【連載】Vinyl Forest Vol.13 ── i-Boat Captain「Slower/Moody Beat」

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今回、私、Blue Eclairがご紹介したいのは、絶好調のTiagoのニュープロジェクトであるi-Boat Captainだ。

Tiagoの最近のリリースについて少しおさらいをすると、Claremont 56のサブレーベルであるLengからシングルを出したばかりで、少し前にはSea Power&Changeというプロジェクトでもシングルをリリースしている。

TiagoはポルトガルのLux Clubで毎週末6時間のセットをこなしているという現役バリバリのDJでありプロデューサーであるのだ。変化の早いダンスミュージックの中、最前線で活躍するTiagoの楽曲の特徴は、フォローしているジャンルの幅が広い点だと言える。すでにリリースされているシングルを聴きくらべてみると、良い意味でジャンルがバラバラな楽曲達であると気づくと思う。だからこそ名義や変名、様々なプロジェクトを使いわけているのだろう。

さて、そんな多彩なTiagoが新しいi-Boat Captainとしてリリースするシングルとは、バレアリックの側面が強く出るプロジェクトのようだ。フィーチャーされているのはDJ KentのプロジェクトであるThe Backwoodsで(これは日本人とはしてはとても嬉しい速報だ)、このThe Backwoodsは、最近ではCoyoteのリミックスが収録されたシングルがすぐにソールドアウトしており、勢いのある面子が集まっている。またDJ Kentのつながりで、Claremont56のMuddとのつながりもあって、このi-Boat CaptainにはIs It Balearic?レーベルのボスであるCoyoteもリミックスに参加している。

ジャケットの色合いからも大体の雰囲気はつかめるだろうか、夕焼けの海辺で流れる音のイメージが沸くだろう。収録トラックについてだが、A-1の「Slower」はジャケットの雰囲気がぴったりマッチしたレイドバック・バレアリックサウンド、これからの季節に重宝しそうだ。A-2の「Slower (The Backwoods Remix)」はヒプノティックで、深い時間帯に大音量で聴きたいと思わせてくれる楽曲。じわりじわりと催眠にかけられたような錯覚になれると思う。

B-1の「Moody Beat (Coyote Remix)」はスタートからかなり呪術的なヴォイスループとドラムが怪しい雰囲気を醸し出している。珍しいことにフランジャーのエフェクトが多く使われているのが意外だった。B-2のCoyoteのバレアリックサウンドの側面には、いわゆるチルアウト系の楽曲だけでなく呪術的で怪しい側面があるのだが、今回はその側面が出ていると感じる。

ポルトガル、イギリス、そして日本の勢いのある面子が集まったプロジェクトi-Boat Captainをぜひ、おすすめしたい。

text by Blue Eclair

◆Blue Eclairs Room
◆【連載】Vinyl Forest アーカイブ

──【連載】「Vinyl Forest」とは

筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。

そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、

「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」

という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。

text by Dee-S&Blue Eclair
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