ザ・カルト、待望の来日公演せまる

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きたる5月14日、東京・新木場STUDIO COASTにおいて一夜かぎりの来日公演を行なうザ・カルト。常に音楽的変容を重ねながら、幾度となくメンバー・チェンジを繰り返してきた彼らだが、極論を言えば「イアン・アストベリー(Vo)とビリー・ダフィー(G)こそがザ・カルトである」ということになるし、誰もそれに対して異論を唱えようとはしないだろう。

◆ザ・カルト画像

そして今回、この場で改めてお伝えしておきたいのは、この東京公演がとにかく必見であるということ。現時点における彼らの最新アルバムは2007年発表の『BORN INTO THIS』ということになるが、彼らは現在、『LOVE LIVE TOUR』と銘打たれたツアーを実践中で、この来日公演も当然ながらその一環としてのもの。これ以上の説明を必要としない読者も少なくないはずだが、要するに1985年にリリースされた彼らの2ndアルバム、『LOVE』の世界観を核とするステージが繰り広げられることになるわけである。

ちょうど発表から四半世紀を経たこの『LOVE』は、まさにザ・カルトというバンドを象徴する作品というべき1枚。実際、2001年に筆者がインタビューを行なった際、イアンは次のように語っていた。

「俺に言わせれば、『LOVE』こそが他のどの作品よりも雄弁にTHE CULTが何たるかを語っている1枚ということになる。もっとも自分らしいアルバムと言ってもいい。しかもあのアルバムに収められていた「SHE SELLS SANCTUARY」という曲は、バンド自体とは別の次元で新たな生命を持つようになった。楽曲そのものが人生を持っていて、ひとり歩きしながら生き続けているんだ。同時に、そういった作品をふたたび作り上げることが、自分たちにとってのゴールともいえる」

この発言からすでに9年もの年月が経過しているわけだが、『LOVE』という絶対的作品の価値や意味合いといったものは、当然ながら何ひとつ変わるはずもない。歴史的名作の完全再現などをテーマに掲げたライヴがジャンルを問わず目立つ昨今ではあるが、これはある意味、ザ・カルトというバンドがこれからさらに前に進んでいくために必要なプロセスでもあるのだろう。また、もちろん今回のライヴが同作の再現のみにとどまるようなものになるとは考えにくい。間違いなく、さまざまな時代のザ・カルトを堪能できることになるはずだ。

ところでイアンは、やはり2001年の同じインタビューのなかで、過去の作品群における音楽的変遷について語ってくれていたりもする。そこでの発言が非常にわかりやすく、初心者にとっての参考にもなるはずなので、ここに引用しておきたい。

「ザ・カルトは1983年にパンク・バンドとしてスタートした。何もかもすべてを自分たちで学んだ。ドアーズにストゥージズ、ジミ・ヘンドリックスやパティ・スミスといったところが基本的なバックグラウンドということになるかな。70年代のアメリカからは、音楽的にはもちろん、アティテュードの面でもとても影響を受けた。1984年に発表した1stアルバムの『DREAMTIME』は、ゴシックだった。続く『LOVE』はサイケデリック、その次の『ELECTRIC』ではリック・ルービンと一緒にAC/DCのようなベーシックなリフ主体のロックを作った。1989年に発表した『SONIC TEMPLE』はある意味とても80年代的な作品だといえるね。全体的にはハード・ロック的な手触りを持ちつつ、あの時代なりのポップ作品としての側面も持っていたと思う。ところがその次の『CEREMONY』で俺たちは過ちを犯してしまう。商業的にも成功した『SONIC TEMPLE』の波に乗って、その二番煎じと呼ばざるを得ないような作品を作ってしまったんだ。しかしその反省もふまえて作られた1994年の『THE CULT』は、アーティスティックな欲求に忠実な作品だったと自負しているよ」

その『THE CULT』でドラムを叩いているのが、現在、Jと活動を共にしているスコット・ギャレットであることは言うまでもない。そしてその後も紆余曲折を経ながらも存続し、現在を迎えているザ・カルト。ここで「今回の来日公演が最後になるかもしれない」といった常套句で危機感を煽るような真似はしたくない。が、少なくとも彼らがこうした趣向のライヴを日本で披露してくれるのは、今回が最初で最後になるに違いない。当時をよく知る初期からのファンのみならず、『ELECTRIC』期以降からのファンにも、ザ・カルトを一度も観たことがないという世代の人たちにも、是非、会場に足を運んで欲しいものである。

増田勇一

<LOVE LIVE TOUR JAPAN>
5月14日(金)東京・新木場STUDIO COAST
開場:18時/開演:19時
◆クリエイティブマン・サイト
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