9GOATS BLACKOUT、2ndシングルに込める新たな問い

ツイート
8月10日、9GOATS BLACKOUTがシングルとしては約3年振りとなる音源をリリースする。タイトルは「Rorschach inkblot(ロールシャッハ・インクブロット)」。その意味は、左右対称のインクの染みが何に見えるかという心理分析テストであり、投影法に分類される性格検査のひとつ、である。

◆9GOATS BLACKOUT画像

これまでも、非常に理知的なテーマを掲げてインタラクティブ性に富む作品をリリースしてきた彼らだけに、この新たな問いかけに興味は尽きない。

このバンドの魅力は、vo.ryoの存在抜きには語れない。V-ROCK界で築き上げたキャリアに裏打ちされた歌唱力とライブでの存在感は、ヴォーカルだから目立つ、という観念など軽く超えている。咳払いひとつ許されないかのような暗黙の緊張感で空間を支配し、客席は、一声または一挙手一投足を逃すまいと釘付けになる。終始カリスマティックなステージングで観るものを圧倒する実力者だ。

歌詞やメッセージ、情景描写も老獪そのものであり、付け焼刃とはほど遠いインテリジェンスを窺わせる。一度老人にまで達し、この世の現象、あるとするならば冥界を全て見渡し、同じ魂を持って生まれ変わったかのように感じるほどだ。

“生と死”という摂理を、深く、重く、時に優しく問いかける。また、その知性と感性によって、不確定要素に対するひとつの答えを提示してくれる。これまでも、V-ROCKのアーティストが多く掲げてきた、生命の永遠のテーマ、“生と死”。彼ほどの真摯さをもって探求する者は少ない。

自己表現というものに対し、V-ROCKほど真摯さにおいて突出したジャンルは無い。私個人は今でもそう信じている。彼らが示し続けたスタンスや独創性は、そのV-ROCK界でもトップクラスであると判断せざるをえない。

彼らは、9GOATS BLACKOUTという世界の確立と、“心に響くもの”を創る、ということにのみエネルギーを注いでいるのだという。

バンドの主体となる楽曲へのこだわりは、一聴して明らかである。プログレッシブなアレンジが、バンドのダークサイドを効果的に表している。その非常にマニアックで斬新なアプローチは、個性派揃いのV-ROCK界広しといえど一線を画す。半面、壮大でロマンティックなバラードは眩いほどの光彩を放ち、二面性の対極としてはあまりに徹底的で、その振幅は凄まじい。しかし、そのどちらも受け容れやすいメロディが内包されている辺りが、彼らをして非凡と言わしめる所以だ。

ジャケットなどのアートワークは、vo.ryo自らの手によるもので、作品ごとのイメージを完璧にヴィジュアライズしている。その他、全体のイメージを支えるメイク、衣装ひとつとっても、現在のV-ROCKのメインストリームからは逸脱した異端の趣きがある。全て、彼らの世界観を表すための“作品”として妥協せず、心血を注いだ結果であろう。

これらの要素は、あくまで彼らの自然発生的なセンスによるものであり、作為的なものではないということに驚きを禁じえない。

成の事実として、メジャーでは個性、芸術性が保持し難いという側面がある。彼らはメジャーという世俗からの、絶対的な距離感によって真価を発揮し続けるだろう。消費音楽と言っては聞こえが悪いが、あくまでその方角だけは意図して向いていないと本人達は言う。彼らの目指す“心に響くもの”とは、時代を越えて“残るもの”と同義ではないだろうか。それを追究した結果、9GOATS BLACKOUTという存在そのもの、作品、記憶が残り続ける。アーティストにとってこれほどの喜びは無いはずだ。セールス面の成功は副次的な名誉でしかないのだろう。

約8ヶ月の休止期間を経て、今年1月に活動を再開したが、ここにきて休止後初の音源リリースとなる。新たなファン獲得のためのプロモーション・ツールとして、次なるステージへのマイルストーンとして、このシングルの持つ役割は大きい。ライブで既に披露されている楽曲なだけに、生の場で精練されたグルーヴも楽しみのひとつである。
彼らからの新たな問いに耳を傾けよう。

文:金本 英嗣

◆9GOATS BLACKOUTオフィシャル・サイト
◆BARKS ヴィジュアル系チャンネル
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス