THE BOHEMIANS、大きな目標を夢ではない現実として予感させたツアー・ファイナル

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10月30日の千葉LOOKを皮切りに、全国14ヵ所というスケジュールで行なわれたTHE BOHEMIANSのメジャー第1弾ツアー<憧れられられられたいツアー2011>が、11月29日(火)Shibuya WWWにてファイナルを迎えた。

◆THE BOHEMIANS 画像

本来ならば原稿のクライマックスに持って来るべき言葉であるのだが、そこに至るまでこの逸る想いを書かずにはいられなさそうなので、まずはもったいぶらずに書かせてもらうことにしよう。

彼らはこの日、あの場にいた誰もが認める最高のライヴをした。

2011年11月29日(火)19時――。

真っ暗なステージにメンバーが姿を現すと、フロアのほうぼうから“待ってました”と言わんばかりの歓声が上がった。海外のライヴハウスのノリを思わせる空気感だ。

平田ぱんだ(Vo)以外のメンバーがそれぞれの定位置に着く。ビートりょう(G)は肩幅ほどに両足を開いて構えると、ステージ中央に凛々しく立った。次の瞬間、りょうはバイオリンの弓でエレキギターの弦を鳴らした。THE BOHEMIANSのメジャー1stアルバム『憧れられたい』の最初の音である。客席からは轟音のような歓声が沸き上がる。

一般的にこの奏法は、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが発案したオリジナル奏法として知られているのだが、実は、1960年代中期から後期にかけて活動していたイギリスのロックバンド、ザ・クリエイションのギタリストであったエディ・フィリップスが最初だったりするらしい。エディは、りょうが右胸に付けている大きなバッチの中に佇む、彼が愛して止まないザ・フーのピート・タウンゼントが、ザ・フーに誘ったこともあるというギタリストでもあるのだ。

まさに。憧れの象徴からの幕開け。そんな幕開けに、身体がギュッと締め付けられるようなゾクゾク感を覚えた。

1stアルバムに付けられた『憧れられたい』というタイトルも、<憧れられられられたいツアー2011>というツアー・タイトルも、1stアルバムの1曲目にチャック・ベリーのカヴァー曲を持ってきているのも、すべては憧れから。そう。彼らの今は、すべて“憧れ”から始まっているのだ。

逆光の中で「メイビリーン」のイントロへと繋がるギター音を弓で鳴らし終わったりょうは、弓を持ったその右手を真っ直ぐ天井へと高く伸ばした。

それを合図に始まった「メイビリーン」。ビートりょう、星川ドントレットミーダウン(B)、本間ドミノ先生(Key)、チバ・オライリー(と無法の世界)a.k.aジャン(Dr)が音を放つと、眩いばかりの照明が暗がりだったステージを一気に照らしつけた。とその瞬間、下手から完全に活ききったぱんだが勢い良く躍り出てきた。SHOWの始まりだ!

厚みが増したサウンドと、彼らの音と歌だけを求めてここにやってきたオーディエンスのいつも以上の熱い歓声がぶつかり合ったその音像は、会場内の温度を一気に上昇させた。

「THE BOHEMIANSです! 今日はよろしく!」(平田ぱんだ)

「メイビリーン」のアウトロから「夢と理想のフェスティバルに行きたい」のイントロに繋げられた時間の中で、短く言葉を挟んだぱんだは、込み上げる感情を押さえきれなかったのか、“今日は楽しい最高の1日になりそうだぜっ!”と「夢と理想の~」の曲中にも叫び、間髪入れずに「太陽ロールバンド」まで音を止めることなく続けて届けた。

そんな彼らの音は、実に安定したバンド・サウンドへと変化していた。中でも、このツアーで大きな成長を見せたチバ・オライリー(と無法の世界)a.k.aジャンのドラムの重厚さは、THE BOHEMIANSの音を確実に変化させていたのだ。チバ・オライリーと共にサウンドを支え、最高のグルーヴを描き出していた星川ドントレットミーダウンのベース・フレーズも、上モノを引っ張る本間ドミノ先生の鍵盤と絶妙な距離感で絡み合い、ビートりょうのギターはその土台の上で力強く熱いフレーズを響かせ、ぱんだはその音の中にのめり込むように手放しで楽しんでいたのが伝わってきた。

しかし。この日のライヴを熱くしたのは彼らの音だけではない。「お気にのチェルシー」での息の合った掛け声や、オーディエンスの手拍子は、初日の千葉LOOKで見たときよりも断然厚みを増していたのだ。たった1ヵ月なのに……。私が最初に見た、東京初ワンマン・ライヴ直後の新宿・紅布で見た約4ヵ月前のライヴと比べても、俄然バンドとしての厚みも増していたのだ。

