【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】第31回「~レコード棚の整理から~ The Staple SingersのSTAX盤とJT『Gorilla』の国内再発盤」

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さて、話を戻しましょう。レコード棚の整理の話です。自分のレコードコレクションを見直していて気付くこと。

大好きなアルバムなのにも関わらず、日本盤や再発盤でしか持っていないものもまだまだあります。なかなかオリジナル盤が手に入らないものなら納得なのですが、特にそんなこともなく、オリジナル盤でも安く手に入るようなアルバムなのに、というものもたまにあるのです。

今回気付いたそんな例はこれです。

■ James Taylor『Gorilla』


▲大好きなジャケットのひとつ。本人も気に入ったのか、次作『In The Pocket』ではジャケットの下にこのデザインのTシャツを着た写真が使われている。
J.T.と言えば、僕なんかはやはり素朴でSSW然としたワーナーからの最初の3枚、『Sweet Baby James』『Mud Slide Slim』『One Man Dog』が圧倒的に好きですが、実はその3枚に負けないくらい好きなのがこの1975年の『Gorilla』。大好きな曲「Mexico」が収録されているということもありますが、アルバム通しても本当に佳曲揃いでポップ。カラッとした音像も印象的で心地よく、作品性とも見事にマッチしています。ちょっとおどけたようなジャケットも素敵です。

演奏陣にはいつものセクションの面々(Danny Kortchmar、Lee Sklar、Russ Kunkel)に加え、Willie WeeksとAndy Newmarkのリズム隊、Little FeatのLowell George、さらにはGraham Nash、David Crosby、Nick DeCaro等の参加により新しい風が吹き入れられていて、この作品でのJ.T.の伸び伸びとしていてみずみずしいパフォーマンスに良い影響をもたらしているように思えます。

この『Gorilla』ですが、僕が持っているレコードはオリジナル盤というものの存在を意識し始める前にすでに買っていたもので、残念ながらオリジナル盤ではありません。


▲写真 1:僕の持っている『Gorilla』のレーベル。1978年から1980年代半ばの国内盤のワーナーレーベル。「P-6409W」、「33 1/3RPM」等、国内盤ならではの表記が一目瞭然。
レコードレーベルを見てみると、クリーム色に薄い横線の入ったワーナーレーベル(写真 1)。これは1978年~1980年代半ばまで使われたレーベルなので、再発盤ということがわかります。(『Gorilla』は1975年のリリースですから、オリジナルはヤシの木などの風景がデザインされた、いわゆる「バーバンク」レーベル(写真 2)です。)

しかし今回新たに、さらに残念な事実に気付きました。

特に深く考えるでもなくずっとUSの再発盤だと思っていたのですが、これは何と日本国内盤だったのです。よく見れば一目瞭然で、レコード番号もPから始まる国内盤のものですし、背には「¥2000」の表記があり、裏ジャケット下部にも「Made In Japan」とあります。レーベルもちゃんと見ればそのPから始まるレコード番号と、US盤(写真 3)には見られない「33 1/3RPM」の回転数の表記がありますし、リム部にも「WARNER-PIONEER CORPORATION, JAPAN」と記載されています。これだけ一目瞭然の国内盤なのに、今までそれに気付かずに何度となくUS再発盤と思って針を落としていたのですから、思い込みというのは恐ろしいものです。


▲写真 2:1975年のワーナー“バーバンク”レーベル。写真は1975年Jesse Colin Young『Songbird』USオリジナル・プロモ盤。『Gorilla』のUSオリジナルはこのデザインのはず。
今考えてみれば、音も軽かったように思えますが、再発盤だからこんなものなのかと思っていたような気もします。でもUS盤なら、再発盤と言えどももう少し重心が低く粘りのある音がするはず、という気もします。

こんなことがあると、自分の耳の当てにならなさに悲しくもなりますが、カラッとしていて心地良い音という印象はあったものの、1975年というレコーディング技術の進んだ年代の作品なのにもかかわらず、音が良いと思った記憶が無いことがせめてもの救いかと……。

また、この『Gorilla』は年代もそんなに古くない上、それなりに売れた作品ということで枚数もたくさん出ているせいか、オリジナル盤でも比較的安価でよく見かける印象があります。そのため、レコード屋で『Gorilla』のオリ盤を見かけても、いつでも買えるだろうという感覚でついつい後回しにしてしまうのです。すでに自分が持っているものが、そんなに悪くないUSの再発盤だと思い込んでいたというのももちろんありますが、そういう理由で未だにオリジナル盤を持っていないのです。


▲写真 3:1978年から1980年代半ばのUS盤のワーナーレーベル。写真は1980年『Paul Simon / One Trick Pony』USオリジナル盤。国内盤とデザインは同じだが様々な表記が違う。
しかし国内盤の再発盤であるということが発覚した以上、もはや一刻も早くUSオリジナル盤を手に入れて聴きたいとう衝動に駆られています。僕は今まで、この大好きな『Gorilla』を国内盤の再発盤でしか聴いたことがないということになるので、初めてオリ盤で聴いたときには、きっとそこに大きな感動が待っているに違いありません。

しかし年が明けてから数回、フラッと立ち寄ったレコード屋でこの『Gorilla』のUSオリジナル盤を探したのですが、いざ探してみると今度はなかなか出会えません。逆に、かつて探すのに苦労したワーナーの初期3枚などはたくさん見かけたりもして、本当に不思議なものです。
でもこれでまた、レコード屋へ行く楽しみがまたひとつ増えました。

棚なんて必要のない程度の枚数しか持っていなかったレコードも、気付けば増設した棚にすら入りきらないほど。そして増えれば増えるほど管理が行き届かなくなり、また整理するのも億劫になり……、という悪循環。しかし時間を作って自分のレコードコレクションを見直してみれば、今回のような発見もあり、また1枚1枚のレコード達にもより愛着が湧くというもの。そしてそれはレコードがただの音ではなく、「モノ」であるからこそ湧く愛着であり、その「モノ」であるということが、レコードの大きな魅力のひとつでもあるのです。

オリ盤探求の旅はまだまだ続くのであります。


text by 鈴木健太(D.W.ニコルズ)

◆連載『だからオリ盤が好き!』まとめページ
◆鈴木健太 Twitter(D.W.ニコルズ)

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「イイ曲しか作らない」をモットーに、きちんと届く歌を奏で様々な「愛」が溢れる名曲を日々作成中のD.W.ニコルズ。
2005年9月に、わたなべだいすけ(Vo&Ag)、千葉真奈美(Ba&Cho)が中心となり結成。
その後、鈴木健太(Eg&Cho)、岡田梨沙(Drs&Cho)が加わり、2007年3月より現在の4人編成に。
一瞬聞き返してしまいそうな…聞いた事がある様な…バンド名は、「自然を愛する」という理由から、D.W. =だいすけわたなべが命名。(※C.W.ニコル氏公認)

2ndアルバム『ニューレコード』
2011年1月26日リリース
曲目:01.バンドマンのうた 02.あの街この街 03.一秒でもはやく 04.チャールストンのグッドライフ 05.大船 06.風の駅 07.HAVE A NICE DAY! 08.2つの言葉 09.レム 10.Ah!Ah!Ah! 11.beautiful sunset

【CD+DVD】
価格:3,000円
品番:AVCH-78025/B
【DVD収録内容】“2 MUSIC SHOW! & 2 MUSIC VIDEO”

【CD only】
価格:2,500円
品番:AVCH-78026

◆D.W.ニコルズ オフィシャルサイト
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