ポーレット・マクウィリアムズ、インタビュー

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──あなたは、クインシー・ジョーンズ大のお気に入りシンガーよね。どのようにして出会ったの?

ポーレット:彼は、私にとって心の師のような存在。当時、有名なギタリスト、フィル・アップチャーチがシカゴに住んでいたの。彼はクインシーと友達で、何度か仕事もしている仲だった。私は10代前半の頃フィルと知り合って、それから付き合いがずっと続いていたわけ。フィルが私の歌が入ったテープを彼に送ったのよ。次の週、クインシーから電話がかかってきた。電話があった時、両親も傍にいたわ。クインシー本人だって信じられなくて、相手に向かって“いい加減にしろ”って怒鳴ったのよ。彼は、私に会いたいので、フライトを予約するからLAに来てほしいって。もしかしたら新しいアルバムで歌ってもらうかもしれない、って。そこから歴史が始まったの。そしてクインシーの「ボディ・ヒート・ツアー」でアメリカ中を回ったわ。ステージで彼は私のことを“未来のサラ・ヴォーン”とか“アレサ・フランクリンに続くシンガー”って紹介してくれた。素晴らしいと思わない? あの時のことを思い出すと、今でも鳥肌が立つのよ。彼との出会いは、私の人生を全く違ったものにしてくれた。

 

──初来日はクインシーとのツアー?

ポーレット:初来日は1975年。日本ツアーは6週間、27都市で公演した。本当に楽しかった! 私はそのツアーで、プロフェッショナルということやビジネスの何たるかをクインシーから学んだわ。クインシーのツアーは全てにおいて超一流。ファーストクラスだった。日本のスタッフも素晴らしかった。東京ではクインシーが“サプライズ”を用意していたの。サラ・ヴォーンとのデュエットよ! 私たちはBernard Ighnerの「エヴリシング・マスト・チェンジ」を歌ったの。この曲はショウの見せ場の一つで、オーケストラを指揮しながらクインシーが、私を誇らしげに見ていたのが印象に残ってる。ステージで歌いながら私は涙を流していたの。“あのサラ・ヴォーンとデュエットをしているのよ!”って考えてた。このツアーでは、素敵な経験や楽しい思い出が星の数ほどあって、まるで昨日のことみたいに思い出せるわ。

──次は、ルーサー・ヴァンドロスについて教えて。彼とも長い間仕事をしていたのね。

ポーレット:ベット・ミドラーのバックボーカル・グループ“ハーレット”で活動し始めた頃にルーサーと出会って友達になったの。初めて彼のレコーディングに呼ばれたのが1980年。ツアーメンバーになったのはずっと後のことよ。そうね…1983年にマーヴィン・ゲイのツアーに参加したの。タミー・テレルのデュエット曲をマーヴィンと歌ったわ。確かその1年か2年後に、ルーサーとツアーに出かけたのよ。ルーサーはアメージングな人よ。私は彼を本当の兄弟のように心から愛していたわ。(そして今でもとっても愛している)。ルーサーは私の親友だった。ルーサーとは20年以上も一緒に仕事をしたのよ。ところで私は彼の事を“ブラザー”と表現したけど、これはスピリチャルな意味なの。両親は違うけど、同じ創造エネルギーの一部だったってこと。魂の故郷が同じなのよ。

──今回の『フロー』は本当に素晴らしいアルバム。何故ソロ作を作ろうと思ったの?

ポーレット:このアルバム制作は、私にとって、とても大切で必要なプロセスだったの。人生を自分自身の手に取り戻すという取り組みだったのよ。だから絶対にやらなければならなかった。いつか自分の音楽を作らなければならない、ってことはわかっていた。怖がらないで挑戦するべきだって…。今までの人生を総括して、新しい第一歩を踏み出す時が来ているって気付いたのよ。

──今までのR&B中心の音楽活動とは違ったジャズ・オリエンテッドなサウンドになったのはなぜ?

ポーレット:ジャズは私が到達したい所へ無境界に行き着けるからなの。コマーシャリズムに迎合しないで、自分の音楽を自分の思い通りに解釈して表現することが可能だわ。曲自体を心から楽しむことができるの。ジャズは私が常に取り組みたかった音楽なの。

──このアルバムを聴く人にどういうメッセージを送りたい?

ポーレット:アルバムに収められた曲は、どれも私にとって意味のあるものだし、それぞれにストーリーや背景となる物語があるの。例えば「ザ・ギフト」は、才能があっても、それを使わないで押さえつけたりしている…という話なの。「ギブ・アス・メン」は私を感動させてくれる理想の男性について歌った、いわば讃歌みたいなものね。男の人でも、出会いたい女性のことを綴った歌、自分だけの讃歌を書きたいと思っている人はいるはずよ…。

──カバーが3曲ある。その楽曲を選んだ理由は?

ポーレット:カバーした曲は前からずっと歌いたかったものなの。スティービー・ワンダーの「ヴィジョンズ」を選んだのは、彼を讃えたかったから。彼は私の友達であり、大好きな人よ。そしてジャニス・イアンの「アット・セブンティーン」を選んだのは、周りでみんなが仲良く楽しんでるのに、自分がそこに加われない時の気持ちを歌った曲だから。その気持ちを表現してみたかったの。「スムース・オペレーター」は大きな挑戦だったわ。私はシャーデーと彼女の作品が好きだったから、別の視点からこの曲を捕らえるべきだって思っていたの。だからオリジナルと全く違うものにした。実現したのは、バーニー・マコールが本当にすごいアレンジをしてくれたおかげね。

──日本のファンにメッセージを。

ポーレット:心の窓を大きく開いて私の歌を聴いてね。そうすれば、あなたの心を揺さぶる何かを私の音楽から受け取ってもらえると思う。このアルバムを気に入って欲しい、そしてそこに込められた愛を感じ取って欲しい、そう願ってるわ。そして出来るだけ早くみんなに会いたい。その時まで、みんなポジティブな気持ちを忘れないで前に進み続けてね。最後に、少しの間だったけど、ファンの方たちと時間を共有できて良かったわ。本当にありがとう!!

取材・翻訳●Masaho Furuno

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