やるな、THE BOHEMIANS。
やるな、THE BOHEMIANSファン。

バンドは1人では大きくはなれない。バンドを大きく育てるのはライヴであり、そこにいてくれるオーディエンスなのだ。彼らがデビュー後、いままで応援してくれたファンたちはもちろんのこと、新たにTHE BOHEMIANSを知って集まってくれた仲間たちに深く愛してもらったことで、バンドを大きく成長させていたのだ。いや、それにしてもだ。短期間でこの成長っぷりはたいしたものである。

最高にご機嫌なビートでフロアを躍らせてくれた後、空気を一変させたのは「軍団」と「王国の謎」だった。

ステージを彩るライトが深い赤に落とされると、ルーズに響くマイナー・コードがシニカルに曲を引っ張った。暗めの曲調とギター・ソロが最高にロック。ちょっぴり反逆的なぱんだの歌い方も最高にロックだ。そんな「軍団」から間髪入れずに続けられた「王国の謎」は、音源ではチバ・オライリーが吹いたコルネットから始まるのだが、ライヴではチバ・オライリーのドラムによって繋がれていた。大阪のワンマン・ライヴでは、「軍団」と「王国の謎」の間に、キャッチーな印象の「私の家」が挟まれていたことから随分印象が違ったのだが、ディープな2曲が並べられて届けられたこの日は、より色濃く両曲の毒々しさが際立っていたと感じた。また、「王国の謎」の星川ドントレットミーダウンのベースが音源よりも太く楽曲全体を引っ張っていたことと、Aメロではまったく参加していない本間ドミノ先生の、間奏のピアノ・ソロでの弾け具合が半端なく印象的だったことも、ここに書き加えておくとしよう。

そこから「私のシンフォニー」を挟んで届けられた「私の家」では、星川ドントレットミーダウンのベース・フレーズからバトンを受け取るように音を繋げたギター・ソロで、りょうはいつもよりも長めのチョーキングを魅せた。何の説明も要らない。他の何よりもこれこそが最高のパフォーマンス。このときのりょうは、それほどにクールだった。

そしてやはり。初日の千葉でも、初ワンマン・ライヴだった大阪でも叫んだ様に、この日もぱんだは「パーフェクトライフ」の歌詞を変えて歌った。

“今世紀最高のロックスターが言うんだ めんどくせえ あともうしねえ 勝手にやめんだよ! 毛皮のマリーズ!”
“戻りたい…なんて思わないね そりゃShibuya WWWがいいだろ!”

――と。

“今が最高”という想いと、その“今”を一緒に盛り上げたいと願い、これまで一緒に頑張って来た先輩であり友人である毛皮のマリーズの解散を悔しく想う心情が、赤裸裸に吐き出されたモノだった。

この歌詞も、もともと憧れていたロックスターの解散をどうしようもなく悔しく嘆いたモノであるが、こんなにも身近な存在である毛皮のマリーズが自分たちのデビューとほぼ同時期に活動を止めてしまうことへの悔しさを、彼は直接言葉にできなかったのだろう。だからこそ。言葉にできないほどのやるせなさを、こうして歌詞に投げ込んだのだろう。そんな“悔しさ”と、自分たちの音に身を委ねてくれているオーディエンスへの“愛しさ”の両方を、彼らは音と歌で届けたのだった。

そこから続けられたのは「憧れられたい」。

「これね、チバくんが……」(平田ぱんだ)

ぱんだが、「憧れられたい」のイントロで使われるクリスマスを思わす鈴(スレイベル)を手に話し始めると、「9,800円!」(オーディエンス)とフロアから声が飛んだ。ぱんだはその声をとても嬉しそうな笑顔で受けとめた。

「よく知ってんじゃん(ニッコリ)。そっかそっか、みんなTHE BOHEMIANS仲間から聞いたのかい? 嬉しいね(ニッコリ)。そうそう。そうなんだよ、チバ・オライリーくんがこの曲のためだけに9,800円も払って買って来たんだよ。今回のツアーはね、各地でこの鈴をみんなに鳴らしてもらって、全国でこの曲をやってきたんだ。羨ましいだろ。どうだい、やってみたい人~」(平田ぱんだ)

