映画『ぐるりのこと。』主題歌に抜擢! Akeboshiインタヴュー

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国境や文化を超えた郷愁を感じさせるアイリッシュ・トラッドのムードと、サンプリングを駆使したエレクトロニカ的手法で作り上げられたやわらかいビート。伝統と革新を兼ね備えたオリジナリティあふれるトラックの上で、朴訥なあたたかい歌声がシンプルで美しいメロディを歌う至福の瞬間。ポール・マッカートニーが設立したことで知られるLiverpool Institute For Performing Arts(LIPA)で学んだ音楽理論と、現地のアイリッシュ・パブなどで体感した素朴な演奏の楽しみとを共存させた唯一無二の音楽性の魅力は、2005年のメジャーデビュー以降に急速に熱烈なファンを増やしながら現在に至る。その音楽を愛する一人、映画監督の橋口亮輔の最新作『ぐるりのこと。』主題歌に「Peruna」が抜擢され、入門編として最適な初セレクション・アルバム『Roundabout』のリリースも決まった。Akeboshiの音楽の普遍的な魅力が、さらに多くの人の耳に届く舞台は整ったようだ。
取材・文●宮本英夫

――このセレクション・アルバムはどんなふうに制作されたものですか。

Akeboshi:『ぐるりのこと。』という映画の監督(橋口亮輔)が「Peruna」をすごい気に入ってくれたらしくて、主題歌に使いたいということで、そのタイミングでセレクション・アルバムを出すということだったんです。最初は監督がセレクトするという案もあって、結果的に自分のセレクションになったんですけど。まずシングルやアルバムのリード曲は入れるということで、ライヴでいつも演奏する曲を入れて、残りはこれまでの作品の中から僕が“こっちがリード曲でも良かったな”と思っていた曲を入れました。

――「Peruna」を作った時にはどんな思い出がありますか。

Akeboshi:イギリスに行った時(97年)に、ポジティヴじゃない面もたくさんあって……治安が悪かったんですよ。80年代に暴動が起きて、街がすっからかんになって、荒れに荒れた後のリヴァプールだったので。住んでいた近くで少年が射殺されたり、家の近くによく立っていた売春婦が事件に巻き込まれて殺されたり。身近でそういう暗い事件が後を絶たなくて。学校から2分の距離に住んでいても、夕方5時以降はタクシーを呼んで帰ってくれって学校から言われていたり。45万人ぐらいの小さな街なんですけど、新聞やテレビからじゃなく、直に耳に入ってくる暗い事件がすごく多かったんです。それで曇り空になりがちなんですね、曲も。

――それは曲に影響せざるをえないですよね。

Akeboshi:でも、その中でもいい出会いがあったんですよ。カフェでアイリッシュ・ハープを弾いてるおじいさんに救われたりとか。決まった日にグリーンフィッシュというカフェでハープを弾いている人で、自分が凹んだり迷ったりした時はよく会いに行きました。実は7年間知らなかったんですけど、BBC(英国放送協会)でヨーロッパ一の長寿番組の、フォーク・ミュージックのラジオ番組をやり続けてる人で、最近僕の曲をラジオでかけてくれたりして。あと、アイルランド人の大家さんには個人的にすごいお世話になっています。学校の授業に出ない言い訳を(笑)紙に書いて提出する時も、“おまえはサボッてないから、それを説明すれば大丈夫だ”って言って、いろいろ手伝ってもらったりして。一軒家をシェアして一緒に暮らしてた仲間たちも含めて、いい出会いがあったから7年もいられたんですね。悪いことばかりだったらもっと早く帰ってきたと思います。

 
 
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