新進アーティスト、西寺実の正体とは?

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新進アーティスト「西寺実」が、12月1日に渋谷BOXにてお披露目ライヴを行なった。

▲アースシェイカー
▲SHOW-YA
▲ラウドネス
西寺実としては初めてのお目見えなので新進アーティストと書いたのだが、その正体は西田昌史(アースシェイカー)、寺田恵子(SHOW-YA)、二井原実(ラウドネス)という日本が誇るハードロック・バンドのヴォーカリスト3人組。3人のキャリアを合計するとこの道ン十年という顔ぶれなので、ホントは恐れ多くてとても新進アーティストなんて書けませぬ(笑)。

ことの発端は、2年ほど前、西田と二井原が寺田恵子のラジオ番組にゲスト出演し、アコースティック・ギターで歌って「何かやりたいね」と盛り上がったことだとか。3人とも多忙なのでそれからずいぶんと時間がたってしまったが、ようやくデビュー・アルバムのレコーディングも終わり、この日のお披露目ライヴが行なわれることとなった。

西寺実のコンセプトは、70~80年代のJ-POPの名曲をハードロック・アレンジして、3人が歌うというもの。まず選曲がすごい。本人たちが好きな曲、リスペクトしているアーティストの曲を中心に選んだというが、かなりドンピシャなツボを押さえている。一般的な認知度もありつつ、マニアックなセンスもあるという、この年代の音楽好きな人たちのストライク・ゾーンにハマりまくりだ。

この日は、RCサクセションの「スローバラード」、りりィの「私は泣いています」、レベッカの「フレンズ」、葛城ユキの「ボヘミアン」、アンルイスの「あヽ無情」と、琴線に触れる曲ばかりをプレイ。いまさら実力派なんて書くことすらおこがましいこの3人のパワフルなヴォーカルは、文句なく会場の空気をふるわせていた。まるで「ドリームガールズ」のザ・ドリームズに、ジェニファー・ハドソンが3人いるような感じ。ちょっと変わった例えで申し訳ないのだが、とくに男性陣2人の歌声がかなりソウルフルだったので、ついこの映画を思い出してしまった。日本を代表するハードロック・バンドのヴォーカルがソウルフルというと不思議に思われる方も多いだろうが、二井原はラウドネスに加入する前は京都のR&Bバンドで歌っていたという経歴の持ち主。西田もソロ・ワークではハードロック以外のテイストを加えた曲をレパートリーにしていたし、ロックンロールの起源と同じく彼らの根底にはR&Bがしっかり根づいているということだろう。余談ではあるが80年代初期にラウドネス、アースシェイカーと並び称されていた44マグナムのヴォーカル梅原達也も、マグナム解散後、元爆風スランプの江川ほーじんらとソウル・バンド「ライナセロス」を組んでいたのも、興味深い。

そんなソウルフルな2人の歌声に、寺田の艶っぽくて力強い歌声が絡み合い、J-POPの名曲が新しい息吹を吹き込まれたかのように、新鮮な輝きを見せる。ライヴは、花魁に扮した寺田と、彼女に恋する町役者(西田)と大阪町年寄(二井原)の三角関係というサイド・ストーリーを、弁士、山田広野の巧妙な語りで織り交ぜつつ、進んでいく。その合間に3人の間で交わされるフリートークもメチャクチャ面白く、会場は笑いが絶えない。長年、同じシーンで活動してきた3人だから、お披露目ライヴながら歌もトークも驚くほど息はピッタリだ。

カバー曲流行の昨今ではあるが、西寺実は圧倒的な歌唱力と歌心に加え、奇想天外なコンセプトで、他のカバー集とは一味も二味も違う作品を作ってくれそうだ。プロデュースを、プリンセスプリンセス、SHOW-YA、ユニコーン等多くのアーティストを手がけてきた笹路正徳が担当しているのも、聞きどころのひとつである。デビュー・アルバムは2009年2月11日発売の予定。収録曲は、以下の通り。

『ふぞろいのロックたち 其の壱/西寺実』
・たどりついたらいつも雨ふり/モップス
・あゝ無情/アンルイス
・私は風/カルメンマキ&OZ
・気絶するほど悩ましい/CHAR
・私は泣いてます/りりィ
・裏切りの街角/甲斐バンド
・フレンズ/レベッカ
・月のあかり/桑名正博
・キャンディー/原田真二
・スローバラード/RCサクセション
・ボヘミアン/葛城ユキ

ライヴ当日は奇しくも、ラウドネスのドラマー樋口宗孝の訃報が発表された日。長年苦楽を共にしてきた二井原はもちろんのこと、旧知の仲である寺田も西田も言葉にならないほど辛かったに違いない。しかし、彼らはそんな素振りはまったく見せず、西寺実として素晴らしい音楽を観客に届けようとエンターテイメントに徹していた。きっと樋口も空の上から西寺実のステージを見て、お腹を抱えて豪快に笑っていたことだろう。合掌。

大島暁美
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