約40年の歴史を完全凝縮、鋼鉄神ジューダス・プリースト降臨に横浜熱狂

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完璧なものに触れたときに味わうことのできる感動というのがある。が、完璧か否かといった価値基準を超えた次元での感動をおぼえたときにこそ、本当に「心が震えた」と言うことができるのではないだろうか。2月9日、パシフィコ横浜でのジューダス・プリーストのステージを観てそう感じた。

◆ジューダス・プリースト画像

<EPITAPH JAPAN TOUR 2012>と銘打たれた今回の日本公演は、去る2月7日、福岡サンパレスにて開幕。この日、ツアーは第二夜を迎えた。「EPITAPH」というのは名盤の誉れ高い2ndアルバム『SAD WINGS OF DESTINY』(1976年)の収録曲タイトルでもあるが、“墓碑銘”を意味するこの言葉がツアー・タイトルに掲げられていることからも察することができるように、ジューダス・プリーストは今回のワールド・ツアーをもって大規模なツアー活動から身を引く決意である旨をすでに公式発表しており、実際の公演では、もはや約40年にも及ぶその歴史を濃縮したかのような総括的パフォーマンスを繰り広げている。そうした事実関係については事前に把握できていた。もっと言えば、基本的なセットリストの構成も頭のなかに叩き込まれていた。が、それでも1曲目の「Rapid Fire」が炸裂した瞬間、僕の心は震え始めた。

演奏は、アンコールを含めて全21曲、約2時間20分にも及んだ。さきほど総括的パフォーマンスという形容をしたが、それは単純にファンにとって愛着深い鉄板曲ばかりが網羅されているという意味ではない。ショウの中盤ではデビュー・アルバムの『ROCKA ROLLA』に収録されていた「Never Satisfied」が登場。かと思えば現時点での最新オリジナル作品にあたる『NOSTRADAMUS』(2008年)からの「Prophecy」も披露される。後者はともかく、前者をライヴで聴いたのは、少なくとも筆者にとっては初めてのことだった。そう、“墓碑銘”として刻まれるべきは特定の時代の功績ではなく、このバンドの歴史すべてなのだ。ステージ上のロブ・ハルフォードは「ジューダス・プリースト流のヘヴィ・メタル」、「過去およそ40年間に及ぶ歴史」、「クラシック・メタル」といった言葉を口にしていた。このバンドがこれほどの長きにわたって第一線に君臨し続け、メタル・ゴッドとして崇められてきたのは、彼らが最初から自分たちならではのスタイルを持ち、それを研ぎ澄ますために“守り”ではなく“攻め”の姿勢を貫き、さまざまな時流のなかでの自分たちのあり方といったものを意識/模索しながら大胆で実験的なアプローチを重ねてきたからに他ならない。単なる伝統継承だとか、再現芸術としての完璧さの追求とは違うのだ。

実際、完璧か否かという部分で言えば、たとえばロブ・ハルフォードのハイトーンにかつてのような切れ味はもはや感じられにくい。演奏面についても目を見張るような超絶プレイが繰り広げられるわけではない。が、そこには他の誰かには持ちえない威厳と説得力と人間味が伴っている。悪趣味な言い方ではあるが、“突っ込みどころ満載”という部分もなくはない。が、ゆっくりとした歩調でステージに現れたロブの姿に「あれじゃ爺さんだろ!」と笑っていた僕の後方にいた観客も、次の瞬間には何かに取り憑かれたかのような表情でステージを凝視していた。暴言すらも愛情の表れなのだという解釈は都合が良すぎるかもしれないが、僕にはそう感じられた。

書きたいことは他にもたくさんあるのだが、まだ始まったばかりのこのツアーについて、過剰にネタバレになることも避けておきたい。が、ひとつ付け加えておきたいのは、突如の脱退によりファンに衝撃を与えたK.K.ダウニングの穴を埋めるべく起用されたリッチー・フォークナーの好演ぶりだ。ときにザック・ワイルド、あるいはダグ・アルドリッチを思わせもする雰囲気を持った彼の姿を見れば、まだまだこのバンドの“未来”を信じたくなってくる。そう、実際、「大規模なツアー活動からの撤退」がそのまま歴史の終幕を意味するわけでは、かならずしもない。ここですべての歴史を自らの手により墓碑銘に刻むことを経たうえで、彼らは新たな時代を迎えることになるのかもしれない。が、どうあれ、今回のような画期的ライヴを味わうことができる機会が二度と訪れないことだけは確かなのだ。バンドは今後、神戸、広島、名古屋の各地を巡演し、2月17日、このツアーは東京・日本武道館にてクライマックスを迎えることになる。ヘヴィ・メタルを愛するすべての人たちに、その場に集結して欲しいものである。

そして、最後にひとつだけ補足を。去る1月25日に初期4アイテムの紙ジャケ新装盤がビクターから発売されているのに続き、2月15日にはソニーより、『SIN AFTER SIN』(1977年)から『PAINKILLER』(1990年)に至るまでの12作品が再リリースされる。新たなリマスターを経たこれらの音源は、関係者によれば「よりオリジナルの音源に忠実な形のまま、飛躍的に音質が向上」しているとのこと。伝説的ライヴの目撃者となるばかりでなく、こうした作品群にもご注目いただきたい。

pix by Takumi Nakajima

増田勇一
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