【連載】Vinyl Forest Vol.16 ── Psychemagik「Feelin' Love / Wake Up Everybody」

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近年、Nu-Disco/Re-Edit界隈でトレンドとなりつつある90's RevivalとBalearic新解釈。このムーヴメントはクリエイターレベルですでに定着しつつあるのだが、単なる「あの頃の音楽は良かった。」という懐古主義ではない。シーケンスの組み立て方やシンセの音色で往年の雰囲気を踏襲しながらも、キチンと現在進行系の解釈があるからこそ我々リスナーを惹きつけるのだ。

今回ご紹介したい1枚は、Nu Disco/Re-Edit界隈でもジワジワと人気が出てきたUKの新星デュオ・Psychemagikの最新作。まだシングルリリースは当作品で4枚目となるPsychemagikなのだが、すでにフルアルバムのリリースを控えており、過去作品は海外市場でも高騰し、入手困難。世界中のNu Disco/Re-Editマニアが注目しているアーティストである。

本作品は両面ともにRe-Editではあるが、素晴らしいセレクトとRe-Editワークで筆者のツボを刺激してくる。A面の「Feelin' Love」は、Paula Coleが96年にリリースしたアルバム『This Fire』収録の「Feelin' Love」をチョイス。原曲よりも若干ピッチを上げ、原曲の雰囲気を損なうことなくR&BテイストにBalearicを加味した味付けがまさに新感覚だ。これまで非常にマニアックなネタをチョイスして再構築というNu-Discoのトレンドに中指を突き立てる(笑)爽やかなPopさが逆に清々しい。

一方のB面「Wake Up Everybody」は、往年のPhilly Soul代表的アーティスト・Harold Melvin & The Blue Notesが76年にリリースした「Wake Up Everybody」を料理。ネタのチョイスもさることながら、ドラム音色のセレクトも素晴らしさが光る好トラックだ。あえてベタなRe-Editに仕上げずにビーチサイドが似合いそうなChill Outトラックにまとめてくるところがニクい。ドラム音色と打ち込みアレンジが違うだけで、甘茶soulがBalearicに変化するという新発見。まだまだRe-Editでやれることはたくさんあるんだなぁ、と思わず唸ってしまった。

ここ2、3年は、Nu Disco/Re-Edt界隈も劇的な進化を遂げ、オリジナル作品も続々と登場してデータでも購入できるタイトルも増えてきた。しかしながら、まだまだこのようなRe-Edit作品はデータ販売はなしというパターンが多いし、アーティスト自身が「アナログで作品をリリースしたい。」という熱意のみで利益とかまったく無視してリリースしてしまう事も珍しくない。もちろん、当作品もプレス枚数は350枚位は流通しそうだが、買い逃した時にはすでにプレミアム・アイテムとなるのは確実。ぜひ、店頭やWebで見かけた際にはチェックして頂きたい。

text by Dee-S

◆【連載】Vinyl Forest チャンネル
◆drumatrixx mag

──【連載】「Vinyl Forest」とは

筆者の私達は音楽好きなのは言うまでもないのだが、それでも年齢を重ねるにつれ不感症になりつつある。原因はハッキリしていて、テクノロジーの進化によって低価格、高品質な制作環境が容易に手に入る昨今にもかかわらず、楽曲のクオリティが退化の一途を辿っているからだ。低コストで在庫を抱えずに済むからレーベルは多くのリリースができる反面、現場ではとても使えないトラックも非常に多い。

そこで、データ音楽販売が主流となった昨今のダンスミュージック界隈の懐事情を鑑みて、

「私たちは、レーベル側が在庫リスクを背負い、インディながらも頑なにVinylをリリースするという行為そのものが、レーベルが充分な楽曲クオリティを保証しているのではないのか?」

という持論(フィルタリング)で巡り会えた珠玉の刺激物と、今では考えられない予算を投じてリリースされた名盤をご紹介していく。

text by Dee-S&Blue Eclair
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