-異種格闘技対談-Ring【round2】第19回/柿澤秀吉(秀吉)

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-異種格闘対談-Ring【round2】第19回

逹瑯(ムック/Vo)ゲスト 柿澤秀吉(秀吉/Vo&G)

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逹瑯:歌詞に書きたいことなんてそうそうたくさんある訳じゃないからね。本当に伝えたいことなんて一握りだし。でも、書くことはなくならないと思うよ。そう思える余裕は出て来たかな。

逹瑯:好きみたい。こういう細かいこと。ほら、ここね、重りを付けてあるからジャンプしても跳ねないんだよ(机の上で何度も跳ねさせて見せる)。

秀吉:ほんとだ!

逹瑯:ね(机の上で何度も跳ねさせて見せる)。

――っていうか、もう解ったから跳ねさせないで。バンバンする音が録音されちゃってテープ起こしするとき耳が痛いから………。

逹瑯:(わざと録音機材のマイクの近くでおもいっきり跳ねさせる)

――………………こういう大人にはならないように。

秀吉:あははは。最高です! でもやっぱり「娼婦」コピーしてたときは、こういう方だってのは想像してませんでした(笑)。

逹瑯:あんま想像できないよね(笑)。

――せっかくだから聞きたいことあったら聞いてみて。

逹瑯:って、そんなにないよね。俺も憧れの人に会っても、聞きたいことって特にないもんなぁ。やっぱ、休みの日に何してるんだろ? ってことくらいだもんね(笑)。あとは“俺くらいの歳のとき、何考えて歌詞書いてましたか?”とか“スランプってその頃ありました?”とかかな。

秀吉:あ! 僕、そのままの質問を逹瑯さんにしたいです! すっごい聞きたいです!

逹瑯:何出した頃かな? 26歳の頃って。初めて海外行き始めたあたりかな? ってことは、アルバムで言うと『鵬翼』の頃かぁ。シングルだと「雨のオーケストラ」の頃だね。

――ムックが変わったとか言われてた頃だね。

秀吉:え!? そうだったんですか?

逹瑯:うん。言われてたね。ちょっとメロディアスというかサウンドがキャッチーになったって言われた頃だね。

――当時、私はそうは思わなかったんだよね。それまでのムックあっての到達点でもあったと思ったというか。ムックらしさを失った訳ではなかったし、むしろムックの初期が出てる感じこそしたというか。

逹瑯:俺もそう思うんだよね。いろいろと言われたアルバムだったけど、この前聴き直して『鵬翼』って結構いいアルバムだなぁって思ったんだよね。

秀吉:俺、『鵬翼』も大好きですよ! 変わったって思わなかったな。変わったといえば、今の方がすごく変わったと思うし。『鵬翼』の頃はそんなに感じなかったな。『鵬翼』、すごくいいアルバムだと思いましたけど。

逹瑯:ヴィジュアル・イメージがシンプルになったこともあって、なんか普通じゃなくいきたいっていうのがサウンドにも歌詞にも現れてた気はするけどね。自分的には歌詞を少し小難しく書こうとし過ぎてたのかなって思ったりはするけど。いろいろともがくよね、バンドが変わろうとするときって。やっぱ抵抗というか、葛藤があったのは感じるからね。

――何に対する抵抗だったんだろう?

逹瑯:何だろ? 自分かな? 世間かな? 解らないけど、何かに抵抗はしてた時期ではあったね。迷いがあったんじゃないかな。

秀吉:いままでで1番のスランプっていつ頃でしたか?

逹瑯:そうだなぁ。「流星」の頃だから、アルバムで言うと『極彩』の頃かな。「流星」は本当に歌詞が書けなくて苦しんだね。「ホリゾント」も書けなかったし、「アゲハ」も書けなくて苦しんだけど、1番キツかったのは「流星」だな、やっぱ。自分の中にあるハードルが越えられなかったね。

秀吉:そうなんですね。スランプなんて無いと思ってました。

逹瑯:スランプが無い人なんていないと思うよ。絶対あると思う。

――歌詞ってその人そのものだからね。真似ているモノはすぐに解る。だからこそ、そのものが吐き出せる状況ってすごく大事なんだと思うし。

秀吉:そうだと思いますね。

逹瑯:真似てるモノってすぐに解るからね。ナチュラルじゃなく当て嵌めたような歌詞ってグッと来ないもんね。

――難しい言葉や解りにくい表現がいい訳じゃないからね。なんでもない言葉の使い方にグッと感情を掴まれたりするものだからね。

逹瑯:年齢に関係なくその表現が上手い人は上手いからね。天性なんだろうな。本物と偽物ってすぐ解ることない?

秀吉:はい! 解ります。何かに憧れて書いてるなとか、真似て書いてるなってのはすぐに解りますね。オリジナルになっていないですもんね。

逹瑯:そう。フェイクとリアルの差だよね。馴染み方が違うんだよね。

――解る。原稿でもそうだよ。何かにかぶれて書いてるなっていう文章はすぐに解る。自分の中から出て来ていないフェイクは不思議と解るからね。それってリズム感だったり行間だったりに出ると思うんだよね。原稿も歌詞も曲もそうだけど、ただ上手いだけって魅力ないし。

秀吉:あ、それすごく解ります。味というか、その人の奥が見えるような、そんな言葉に惹かれるんですよね。すごく解ります。

――ムックの歌詞で言うと「ファズ」の“東京 コイントス ダイブ”っていうのは最高のハマりを感じたし、東京という街をその一言に凝縮させたすごさを感じたんだよね。その一言の中に、迷いも苦しみも生きにくさも全部詰まってる、最高の歌詞だと思った。「フリージア」のAメロの“声は胸を刺す プライド悲しい 百獣の王の群れ/全て与えて飼いならした檻の中で 今夢を見る?”って、鳥肌が立つほど胸を締め付けられたし。対照的な言葉が畳み掛けられるBメロの歌詞も最高だし、サビのメロと歌詞のハマりもアウトロの長めの泣きのギターも、すべてのバランスが最高の曲だと思ったしね。PVの映像との絡みも絶妙だったし。

秀吉:すごく解ります! バランスってすごい大事ですよね。

逹瑯:書きたいことなんてそうそうたくさんある訳じゃないからね。本当に伝えたいことなんて一握りだし。アルバム出す度に空っぽになってる。

秀吉:ホントですか!? 逹瑯さんでも?

逹瑯:もちろん。いつもギリギリのところまで吐き出してるからね。でも、書くことはなくならないと思うよ。そう思える余裕は出て来たかな。空っぽになった先も毎日生きてる訳で、いつの間にか気づいたら言いたいことや感じることができてて、それを吐き出したくなっているんだと思う。そんなもんだと思うよ。秀吉は結成何年目?

⇒NEXT INTERVIEW-4

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