隼人加織、1stアルバム『pluma』特集 インタビュー

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――アントニオ・カルロス・ジョビンの「FELIDADE」をやっても、「ボサノバ唄ってます!」という雰囲気になってなくて良いですね。ここも自然。

隼人:もともとボサノバを歌ってやろう、みたいなのがないからだと思います。歌として捉えたので、ボサノバの歌い方じゃないですし。ボサノバって、私の捉え方としてはもっとスピリッツ的なものじゃないかと思ってるんです。ブラジルでもJ-POPみたいに、ブラジルのポップスみたいなのがあるんですけど、そこにも何か漂うものがあるんですね。それがボサノバのスピリッツ感なのかなって。ブラジルの曲を聴いてたときに、こういうのってブラジルにしかないよなぁって思うのは、そのスピリッツ感だと思うんです。だから名曲と言われるいろんな曲をカバーしましたけど、こういう風に歌わなきゃとか、気負うことなく取り組めました。

――だから何を唄っても曲との距離感が同じなんですね。

隼人:私は音楽をジャンル分けするのってくだらないかなって思っているんです。人に伝えるときに、伝えやすいからジャンルで分けるだけで。私自身も説明がしやすいのでブラジルのボサノバとか、サンバのテイストが少し入った音楽をやってるって言いますけど、音楽は一つだと思うんです。私はそれこそラップも聴くし、ロックも聴くし、演歌も聴く。音楽として素晴らしいと思えたものを今回取り込んでいます。

――その上でオリジナル曲が4曲入っていますが、それに関してはどう考えましたか? 全体的なサウンドは生感が強いですが、例えば8曲目「GRIPE」は、デジタルな音色ですよね。

隼人:そうですね。この曲は自分で作った曲ですが、あえてこういう方向性でアレンジをしてもらおうと思ってたんですよ。私は幅広く音楽が好きだという事実もありますし。だからこの曲は打ち込みをメインにした音で仕上げました。

――1曲目「虹~arco-fris~」はポルトガル語と日本語のミックスですしね。

隼人:この曲は自分で作ったのに自分で作ってないような感じ。よく曲が降りてくるって言うじゃないですか。そんなカッコいいことあるわけないって思ってたんですけど、この曲を作ったときはそんな感じだったんです。実際あるんだなぁって。30分くらいでできちゃったんですが、いつもなら歌詞を読み返して直したりするんですけど、この曲は出たときからポルトガル語と日本語だったし、あまり直してないんです。実は曲順は一回変わってて、悩んだんですよ。アルバムの1曲目はこれを聞いてくれる人との初対面の曲になるわけじゃないですか。そう考えたときにこの曲を持ってきたかったんですよ。。

――お父さんが日本人でお母さんがブラジル人ですよね。この曲は日本語とポルトガル語で書かれているから、そういう隼人さんのアイデンティティも垣間見えて、アルバムを象徴している曲でもあると思いますけど。

隼人:そうですね。この曲がなかったらと考えたら、きっと曲順は悩んでいたと思うんですよ。曲が降りてきたのは必然だったのかもしれないですね。しかも今年はブラジル移民100周年で、日本とブラジルは友好の年じゃないですか。あとづけとはいえ、すごいピッタリな曲だなぁと思います。本当に虹のように二つの国の架け橋になれたらいいなぁと思います。

――「桜空」「かざみどり」は日本的ですしね。ひとりの人が作ると自分の手癖や好きなコード進行ってあると思うんですけど、そこすらもいろいろ試しているのがわかる4曲ですね。

隼人:私の場合、曲の作り方がそれぞれ違うんですよ。いつもギターで作るわけでもないし、全部違う作り方なんです。だから違う雰囲気になると思うんですよね。私が歌いたいものがハッキリわかるようなものを選んでみました。1枚目にふさわしく、2枚目、3枚目と重ねていくと、人としても音楽としても成長すると思うんです。知識が増えてくるだろうし。1枚目に入れるにはこの4曲は良かったと思います。

――話を聞いて、小さい頃からお母さんの言葉で知っていたポルトガル語のリズムとブラジルでの生活。そこと日本でも生活していたという体験が混ざって、この独自の作品が生まれてきているんだなぁと思いました。

隼人:そこはこれから先、音楽をやるにしても大切にしたいところなんですよ。両方の要素を無理に押し出すのではなく、素直に表わせる範囲で。私も年齢と共にどんどん成長していくと思うので、その変化も楽しみながら、でもあくまでも自然体で活動していきたいですね。

取材・文●大橋美貴子

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