「はーい!」という声と共にフロアから無数の手が挙がった。ぱんだがその内の1人にスレイベルを手渡すと、チバ・オライリーがスティックで曲のテンポを誘導し、選ばれたオーディエンスはチバ・オライリーのスティックのテンポにスレイベルの音を重ねた。この日、彼女の奏でたスレイベルの音からこの曲は始まった。ステージとフロアに、とてもあたたかな風が吹いた気がした。

この空気がいつか思い出に変わるとき、彼らはきっと憧れの存在になっているに違いない。そう想った。そんな想いは、後半に並んで届けられた「おぉ!スザンナ」と「THE ROBELETS」で、早くも確信へと変わった。「おぉ!スザンナ」では、チバ・オライリーのドラムが始まると場内は曲を分かり歓声が上がる中、ぱんだが1人1人メンバー紹介してゆく。紹介する度にわき起こる歓声とともに、ドラムだけだった楽曲は、どんどん「おぉ!スザンナ」に重なってゆき、びーとりょうのイントロのリフでそれは沸点を越え、そのまま「THE ROBELETS」へと繋がれた。

絶対的な存在感を放つこの2曲は、この先もずっと彼らの代表曲として歌い継がれていくであろう。

そんなTHE BOHEMIANSのキラー・チューンが届けられ、とっておきのダンス・ナンバー「ダーティーリバティーベイビープリーズ」では、このツアーで完全に定着した、ぱんだが客席と本間ドミノ先生に無理難題をふっかけるコール&レスポンスで場内を盛り上げ、ライヴはラストへと向かっていく。もちろん、ラストは「ロックンロール」。

「僕たちは、誰にも相手にしてもらえずに勝手にライヴをやっていたときから、ずっとこの曲を最後にやってきました。俺たちは間違ってないって、そう思ってずっとやり続けてきました! これからもずっと歌い続けていきます! そして僕たちが叫んできたことが間違いじゃなかったことを、いつか証明してみせます!」(平田ぱんだ)

信じてるのはロックンロールだけさ——。(「ロックンロール」より)

その想いが間違いじゃなかったことを証明する日が近づいていることを、徐々に広がりつつある楽しい予感を、彼らは感じさせてくれたのだった。

彼らがステージを降りてからも、彼らを呼ぶ声は途切れなかった。彼らがステージ裏で、その声をどれほど嬉しく思っているかと想うと胸が熱くなった。

彼らは、本編で全部出し切って、すっかり普通のバンド小僧に返った素顔でステージに戻ってきた。

「ありがとう。本当に嬉しいよ。間違いなく最高だよ、今日は。だからアンコールやるよっ! でもね、俺、客席に“あの人”の顔を見つけちゃったの。だからね、“アンコールで楽しくカヴァーやるから一緒に遊ばない?”って電話したの。そしたら、“いいよ”ってさ。一緒に歌ってくれるってさ! だから呼ぶよ。用意できたかな? (楽屋に向かって)呼ぶよ~っ、志磨遼平!」(平田ぱんだ)

会場は爆発的に沸いた。志磨遼平がTHE BOHEMIANSの音を高く評価し、後輩として可愛がっていることは周知の事実であるが、まさか、ここで志磨本人が登場するとは思ってもみなかったのだろう。その師弟関係が生で見れるとあってオーディエンスは眼を輝かせた。

しかし。ここからの志磨とぱんだのやりとりがとにかく可笑しかった。志磨は手持ちでマイマイクを持って出て来るも、ヴォーカリストの性か即座にぱんだのマイク・スタンドにマイクを嵌め込んだのだ。

「あ、マイク・スタンド使います?」(平田ぱんだ)
「あ、そっか。これは君のだね」(志磨遼平)
「あ、いいです。使って下さい!」(平田ぱんだ)

ステージに出ることを了承したものの、突然呼ばれて引っ張り出されたことへの動揺が隠せない志磨と、いつになく遠慮がちなぱんだの仕種がとても微笑ましい一幕だった。

そして、千葉の初日では次世代のロックンロール・シーンを担う仲間であるTHE WAYBARKとザ・シャロウズらと声を重ねたTHE HIGH-LOWSの「ロックンロール黄金時代」を、この日は志磨遼平と共に届けたのだった。

「やっぱいいねロックンロール。でも、今日はお買い物のついでにふらっと寄っただけだったのにステージに呼ばれたから、なんかどうしていいか解らない気分だよ。ってことで、もう1曲歌ってもいい? これ、ずっと前からいつか歌いたいって思ってたの」(志磨遼平)

