ポール・ギルバート、インタビュー

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――M1「GET OUT OF MY YARD」の最初の高速フレーズ、さっき目の前で弾いてもらうまでどう弾いているのかまったくわからなかった。

ポール:ああ、あれね(笑)。レコーディングのときはカポを使って、カポの位置を変えては録り、変えては録り、セクションごとに細切れに録っていったんだ。さっきの“人間カポ”(動画参照)は数日前からやり始めたんだけど、意外に簡単だった。実は速弾きって簡単なことをしないとできないというのが僕の持論。だからあれも難しいことはやってないんだよ。ただあのフレーズはポジションがどんどん変わっていくから、聴いただけじゃどう弾いているかわからないだろうね。

――M8「RUSTY OLD BOAT」は、ポールには珍しくファンキーな曲調だね。

ポール:前作のツアーメンバーのオーディションのとき、紹介してもらった中に黒人ドラマーがいたんだ。電話してみたら、彼の声がむちゃくちゃブラックでクールでファンキーだったんだ。それを聴いた瞬間、“これは大変だ!”と思った。僕のストレートなポップソングを彼に叩かせるわけにはいかないぞ、彼のためにファンキーな曲を作らなきゃって。それでできたのがこの曲。自然に浮かんだわけじゃなくて、そのとき必要に迫られて作った曲なんだ。

――日本でのインストア・ライヴでも新作の曲が中心だったけど、かなり手ごたえがあった?

ポール:すごく手ごたえがあったし楽しかった。全部インストって初めてなんだけど、弾いてると途中でどうしてもこう(立ち上がって叫ぶ)“イヤーッ”って、シャウトしたくなっちゃうんだ(笑)。それと、レコーディングは座ってギターに集中できるんだけど、立ってステージで弾くのはやっぱり別物だな。ツアーでやるときはバンドでもっとノリノリでやらなきゃいけないからね。もちろん全部ちゃんと弾けるんだけど、難しい部分もけっこうあるから、帰ったら立って一生懸命練習するよ。

――今回のアルバムやインストア・ライブであれだけすごいギターを見せつけられたら、ギターをやめたくなっちゃうギターキッズもいるんじゃないかな。

ポール:ハハハ(笑)。難しく考えずに楽しんでくれればいいんだけどね。最近僕もそんな経験をしたよ。この前マーティ・フリードマンと会ったんだけど、ヤツの日本語があまりに上手いんでもうイヤになっちゃったんだ(笑)。僕だって日本語は一生懸命勉強してるのに、全然違う。どんなに頑張っても僕はこうなれないんじゃないか、って落ち込んだ。それと同じじゃない? 思えばレーサーXのときは、やることが多くスケジュールも厳しくて分刻み、まるで“音楽軍隊”って感じできつかった。でも自分が好きな音楽をいっぱいできたことはすごく楽しかった。日本語のことも、学ぶプロセスも含めて自分なりに楽しめばいいと思ったら気が楽になった。だからみんなも、とにかく好きな曲、やりたい音楽を見つけて楽しんでほしい。他人と比べることはないよ。

――今後もまたインストのアルバムを作りたいと思う?

ポール:作る前は予想もしなかったけど、すごく楽しかったし満足してる。僕は以前、ギターインストのアルバムをかなり批判した発言をしてたんだ。でも、ちょっとだけ撤回するよ。インストアルバムの可能性を見つけた気がするので、また作ってもいいと思ってる。

――ソロ以外のプロジェクトの活動は今どうなっているの?

ポール:レーサーXはみんな仲がいいから、これからも友達付き合いは続くだろう。それに、いかにもメタルっていうのが時々やりたくなるんだ。だからタイミングが合えばまたなにかやりたいな。今は個別に活動してるだけで、レーサーXは解散したわけじゃないからね。Mr.Bigについては、僕の中ではもう遠い存在、そうだな、伝説みたいなものだな。伝説はそのままそっとしておこうよ。

――このアルバムのツアーの予定は?

ポール:早めにやると思うよ。僕の頭の中にこのアルバムがフレッシュに残っている間にね。今回はギターもすごく難しいから、またレーサーX的な“軍隊”スケジュールできっちりリハーサルをやったほうがいいかもね。完成された形で日本に戻ってきたいから。

――じゃあライヴ楽しみにしてるよ。

ポール:ありがとう。今回は歌がなくてギターに集中していればいいから、最高に弾きまくることになると思うよ。楽しみにしててね。

取材・文●田澤 仁

   
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