試聴

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NEW SINGLE

「衝動」
2006年1月25日発売
BMCV-5009 \1,050(tax in)

1. 衝動
2. 結晶


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  「衝動」PVはココに注目!

【1】テーマは和
B'zのシングルとしては珍しい漢字のタイトルということで、PVも和テイストに。

【2】ダジャレ!?
テーマは和、ということで“書道”で「衝動」を描く。

【3】書を描くのは新進書道家
<フジロック>でのパフォーマンスをはじめ、映画『春の雪』やドラマ『けものみち』、『里見八犬伝』などの題字を手掛けた書道家、武田双雲氏がアグレッシヴにして鮮やかな運筆を披露。躍動的な演奏シーンとのコラボレートに注目!

▼オフィシャル・サイト
http://www.bz-vermillion.com/
'94年の3月にリリースした7thアルバム『The7th Blues』以降、多少の濃淡差こそあれ、この十数年間ずっと、ロサンジェルスはB'zにとって音を作る上での重要な場所になってきた。

わずか2小節のTAK松本のギターに応答するドラムスのフィルと稲葉浩志の“Yeah!”という声。'06年初のB'zのシングル音源「衝動」は、居ても立ってもいられない疾走の8ビート楽曲である。今回は、『Brotherhood』('99年7月リリース)の際、Recを行なったロサンジェルスのNRGスタジオのオーナーであり、エヴァネッセンスリンキンパークなどの作品を手掛けたエンジニア&プロデューサーとして知られるジェイ・バウムガードナーを迎え、“締まっていて広がりのある音”を完成させた。

ご存知のように、B'zのプロデュースを一貫して手掛けているのは、他ならぬTAK松本である。ゆえに今回バウムガードナーは、エンジニアという側面に特化されて共同作業をおこなったと見るべきだろう。

「衝動」のサウンドは、不思議なことにヴォリュームを上げ、爆音で聴けば聴くほど輪郭と存在感を露にするという特性を持っている。2回目のサビ、独立したメロディのように響く“♪しょーどー!”のパートに稲葉がすぐに軽く“Yeah!”と入れ、即座にTAKが超速のGソロを展開する、そのタイミングとリズムがきめ細かく威風堂々としていて圧巻である。私見では「衝動」の内包するメッセージは“不可能なんて、ない”ということではないだろうか。そして、不可能だと思われた局面に発現される衝動を、皆、今は眠らせているだけというふうにも受け取れる。

さて、一方の2nd beat「結晶」は、TAKのメロウにして枯れたギター音がオリエンタルなメロディック・リフを奏で、Aメロを誘導する、さりげなくロマンティックな楽曲である。サビ部分で、TAKが弾いている軽妙なバッキングGが、まるで街灯に映える細雪(ささめゆき)のようで、記憶の回想を促してくれる。

Gソロのセクションでは、右スピーカからは音圧系コード・カッティングが聞こえ、左スピーカからは少しだけ歪みを抑えたジャジーなフレーズが聞こえる。僕の記憶を掘り起こしてみると、ミニ・アルバム『FRIENDSII』('96年11月リリース)に収録された「SNOW」をウォーム・アップさせた、“さざめく思い”のとても多いナンバーである。

「SNOW」で稲葉はファルセットで歌っていたが、「結晶」ではBメロを“半分ファルセット気味”で歌っている。Gソロの後では、ギター・リフとともにエレクトリック・ピアノの音が加わり、思い出の縁を少しだけ彩る。

ある程度長く、B'zの音楽を聴いてきたファンにとっては、言わずもがなの名場面はもとより、その人が固く大事にしている貴重な記憶があるだろうから、それらを心の銀幕にしばし映し出しながら聴いてみるのも一興だろう。

音楽作りにおける“衝動”の占める割合は、キャリアを積めば積むほど少なくなっていくと思われる。しかし、「それもまた仕方がないじゃないか」と言わず、居ても立ってもいられないあの気持ちを抽出し、楽曲にぶつけるB'zの'06年に目を光らせていたい。

文●佐伯 明

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