松田美緒 アルバム『ピタンガ!』特集INTERVIEW

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──小さい頃から、ポルトガルやブラジルの音楽を聴いて育ってきたんですか?

松田美緒(以下、松田):そうですね。クラシックや日本の民謡も含めて、いろいろな世界の音楽に触れ合える環境で育ちました。普通の人とは違う音楽を聴いてきましたね。あとは両親の影響でジョン・レノンやジョーン・バエズなんかの、ちょっと古めの音楽をよく聴いていました。そのうちいろいろな国の友達ができて。それでブラジル人の友達ができたのがきっかけで、ポルトガルのファドに出会ったんです。

──ファドのどういうところに気持ちを奪われたのでしょう?

松田:ファドの代表的な歌手アマリア・ロドリゲスが声に込める感情や情感が、まさに自分が表現したいものだと感じました。そこが出発点ですね。彼女が30歳代くらいの作品は、我を忘れて酔いしれ、怒涛のように感情を込めて歌うんです。高音が美しく素晴らしい声で。それに惹かれましたね。ファドには“宿命”という意味があるんですが、そういうドラマチックなものに思春期に出会ったということが大きいんでしょうね。ポルトガルと私の間には何かがあると。

──実際にポルトガルに行ったのはいつ頃?

松田:自分で歌いながらポルトガル語を勉強して、ファドに出会ってから3年後の2002年に初めてポルトガルに行きました。私が思ってた通りのところで、人が話している言葉も聞き取れるし、初日から現地の人に混じって歌っていました。それと同時に、ブラジルも私にとって心の故郷と感じるところで。ブラジルに初めて行ったのは2004年ですね。

──同じポルトガル語圏とはいえ、ヨーロッパにあるポルトガルと南米にあるブラジルの共通点が日本人にはわかりにくいですが。

松田:ポルトガル人がブラジルに渡っていったというのがそもそもの始まりなんで、昔からダイナミックな交流がありましたよね。そういうことを表現したくて、1枚目のアルバム『アトランティカ』のテーマは大西洋を結ぶ海の歌というものにしました。ブラジルに初めていったとき、“ああ、帰ってきたんだ”と思ったんですよ。現地の人に“前世はこっちの子だったんだよ”って言われましたし(笑)。

──今回のアルバム『ピタンガ!』の意味について教えてください。

 

松田:ブラジル先住民族のトゥピ族の言葉で“赤い実”という意味なんですが、この言葉が凄く頭に残って、次のアルバムのタイトルは絶対にこれにしたい、なおかつ“!”マークを付けたいと思ったんです。音として可愛いしエネルギーが満ち溢れていると感じて。ブラジルの太陽をたくさん受けたエネルギーが、ブラジルの人々のリズムや音楽のエネルギーを表現するのにぴったりだと思って。あといっぱい詰まった“愛”を感じたというのもあります。ブラジルのバイーアというところでは、ピタンガの葉は幸せの象徴で、クリスマスや年末年始には町中に飾るんです。それがブラジルでのレコーディング中にわかったり。私が感じたとおりの意味があったんです。

──フトモモ科フトモモ属っていう、なにかセクシャルな植物ですね。

松田:この匂いや色が女性ホルモンを活性化させる作用もあるんです。それと官能っていう意味合いもあって。土着的な宗教にイァンサンという赤い色が象徴の女神がいて、風と雨と官能の女神なんです。彼女に捧げるのが、このピタンガなんです。

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