と、またまたライヴは思わぬ展開へ。志磨がTHE BOHEMIANSのメンバーにそっと耳打ちすると、志磨遼平ヴォーカルによる「おぉ!スザンナ」が始まった。会場は想像もしなかった展開に大喜びだ。いやはや。志磨遼平の「おぉ!スザンナ」とは。そうとう貴重なサプライズであった。ぱんだは上手からギターを持って来て構えると、演奏と歌を共に盛り上げた。

「ちょっと! この人、もうすぐバンドが解散するからTHE BOHEMIANSを乗っ取るつもりかもしれないから、みんなあんまりノるなノるな(笑)!」(平田ぱんだ)と合いの手を入れるぱんだ。そんなぱんだの言葉を受け、オーディエンスはぱんだを嫉妬させるほどにライヴを盛り上げたのだった。

そして。この日も大阪同様に彼らはダブル・アンコールにも応えた。届けられたのは、ぱんだのmixi日記から生まれたという「五人の若者劇場『タイムマシーン秘話』」。演劇テイストで構成された個性的なこの曲を生で聴けたことへのオーディエンスの喜びは、とても大きなものだった。

息をつく間のなかった約2時間。彼らはロックンロールの楽しさと、THE BOHEMIANSの楽しさを余すことなく届けてくれた。

終演後、彼らは以前インタヴューのときに話が出ていた【山形時代の音源】を何曲かCDに焼いて来てくれた。【THE BOHEMIANS ~2006音響室音源】と白い盤面にマジックで無造作に書かれたそれには、このツアーのアンコールでもお馴染みのナンバーとなった「僕のバズーカ」や、1stアルバム『憧れられたい』に収録されていた「ガール女モーターサイクル」、当時のライヴからずっと最後に歌い続けてきたという「ロックンロール」の原型が入っていた他、当たり前のことながら初めて聴く古い曲が何曲も入っていた。

本気でヤバい。まだまだ彼らは持っている。まだこの世に放っていないキラー・チューンを、彼らはまだまだたくさん隠し持っているのだ。

THE BOHEMIANSは、ツアー・ファイナルだったこの日の翌日から、新たなアルバムを制作をするためのレコーディングに入ると言った。期待して待っていてもいいだろう。彼らは裏切ることなく期待以上のモノを作り上げ、私たちに届けてくれるはずだ。

今、彼らのためにできる精一杯で彼らを支え、待っていてあげてほしい。彼らはそんな想いに必ず応え、きっと今以上の素晴しい景色を見せてくれるだろう。彼らはきっと、自分たちの音と歌を愛してくれるみんなの気持ちを連れて、大きく羽ばたいてくれるに違いない。

2011年11月29日(火)Shibuya WWW――。

2度とはない、1度きりしかないこの日。この時点で最高の景色を見せてくれたあの空間に、きっと彼らは約束し、誓ってくれたはずだ。

終わらないTHE BEATLESになることを。

“終わらないTHE BEATLESになること”。それは、彼らの目標。彼らの目標は、単純にデッカいハコでライヴができるようになりたいということではない。地位や名誉を手に入れることではない。愛して止まないロックンロールを、THE BOHEMIANSの音と歌を通して多くの人に広めたい。それが彼らの願いなのだ。そのために彼らができること。それは、“終わらないTHE BEATLESになること”なのだ。

この日、彼らはその目標を、夢ではない現実としてその手に掴んだ気がした。なんだか、楽しい予感。「おぉ!スザンナ」や「THE ROBELETS」が、今よりも、もっと多くの人たちに広がり、彼らの愛するロックンロールが日本中に最高の笑顔をまき散らす楽しい予感が聞こえた気がした。

ロックンロールだけを信じて突き進んで来た彼らが、求めていた最高の予感を手にする日も近いかもしれない。

楽しい予感に乾杯。
終わらないTHE BEATLESたちに乾杯。
ロックンロール・アイドルTHE BOHEMIANSに乾杯。

取材・文●武市尚子


メジャー1stアルバム
『憧れられたい』
2011年8月31日発売
FLCF-4397 ¥2,500(tax in)
1. メイビリーン
2. 夢と理想のフェスティバルに行きたい
3. パーフェクトライフ
4. ガール女モーターサイクル
5. THE ROBELETS
6. Goodmusictime !!
7. 太陽ロールバンド
8. 私のシンフォニー
9. 王国の謎
10. 憧れられたい
11. FaFaFa(素敵じゃないか)
12. 五人の若者劇場『タイムマシーン秘話』

◆THE BOHEMIANSオフィシャル・サイト

  
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