アントン・コービン監督、『ラスト・ターゲット』を語る

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英国アカデミー賞にノミネートされた革新的な劇場映画デビュー作『コントロール』(2007)の成功に続き、写真家・グラフィックデザイナー・ミュージックビデオ監督としても数々の賞に輝くアントン・コービンが、ジョージ・クルーニーを主役に迎え、2作目の『ラスト・ターゲット』を引っ提げて戻ってくる。

◆『ラスト・ターゲット』予告編映像

マーティン・ブースの1990年の小説『暗闇の蝶』を基に、スウェーデンでの仕事が失敗した後イタリアの山奥の中世の村に流れ着いたアメリカ人の孤高の殺し屋ジャック(クルーニー)を描いた物語だ。イタリアでは銃の製造者として生き、テクラ・ルーテン(『ヒットマンズ・レクイエム』『LOST』)演じる謎の暗殺者マチルデに注文通りのライフル銃を作る。そして目立たないようにしろと忠告されていたにもかかわらず、ヴィオランテ・プラシド演じる地元女性のクララと逢瀬を重ねるようになる。

オランダ生まれのアントン・コービン監督は、劇場映画デビューを果たす前からすでにアーティストとして有名だった。『コントロール』は、元々29年前に憧れのミュージシャンの近くにいたいとロンドンに移住したときと同じ情熱を胸に、ジョイ・ディビジョンの音楽やそのバンドの悩めるシンガーソングライター、イアン・カーティスをドラマティックに描いたという、極めて私的な作品。U2やニルヴァーナのビデオを監督するにせよ、ディペッシュ・モードのアルバムスリーブやツアーをデザインするにせよ、アントン・コービン監督にとって音楽は常に重要である。

──今はどこを拠点にされていますか。ロンドンですか、オランダですか。

アントン・コービン監督:今でもロンドンでかなりの時間を過ごしているが、住まいはハーグ(オランダ)だ。『コントロール』の製作のために、ロンドンの住居を売らなければならなかったからだ。でもハーグへ移り住んだのも悪くない。私の写真を焼いてもらっている店が(ロンドンの)オールド・ストリートにある。1979年に初めてロンドンに行ったとき、その店からそんなに離れていないダルストンの家に住んでいたんだ。デヴィッド・ボーイを撮影し、お湯の出ない家に帰っていったのを思い出すよ。

──どのような経緯で本作を監督することになったのか、お聞かせください。

アントン・コービン監督:2008年に小説を脚色した脚本の第3稿を手に入れた。それを読み、プロデューサーに連絡を取ったところ、1990年に出版された原作が送られてきた。素晴らしい本だと思った。だからフォーカスが興味を持つ前から、私はすでに関わっていたんだ。『コントロール』同様、一匹狼の話というのが好きでね。それに主人公は人生のあらゆる面を正当化していて、そういう内面に深く切り込んでいる点も気に入った。この男はこれまでの人生をずっと間違ってきたという認識がある。果たして人間は人生を変えられるのか。そういったテーマが好きなんだ。

──本作は雇われ暗殺者で、ガンマンの物語です。ご自身はカメラマンですが、写真家というのはガンマンに似ていますか。

アントン・コービン監督:それではあまりに単純化しすぎだ。私はものを作り上げるが、銃ではものを殺してしまう。

──今回はあなたの作品にしては音楽が前面に出ていませんね。

アントン・コービン監督:確かにそうだね。だが、私の親友でもあり、『コントロール』には医師役で出演してくれたヘルバート・グリューネマイヤー(『U・ボート』)が今回の音楽を作ってくれた。次回作にはぜひ出演してほしいね。最終的なクレジットには、私が若い頃に聞いていたオランダの歌も入っている。私の映画では必ずオランダの歌を使っているんだ。

──本作品を撮影するうえでこだわったところはどこでしょうか?

アントン・コービン監督:私も、撮影監督のマーティン・ルーエもどちらもシンプルな撮り方が好みでね。ほとんどの部分で、複雑なカメラの動きは避けた。マーティンの照明では普通のものも美しくなる。

──撮影がどこで行なわれようと、ご自身のライカのカメラを持ち歩き、映画には登場しないような写真も撮られていたそうですね。

アントン・コービン監督:私はそこにある光だけで撮影する。デジタルカメラは使わない。撮影中に撮った写真はスナップ写真だ。そのうち撮らなくなるかもしれない。写真は休むだろうな。

──映画のロケ地となった、イタリアのアブルッツォがとても素敵ですね。アブルッツォで、2009年に地震が起きたこともロケ地となるきっかけになったのでしょうか?

アントン・コービン監督:(アブルッツォは)映画では滅多に目にすることのない正真正銘の自然環境だ。(地震が起きたことで)撮影期間中に使う経費や完成作品が将来この地域への観光を促すことを考え、本作の撮影でこの地域の経済復興を助けたいという意見でまとまったんだ。ジョージもスタッフも「(ロケ地は)アブルッツォを選ぶしかない。あの地にはこのような映画が必要だし、この作品にはあそこのような美しい舞台が必要だ」と言ってくれたよ。


映画『ラスト・ターゲット』
2011年7月2日(土)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
(C)2010 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
◆『ラスト・ターゲット』オフィシャルサイト
◆BARKS 映画チャンネル
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